雇用政策の現場に詳しい友人から
2000年代前半の雇用が深刻化した
時代に、もっとも有効だった対策に
ついて聞いたことがある。
それは、就職の紹介や相談の窓口
での、マン・ツー・マン、つまりは
個人対個人による支援ということだった
そうだ。
「今日から、私が○○さんの担当をさせて
いただきます。よろしければ就職が決まる
まで、責任をもってお付き合いさせて
いただきます」。
「これまでの経験からすると、もちろん
いろいろ個人差はありますが、まずは
3ヶ月を目安に、そのあいだに就職が
決まるようにやっていきましょう」。
仕事に就けない人に対して、
「ハローワークに行けばいい」といわれても
なかなか足は運ばない。けれど、
「そこには△△さんが、○○時にアナタのこと
を待っているから」という励ましは、チャレンジ
しようとする気持ちを、少なからず奮い立たせる。
そんな話をニート支援の現場に詳しい別の友人から
聞いたこともあった。
支援者を新規に確保するには、もちろん
それなりの人件費が発生する。ただ、
その費用に対する就職者実績は、結局は
一番高い。個別対応は、一気には数に
つながらないように思えるけれど、実は
その積み重ねがもっとも効果的なのだ。
そんな話を、今週が最後だった大学院での
授業でもした。いろいろ労働政策の話を
したけれど、個別支援の大切さの話は
なんとなくだけれど、学生の反応がとても
高かったように思う。
支援には金もかかるけれど、結局は人である。
そんな理解がもっと広がっていけばよいと
思う。
古くから雇用問題で苦しんできた他の先進国
でも、すぐれた対策のキーワードは
「個別的」「持続的」「包括的」である。
ちなみに授業では、雇用対策の究極の目標
としては、結局のところ、仕事がないことに
思い悩み、絶望し、自ら死を選ぶ人を出来る限り
減らすことではないか、という意見があった。
それは、一つの見識であると私も思う。
そのためにも、個別支援体制のいっそうの充実
と理解は欠かせない。