報道では、会社が解雇をしたり、期間満了で雇用契約したりして、雇用を減らそうとする「雇い止め」という言葉が頻繁に使われている。同時に一方で、感染のリスクなどをおそれた労働者自身が働くことを断念し、統計用語でいうところの「非労働力人口」(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者以外の人々)の増えたことこそが、むしろ今回の感染拡大の特徴と、ここでも再三述べてきた。
その状況は、企業による「雇い止め」というよりは、労働者本人による「働き止め」のほうがより正確と思われる。ただし働き止めという視点は、今もまったく共有されていない。
ちなみに2015年4月から2020年3月までの非労働力人口(季節調整値)の推移に基づき、働き止めを試算すると、その数は緊急事態宣言が出た20年4月には129万人に達した。その後、働き止めの数は徐々に減少してきたが、最新の20年12月でも59万人が依然となり、4月時点の46%が残っている計算になる。
気になるのは、高齢者の働き止めが、12月の感染の大幅かつ急速な拡大に沿うかたちで、増えていることだ。65歳以上の非労働力人口は、2702万人(原数値)と、20年4月以来の2700万人台となった。年金などの不足を、賃金収入を補っていたのが、感染のおそれから仕事を断念せざるを得ないとすると、生活が立ち行かなくなる高齢者も増えてくる。
もう少し「働き止め」をせざるを得ない人々にも目を向けてもいいと思うのだが、どうなのだろうか。