今回の希望学の本『希望を語る』で
多くの方が印象としてお持ちなのは
「正直、高いな」ということではない
だろうか。
たしかに3,500円(消費税抜き)という
のは安い値段ではない。大学の研究は
税金をつかってやっているのに、さらに
本で儲けようとするなんて(まったくもう!)
と思われているかもしれない。
ただ正直に告白すれば、今回の希望学
全四巻について、私たちは一銭も報酬を
得ていない。通常は本が売れると印税というのが
編者および執筆者に支払われるのだが、
今回は書き手のみなさんにお願いして
印税は辞退した。少しでも安い価格で
読者にお届けしたいと思ったから。
知り合いの出版関係者から複数現状の
厳しさを告げるメールが届くご時勢で、
出版元である東大出版会にとっても
希望学のシリーズ刊行は一つの挑戦だった
だろう。不況の影響だけでなく、シリーズモノ
さらには学際モノはあまり売れないという
のが定説だからだ。
その意味で、多くの方が手に取っていただける
のは、率直にとてもうれしい。本が出来てから
思ったのだけれど、これが一つの『教養』について
考える一つのエールになればいいなと思っている。
教養は、得てして、過去の事柄をなんとも難しく
考えるといったイメージが強い(少なくとも私には)。
今回の希望学は、現代的なテーマを、できるだけ
専門的な用語などに頼らず、考えようとしたものだ。
その上で、わけのわからぬことを、あきらめずに
考え続けるという教養の王道でもあると思っている。
教養のない自分が、教養について考えるなど
ちょっと不思議だ。