SNEP (45)

「無業者だけではなく、
働いている人のなかにも
孤立している人はいるんじゃないか?」
先日の一橋大でのセミナーで、
そんなコメントもいただきました。
仕事は、多かれ少なかれ、職場の仲間
と行うもの。そのようになんとなく考えていた
ので、とても新鮮な意見でした。考えてみると
私も誰とも会わないこともよくあります。孤独なことの
多い大学の人間らしい意見かもしれません(笑)。
そこで「社会生活基本調査」(2006年)から、
ふだん仕事をしている人について、
月曜から金曜の平日の
対人関係の状況を調べてみました。
就業者全体の標本のうち、雇われて働いている人
では、94%と大部分がやはり家族以外の誰かと
交流機会を持っていました。約6割が交流を持たない
無業者とはやはり大きな違いですが、それでも就業者
サンプルの6%が交流を持たないというのも、案外、
大きな数字といえるのかもしれません。
ちなみに被雇用者のうち、パートやアルバイトよりも正社員
のほうが誰とも交流しない割合はやや低いのですが、派遣
社員が特に交流が少ないという傾向はみられませんでした。
むしろ家族以外と交流のない就業者といえば、圧倒的に
雇われないで働く仕事をした人たちです。会社の役員、
自営業者、家事手伝いといった人です。雇われずに働く
それらの人たちのサンプル全体のうち、実に3人に1人は家族
以外に交流がないと回答しています。特に雇い人のいない自営業、
家事手伝い、そして数は少ないですが、「内職」で働く人たちは
他者との交流が少なくなっています。
また職種別では、農林漁業従事者ほど、家族以外に
交流が日頃少ないこともはっきり見て取れます。
そう考えると、もし長期的にスネップが増え続けてている
とすれば、就業・産業構造の変化の影響が大きいの
かもしれないと思うようになりました。
以前にお話ししましたが、日本では長期的に自営業が
減り続けています。また農業の縮小も明らかです。
どんな時代でも、あまり他者と交流することを望まない人が
いるのかもしれませんが、かつてであれば、そんな人にとって
自営業、内職、そして農業などが働く機会の受け皿になっていた
面があったのではないでしょうか。
しかし、自営業や農業の就業機会の減少は、交流をあまり望まない
人たちやいろいろな事情で交流が困難な人たちの貴重な働く機会を
減少させることにつながりました。その結果として孤立がちな人が、
無業、すなわちスネップになりやすくなったのかもしれません。
就業・産業構造の変化とスネップ増加の関係についても
今後考えていくべき大事なポイントだと思います。