「働き止め」のWEB記事

「働き止め」に関する今までで最も正確な報道記事が、3月22日夜に、NHKから配信されています。以下をクリックください。

WEB特集 働きたくても働けない 77万人の試算 | NHKニュース

今まで報道ではなぜか使うことが避けられていた「非労働力人口」という統計用語も正確に使われていて、失業者との違いなどが明確に説明されています。

記事をきっかけに「働き止め」の存在が広がり、働けない苦しみを多くで分かち合うとともに、必要な対策の本格的な検討が始まってほしいと思っています。

昨年末から丁寧な取材に取り組んでいただいてきた間野さん、大西さんに心より敬意を表します。

親の不安と大学生の働き止め

働き止めの根本にあるのは、感染への不安であり、今回の感染拡大が労働市場にもたらした特異な状況であることを述べてきた。感染不安は、働く本人が感染を恐れたり、同居する高齢の親への感染を恐れたりする結果、働くのを断念せさせてきたことも指摘してきた。

また別の働き止めとして、在学中の子どもが飲食店などでのアルバイト先で感染することを恐れて、働くことを止めるよう、親が強く説得した結果でもあるかもしれない。大学生などがアルバイトできなくなったのは、バイト先の飲食店などの経営上の都合もさることながら、親が子どもに「危ないからバイトはやめて」と強く求めたため、バイトをやめざるを得なかったことも多いのではないか。

総務省統計局「労働力調査」によれば、15~24歳の在学中のパート・アルバイト数は、2020年には177万人と、前年より10万人減少した。4半期別では、20年7~9月には、前年同期より23万人と大きく減り込むかたちとなった。それらの背後には、店側の都合による雇い止めだけでなく、親の思いによる働き止めも影を落としていたのかもしれない。

孤立無業(SNEP)について

色々最近、「孤独・孤立」が話題になりかけているようなので、一応、2012年からやってきた「孤立無業者(SNEP)」について、一般に入手できる情報で、比較的正確なものを、ちょっと調べてみた。

https://www.kaonavi.jp/dictionary/snep/

https://www.ieyasu.co/media/snep/

など、思いのほか、記事があった。ただ、必ずニートとの比較に言及されているようだけど、ニートの内容の方は、あいかわず微妙。

自分で書いて話したのは、こちら。

https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/414605.html

https://www.nippon.com/ja/currents/d00109/

スネップも、以前は男性、大卒以外、そして若年が多かったが、2010年代後半には、女性、大卒、中高年にも広がっている。それを「孤立の一般化」と表現した。孤立の一般化の問題は、感染拡大前のデータにも着実に表れているが、感染によって、さらに深刻化、一般化している可能性がある。

想定外の状況の発生は、そもそも困難な状況にあった人びとを、さらに深刻な状況に追い詰める。それは、不況、震災、感染など、いずれにも残念ながら当てはまる歴史の真実だ。

スネップは、総務省統計局「社会生活基本調査」の特別集計を用いている。次回の調査は、今年の秋に予定されている。


年次レベルでみた「働き止め」

これまでは、感染拡大が刻々もたらす短期的な変化を追うため、月次レベルでの動向に注目してきた。遅ればせながら、感染が広がった2020年という年が労働市場にとって、どのような年であったかを、年次レベルで確認しておく。歴史的に主として残るのは、おそらくは年間を通じた変化の方だろう。

総務省統計局「労働力調査」によれば、2020年平均の就業者数は6676万人と、前年に比べて48万人の減少となった。前年より48万人の減少は、リーマンショック直後の2009年(95万人減)、バランスシート調整などから希望退職などが頻発した2002年(85万人減)に次ぐ、大規模なものだった。

なかでも非正規雇用は前年より75万人の減少となり、2002年以降、最多となった。2009年にも非正規雇用は前年より38万人減ったが、それを上回る減少幅となっている。一方、正規雇用は、19年から20年にかけてむしろ35万人増加した。

完全失業者数も、前年より29万人増の191万人となった。完全失業者が前年より増えたのは、2009年の71万人増以来の11年ぶりである(途中、東日本大震災より一時的に調査が途絶えた2011年を含む)。完全失業者は、1998年にも49万人増、1999年に38万人と大きく増えており、2009年、1999年、1998年に続き、1953年以来、4番目の深刻な状況になっている。

15歳以上人口に占める就業者数である就業率は、2013年以来、毎年増加してきたが、2020年には9年ぶりに減少に転じた。労働力人口に占める完全失業者数である完全失業率も、2010年から19年にかけて、年次レベルで増加することはなかったが、2020年に11年ぶりの増加となった。

あわせて注目されるのが、ここでも非労働力人口の動向である。高齢者や女性を中心とした労働参加の拡大もあり、非労働力人口は2013年以降、毎年連続して減少してきた。人口そのものの減少を労働参加の拡大が補うことで、労働力不足はある程度回避されただけでなく、むしろ労働力は全体的には拡大していた。

それに対し、2020年には非労働力人口は、8年ぶりに7万人の増加へと転じた。このうち、「通学」「家事」を除く「その他」の理由による非労働力人口は、前年に比べて32万人と大きく増加し、完全失業者の29万人増を上回るほどであった。

2020年に、家事、通学以外の非労働力人口が急増した背景にも「働き止め」の拡大の影響を見て取ることができるだろう。