■芹ゆう子によるラストメッセージほぼ全文

ニュースを読むアナウンサーに代わって、AIが登場したことは、この間もお話しましたが、ラジオのAIパーソナリティーもこれからどんどん出現することになるんじゃないかしら。アニメ『銀河鉄道999』のように、生身の人間と機械の人間が共存する世界ね。私がパーソナリティーをやっていて、いつも感じることはね、生身の人間は間違ったことや人の道に外れたことをすると、信用を失うでしょう。家族の生活や、自分のキャリアが真っ黒になっちゃう。そんな恐れがあるから、常に発言は慎重になるのよ。その“毒”の塩梅が、その人の力量ってことになるのね。

一方、AIパーソナリティーは、自分の信用を失う恐怖がないのよ。問題発言があって炎上すれば、また別のキャラクターになればいいんだから。なので、弱気な人間を尻目に、超強気なトークができるAIパーソナリティーがいつか登場するのよ。そして、歯切れのよさ、一切忖度のない本音の話に、中毒的なファンを獲得する。

そして、そのAIパーソナリティーが「私たちはとなりの国と戦った方がいい」と言い始め、ファンは何も疑わず、いつもの通り、付き従い、幸せを感じたまま戦いを始め、誰が作ったかもしれないAIのために、人々が命を奪い合う。そして、もう誰にも止められないのよ。生身の人間は純粋なのよ、やさしいから。他人は基本いい人だとデフォルトで思っているから、結局騙されることは生身の人間の必然なのよ。人間、騙されたと気づかずに全体が滅ぶ道を元気よく進むのよ。こんな話、SFみたいだと笑っちゃうわよね。

人に信頼されることが、人から頼られることが、生身の人間にとって一番幸せな感情だということは、芹もよくわかっています。ですから、みなさんからさまざまな信頼が寄せられたこと、本当にうれしく、愛おしく思っています。すばらしい仲間に恵まれたことは、芹にとって、何よりうれしかったことです。みなさんの未来を案じているのよ。半年間ありがとう。終わりにしましょう。

お礼

昨日の社員総会をもちまして、
日本キャリアデザイン学会の役職を
すべて退任いたしました。

2012年度より
副会長、常務理事、副会長、会長(理事長)、専務理事(事務局長)
と長きにわたって、学会員のみなさんに
支えていただきました。
心よりお礼申しあげます。

今後のますますの日本キャリアデザイン学会の発展を
確信し、楽しみにしております。
ありがとうございました。お世話になりました。

玄田 有史

『世界』10月号

https://websekai.iwanami.co.jp

玄田 有史「70歳でも働く社会」『特集1 働き続ける私たち』 

日本における高齢期の就業と老後生活をめぐる課題と展望を論じたもの。老後に資産を蓄えるのは難しく、年金も将来不安が強い中、70代でも働き続けることが多くにとって現実的な選択肢になりつつあると指摘。2013年の高年齢者雇用安定法改正を契機に、60代から70代の就業率が大幅に上昇し、70歳以上でも継続雇用されている人が多いことが示される。これは昭和期に確立した日本的雇用慣行の残像とも関係する一方、就職氷河期世代以降は低賃金や短い勤続年数により将来の状況は厳しくなることが予想され、年金改革や社会保障拡充が課題となっている。今後は70歳までの希望者の就業確保を雇い主の「努力義務」から「義務」へと法改正し、定年制廃止も視野に入れ、誰もが希望すれば働き続けられる社会の構築が求められると結論。