注文

「コロナ前、居酒屋のカウンターで呑んでいた。たまたま隣り合わせのご縁となった人から、美味(おい)しそうな肴(さかな)を「おひとつ、どうぞ」となった。だが、店の人からは「食べたければ注文して」と、きつくたしなめられる。さように縁と食を結ぶのは、案外難しい。」

以前、あるところに自分が書いた文章。あのとき、おひとつどうぞとなった肴がなんだったかは、すっかり忘れた。でも、鍋や煮込みなど、分離不可なものではなかったように思う。そんなの、さすがにすすめないし、すすめられても食べたりしない。

それに、たしなめられたといっても、半分笑って、半分本気で、言われたような気がする。はじめての店ではなかった。それが、居酒屋のルールであることも存じている。

結局、食べはしなかったが、流れ次第では、追加で自分用に注文していたかもしれない、とも思う。

ちょっと面白かったので、なんとなくおぼえている。

思込

先日、久しぶりに寄稿した文章が
「だがそれは正規雇用と正規雇用の格差をより深刻なものにもした。」
として掲載されている。
もちろん正確には
「だがそれは正規雇用と非正規雇用の格差をより深刻なものにもした。」
だ。

現行を確認してみると
まちがって書いているのは、
まぎれもなく私。

一応、何度も確認した上で
出した原稿だと思っていたが、
それでも気が付かなった。
それだけ思い込んでいたのだ。

思い込みは、目の前のものを
見えなくする。