自営の未来

 2009年2月の労働力調査が発表される。
 完全失業率も4.4パーセント、失業者数も
 299万人と、来る3月調査では300万人の
 大台に再び達するのは確実だろう。
 今回注目されているのは、「勤め先や事業の
 都合」による解雇や希望退職、さらには「定年
 および雇用契約の満了」からなる、いわゆる
 非自発的な離職による失業者の増加だ。
 2008年10月の86万人から2009年2月には
 119万人と、わずか4ヶ月間で33万人の増加
 である。これだけ短期間での急速な増加は
 無論、近年経験がない。今回の急速な不況を
 最も象徴する数字かもしれない。
 
 もう一つ、気になるのは、自営業・家族従業者の
 減少が大規模なことである。実のところ、雇用者数
 だけみると、今年の1、2月は対前年同月よりも
 ごくわずかだが、増えている(1月は3万人、
 2月は2万人)。それに対し、自営業などの減少は、
 昨年の12月は対前年同月にくらべて実に54万人
 減であり、今年の1、2月ともに29万人の減少が
 続いている。
 雇用調整助成金などの雇用者を守るための
 緊急対策が準備されているが、自営業はそれでは
 守られない。雇用保険に加入もしていない。
 就業のセーフティネットという意味では、
 もっとも手薄なのは自営業かもしれない。
 1990年代以降も就業機会の減少は、自営業の
 減少の影響がきわめて大きかった。小さいながらも
 一国一城の主になるという気概が社会から失われると 
 すれば、それは創造性や多様性という観点からも
 その損失ははかりしれないものがある。
 
 ちょっと前までは「進学+大企業=安定」だけでは
 ない、人生の重要なルートとして、就職して地道に
 こつこつ働きながら自分の会社を持つというものが、
 もうひとつの大切なジャパニーズ・ドリームであった。
 
 かつて高度成長期に自営業は大きく増えたが、
 1980年代以降、大きく減り始め、そこに改善の
 兆しがみられない。
 今回の不況で自営業が壊滅的な打撃を受けるとすれば
 その長期的なダメージは計り知れないと思う。