格差とは何か

 最近、私にも「格差」についてのインタビュー
 依頼がたまに来たりする。多分、大竹さんや
 佐藤俊樹さんほどではないけれど。
 ただ、「格差」というとき、最初に思いつくのは
 恩師・石川経夫先生の著作『所得と富』
 の次の一文。今でも、それが自分の基本だ。
 
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 市場の評価としての賃金の差異のすべてが、
 分配上の問題をはらんだ「格差」を意味する
 わけではない。人々が過去に費用と努力を投じた
 教育や訓練の成果を反映した賃金の差異、あるいは
 仕事の質に対する人々の趣好の差を反映した賃金の
 差異は、均等化差異と呼ばれるように、まさしく無害な
 格差の典型である。
 さらに、人々に天賦の才として与えられた能力(芸術的
 才能、運動能力、論理的思考能力、経営的才覚など)を
 理由とする所得の差異は、分配上の問題を提起するする
 としても、それはむしろ市場評価のレベルを超えた再分配の
 対象として考慮するのが適切であろう。
 市場的評価のレベルで問題とすべき「真の賃金格差」が
 存在するのは、同一の能力・趣好を持ちながら同一の
 所得機会に恵まれない人々のいる場合である。
 労働市場の二重構造論が明確な意義をもつのは、
 このように定義される格差が存在する場合である。
 
 —『所得と富』(岩波書店、第6章、286ページ、1991年)
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 こういう本が今こそ読まれるべきだと思うが。