これまでは、感染拡大が刻々もたらす短期的な変化を追うため、月次レベルでの動向に注目してきた。遅ればせながら、感染が広がった2020年という年が労働市場にとって、どのような年であったかを、年次レベルで確認しておく。歴史的に主として残るのは、おそらくは年間を通じた変化の方だろう。
総務省統計局「労働力調査」によれば、2020年平均の就業者数は6676万人と、前年に比べて48万人の減少となった。前年より48万人の減少は、リーマンショック直後の2009年(95万人減)、バランスシート調整などから希望退職などが頻発した2002年(85万人減)に次ぐ、大規模なものだった。
なかでも非正規雇用は前年より75万人の減少となり、2002年以降、最多となった。2009年にも非正規雇用は前年より38万人減ったが、それを上回る減少幅となっている。一方、正規雇用は、19年から20年にかけてむしろ35万人増加した。
完全失業者数も、前年より29万人増の191万人となった。完全失業者が前年より増えたのは、2009年の71万人増以来の11年ぶりである(途中、東日本大震災より一時的に調査が途絶えた2011年を含む)。完全失業者は、1998年にも49万人増、1999年に38万人と大きく増えており、2009年、1999年、1998年に続き、1953年以来、4番目の深刻な状況になっている。
15歳以上人口に占める就業者数である就業率は、2013年以来、毎年増加してきたが、2020年には9年ぶりに減少に転じた。労働力人口に占める完全失業者数である完全失業率も、2010年から19年にかけて、年次レベルで増加することはなかったが、2020年に11年ぶりの増加となった。
あわせて注目されるのが、ここでも非労働力人口の動向である。高齢者や女性を中心とした労働参加の拡大もあり、非労働力人口は2013年以降、毎年連続して減少してきた。人口そのものの減少を労働参加の拡大が補うことで、労働力不足はある程度回避されただけでなく、むしろ労働力は全体的には拡大していた。
それに対し、2020年には非労働力人口は、8年ぶりに7万人の増加へと転じた。このうち、「通学」「家事」を除く「その他」の理由による非労働力人口は、前年に比べて32万人と大きく増加し、完全失業者の29万人増を上回るほどであった。
2020年に、家事、通学以外の非労働力人口が急増した背景にも「働き止め」の拡大の影響を見て取ることができるだろう。