2020年8月の労働市場(3)

4月以降、
労働力調査の発表をふまえて
フリーランスを含む自営業者
の動向に注目してきた。
https://genda-radio.com/archives/date/2020/05/16
https://genda-radio.com/archives/date/2020/08/01
https://genda-radio.com/archives/date/2020/08/12

日本では自営業の長期的衰退が
始まって久しく、
1980年以降、
前年より増えた年というのは
ほんの数年にすぎない。

その結果、かつては
1000万人にも近かった
自営業主数は
2019年には500万人
まで縮小していた。

それが感染症拡大以降、
自営業主に持ち直しとも
思われる動きがみられるのだ。

詳細は次のとおり。
https://app.box.com/s/4ezfst9s2xvwmpp74hz77930vrpdrqlg

感染拡大後の
4月から5月にかけて
自営業主数が増えた後、
7月まではやや減少していたが
それでも2019年平均を感染後は
上回り続けている。
それが8月にはさらに拡大へと反転した。

感染によりテレワークが普及し、
そのなかで職場組織に属さない働き方が
社会全体に許容されるようになると
フリーランスで働く独立自営業主にも
一定の社会的需要が生まれる可能性も
あるのかもしれない。

一方で以前には、自営業でも
専門的職業の場合には進展していたとしても
そうでない場合には苦戦を強いられている
二極化も示唆したことがある、

果たしてそれが現在、
どのような状況にあるのかについては、
次回11月10日に発表される
労働力調査・詳細集計による
結果が待たれるところである。

2020年8月の労働市場(2)

総務省統計局「労働力調査」
によれば、
2020年8月には
これまでと同様に
宿泊業、飲食サービス業で
就業状況の悪化が続いているのに加えて、
製造業の悪化も指摘されている。

具体的には
対前年同月に比べて
就業者数は
宿泊・飲食業では28万人減少した一方、
製造業では52万人減少と感染拡大後
最大の減少幅となっている。

製造業の悪化には、
同じく感染拡大で経済活動の停滞が
著しい海外からの受注が大きく減少した
可能性の他、
労働集約的な職場などで
作業密集を避けるための人員調整なども
行われたのかもしれない。

あわせてここでも
過去7年平均との比較を産業別に
行ってみた。
すると、
2020年8月の過去7年との就業者数の
平均差は次のようになった。

卸売業、小売業 マイナス39万人
製造業 マイナス17万人
農業、林業 マイナス12万人
宿泊業、飲食サービス業 マイナス4万人

意外にも過去7年平均との比較では
卸売・小売業の減少幅が最大となっている。
さらに4月以降、同様の計算を行うと
卸小売りの減少幅は毎月拡大を続けている。

感染後の困難として、
収入の減少をあげる声が多いが、
それは消費の停滞へと直結する。
そのことが卸小売の就業への
打撃を強めている可能性がある。

もしかしたら春先や初夏には
例の特別定額給付金の
10万円支給が当時
小売業などの売り上げを
支えていた面もあったのかもしれない。
ただそれはあくまで一時的でも
あったため、現在は売上の低迷と
それに伴う従業員の削減につながっている
ことも考えられる。

一方、注目を集めてきた
宿泊・飲食業では、過去7年との差で
マイナスが最も大きかったのは
6月時点であり、7月、8月と
いくぶん持ち直しつつある。

卸売・小売業は、
製造業とならんで
就業者数が1000万人を超える
最大の就業の受け皿でもある。
その動向にはもっと注目を
していくべきだろうし、
今後悪化が進む場合には、
必要な重点的支援も
検討すべきかもしれない。

2020年8月の労働市場(1)

本日朝、
2020年8月分の
総務省統計局「労働力調査」
厚生労働省「職業安定業務統計」
の集計結果が公表。

8月は、
検査陽性者、要入院治療者、重症者
などが急増するなど、4月に次いで、
感染状況自体は深刻だった。

それに対し、就業情勢は、
引き続き宿泊業、飲食サービス業、
また新たに製造業に深刻な状況が広がる一方、
それでも全体的には感染拡大前の状況へと
緩やかな回復傾向が続いているのが
特徴といえる。

完全失業者数も3年3ヵ月ぶりと久々に
200万人台に達したものの、
求人の緩やかな持ち直しなどもあり、
有効求人倍率は低下しつつも1倍を維持するなど、
少なくとも大規模な雇用崩壊の兆しは
8月時点では見受けられなかった
といってよいだろう。

労働力調査の概要は、
対前年同月比較を含めた原数値や
季節調整値が今月も詳しく
統計局のホームページに記載されている。
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/gaiyou.pdf

そこでここでは先月にもみたように
https://genda-radio.com/archives/date/2020/09/25
第二次安倍政権の期間とほぼ重なる
2013年から19年の7年間の平均との状況を
比較してみた。
https://app.box.com/s/jzrur1nvtqvd6wt111n19mrszdco7cp2

就業者数全体は、
感染拡大前の今年1月時点近くまで
回復し、過去7年平均との比較でも
160万人の拡大を維持している。

正規雇用者数については
製造業の悪化の影響も受けてか、
5月時点の水準まで今月は戻ったが、
それでも平均差で138万人増を維持する
など拡大トレンドは今も続いている。

非正規雇用は感染後に状況の悪化が続き、
8月には平均水準割れも懸念されたが、
むしろ前月の平均差プラス19万人から
プラス37万人に一定程度持ち直したのは朗報だ。

一方、完全失業者数は
過去7年平均との差は2万人まで
縮小した。労働市場の需給ひっ迫などによる
低失業という福音は、感染拡大後に
ほぼ消失したかたちとなっている。
今後は、雇用維持対策とならんで
失業対策がより重点化されるべきことへの
一つの証拠とも言えるだろう。

人口減少や人手不足とともに
200万人以上削減されてきた
非労働力人口は、感染拡大時の4月には
平均差で139万人まで圧縮された。
それが8月になると185万人まで減少幅は
戻りつつある。まだ一部で働き止めは
続いているものの、感染予防対策が
定着したこともあり、労働参加は着実に
回復しつつあるようだ。

依然として厳しい状況を示す数値も
少なくないが、同時に就業情勢が
着実な回復軌道に乗っていることを
意味する数値にも目を向けていくべきだろう。

 

2020年7月の労働市場(5)

昨日は
第二次安倍政権の期間に
ほぼ相当する2013年から
2019年の過去平均と比較により
感染症拡大前後の労働市場の特徴を見た。

アイデアは、天気予報の「平年」との比較だ。
平年は過去30年くらいとの比較とのことなので
せっかくなので、こちらでも過去30年と比較
してみることにした。具体的には1990年から
2019年の月次平均ということになり、
ほぼ平成との時代と比較という意味にもなる。

結果が、こちら。
https://app.box.com/s/j2q09r8buuwv025qw5pn7l4y9d2xh1ph
ちなみに前回みた正規雇用、非正規雇用の月次データは
過去30年分は得られないため、
ここでは男女別の就業者数を見ることにした。
そこからは、なかなかに印象深い結果が表れた。

バブル経済の崩壊後、
「失われた20年」という言葉に象徴されるような
持続的な不況が平成の時代の長きを覆った。

その時代の平均と比べると、
感染症拡大前の2020年1月の就業者数は
369万人も多くなっていた。令和は
就業面に限れば好スタートを切っていた。

就業者の拡大を支えたのは、なんといっても女性だ。
男性雇用者も、過去30年平均に比べて121万人増えたが、
女性雇用者は、実に505万人も増えていたのである。

失業率が5%台に達することもあった平成の頃の
平均に比べると、完全失業者数は87万人も少ない。
労働力参加の進展もあって、非労働力人口も
29万人減っていた。

ところが感染が拡大した2020年4月では、
就業者数や雇用者数(特に女性)の過去30年
との差は一気に圧縮される。30年の蓄積の多くが
一瞬のうちに吹き飛んだかたちだ。
非労働力人口に至っては、
「働き止め」の広がりの影響もあって
過去の平均よりも111万人も多くなり、労働参加に
急ブレーキがかかっていたことは、このような比較
からも明確に確認できる。

最新の2020年7月でも、
就業者数や雇用者数は過去30年の差は
4月時点と大きく変わっておらず、その意味で
就業動向は概ね横ばいを続けている。

一方で、完全失業者数は30年の差が縮小を続け、
平成の厳しい就職難の再来が忍び寄っている
ようにも見え、不気味ではある。
非労働力人口も、依然として過去30年の平均を
上回っており、全般的な労働参加の再開とまでは
いえない状況にある。

労働市場の動向も
常に多面的に確認する必要があること、
さらには短期的な比較だけではなく、
長期的な比較の観点も持たなければならないことを
今回改めて確認した。

 

 

2020年7月の労働市場(4)

すっかり暑さも遠のき、
朝昼晩と涼しくなった。
猛暑のニュースもすっかり
過去のようだ。

気温がグングン上がっていたときには
それを示すために「前日に比べて」
という比較がよくされていた。
またそれと並んで、
今年の猛暑がいかに特別なものかを
表すために
「過去何年かの同じ日と比べて」
とか
「平年の同じ日の平均気温は」
などのような情報も流れていた。

今年の感染拡大後の労働市場の状況についても
対前年同月というのがよく指標として
取り上げられているが、
もしその前年自体が特殊な一年だと
そちらの影響を強く受けることにもなる。
実際、2019年は就業状況がかつてないほど
高水準で推移した特殊な年でもあった。

そこで労働市場についても
過去数年との平均状況と比較してみることにした。
具体的には、第2次安倍内閣の期間にほぼ重なり、
かつ労働力調査の調査内容が一部で変更された
2013年から2019年の過去7年間の
各月の平均水準との比較を
主要指標に関して行ってみた。
(※ ちなみに天気予報の「平年」は過去30年くらいの
平均なのだそう)

その結果が、こちら。
https://app.box.com/s/ygkytnhygfbj0hcv2ohm60kiq3muq3tp

まず就業者については
感染拡大前の2020年1月は
2013年から19年の1月平均に比べて
267万人も多い6687万人の水準にあった
(原数値、以下同様)。
それが緊急事態宣言が発出された
2020年4月になると就業者数は
6628万人となり、過去平均との差も
150万人まで縮小する。
直近の2020年7月には平均より145万人増の
6655万人と、感染拡大後は今のところ
ほぼ横ばいを保っている。

このように感染拡大後も就業者数が
思いのほか安定的に推移しているのは、
正規雇用に主な原因がある。
感染拡大前後を通じて正規雇用者数に
目に見える減少はみられず、さらに
実数のみならず、過去平均との差も
感染前よりもむしろ拡大している。
正社員は感染にもかかわらず
今のところ全体的には
ほぼ盤石なのである。

それに対し、非正規雇用には明らかな
翳りが見られ始めている。第2次安倍内閣では
就業増大は非正規雇用に集中したという批判がある。
実際、2020年1月に非正規雇用は2149万人と
過去7年の1月の平均に比べて
128万人も増加していたのは事実である。

ところが2020年4月になると非正規雇用は
2019万人まで減少、過去平均との差も
32万人と、100万人近く急速に減少する。
それが7月には平均との差がさらに
19万人まで縮小している。7年にわたる
非正規雇用拡大のボーナス(特典)は、
感染拡大により、ほぼ消失しつつある。

同様に完全失業者も
今年1月は過去7年に比べて
52万人少ない159万人になるなど
アベノミクスの産物として
明らかに失業は抑制されていた。
ところが直近の7月には197万人となり、
平均との差10万人と、ほぼ消失しかけている。

感染拡大後も現時点では
正社員の就業機会は保たれている反面、
非正規や失業者の不安は高まっており、
格差が深刻になり始めたところで
新内閣はスタートしたことになる。
これは早晩大きな課題になるだろう。

また人口減少による
労働力不足という長期的な課題に対しては、
非労働力人口がすう勢的に減少することで
労働参加の拡大による対応が着実に進んできた。
今年1月には、非労働力人口は
過去7年に比べて236万人も少ない4233万人まで
縮減していた。

それが4月になると過去との差が139万人まで
圧縮される。その背景には、これまで再三
してきた高齢者や幼い子どもを持つ母親などが
働くことを断念する「働き止め」が働いていた。
7月にも過去7年との差は160万人にとどまっており、
働き止めの影響は完全には解消されていない。
その意味では「一億総活躍」というキャッチフレーズ
にもブレーキがかかり、全体的な労働参加には
足踏みがなお続いたままの状態でもある。

来週10月2日は、8月の労働市場の結果が公表される。
発表後は、過去の平均との比較も行ってみたい。