「格差問題に取り組むために必要なこと」
『法律時報』2008年80巻12号(通巻1002号)17-22頁
http://www.nippyo.co.jp/magazine/magazine1.html
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2007年春のことだ。K先生からメールをいただいた。日本を代表する経済学者のK先生は、私の師匠だった石川経夫が学部生のときにゼミに参加していた先生である。その議論の切れ味の鋭さから「カミソリのK」という異名をとり、論敵や一部の政策関係者からおそれられてきたK先生。私自身これまで特別なお付き合いもなかったが、K先生からの突然のお便りにちょっと身震いした。
拝読すると、最近の格差に関する論議に違和感がおありだという。メールには、その理由が語られた数ページに及ぶファイルが添付されていた・・・(本文より)
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実は1990年代の前半まで格差問題について考えたり
論文を書いたりしていた。それが90年代末から格差論
ブームが起こった頃から、あまのじゃくか、へそまがりか、
わからないけれど、格差について真正面から書いたりする
のを、ちょっとやめていたフシがある。格差論議に違和感
があったのは、実はK先生(バレバレか)だけでなく、自分
だったのだ。
それを、今回、労働法学者の小畑史子先生から、実に
心のこもった丁寧なご依頼をいただき、思い切ってこれまで
感じていたことを書いてみた。