今日の妄想

帰りの電車に乗っていると
快晴と乾燥のせいだろう
年に何度あるかというくらいの
美しい夕日の富士山
だった。

ただ車内を見渡すかぎり
夕日の車窓に目をやっている人は
誰ひとりいなかった。

スマートフォンのほうが
たぶん面白いのだろう。

そのとき
電車に一人の少女が乗ってきた。
電車が動き出してほどなくすると
彼女は富士山を静かにずっと
眺めていた。そのとき
彼女の眼からひと筋の涙が
こぼれ落ちた。

と、
小説ではなるのだろうね。
でもそんなことはなかった。