ここ3年くらい、自分なりに取り組んできた
非正規雇用「三部作」の最終が以下である。
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/new/rb03.htm
希望学の影響もあってか、課題を指摘するだけでなく
どこに可能性があるのかを、考えるようになった。
ここにもその影響が現われている。
この論文を書くチャンスを与えていただいた
『日本労働研究雑誌』の編集委員会に感謝したい。
〇
非正規雇用のあるべき望ましい姿を検討しよう
とするとき、そこには大別して2つのアプローチがあり得る。
一つは、置かれている深刻な現状を鋭く指摘し、その状況の
打開を目指す、いわば非正規雇用の「暗」部に切り込む
アプローチである。「派遣切り」や「非正規の雇い止め」の問題など、
近年しばしば話題に挙がるのは、その暗の側面である。
それに対しもう一つのアプローチとは、非正規雇用のなかで
状況に改善がみられる場面を見逃すことなく、その機会の拡大に
希望をつなごうとする「明」の側面に注目するものである。そして
本論文も、後者の非正規雇用における「明」の部分に光を当てた
ものである。
(中略)
以上からは、いかなる政策的含意が導かれるだろうか。
まず企業内部で特定の業種を継続し経験を積み増すことが
非正規雇用の時代から緩やかに処遇を改善させ、ひいては
正規雇用化をもたらすことが本論から改めて確認された。
そこからは非正規であっても、一定期間にわたり雇用を
継続可能とするような環境整備が進むことで、正規化を
推し進める可能性が示唆される。
その推進に向けた方策として、現行の有期雇用
上限3年(一部専門職等や満60歳以上は5年も可)
という労働基準法制を見直し、まずは広く5年程度まで拡充する
柔軟化策などが検討に値する。
対照的に、転職による企業間移動の結果としての正規化を促すには、
正社員としての就業可能性を持ちながらも、その潜在的な能力や意欲を
顕在化できないままでいる非正規雇用者の困難を軽減することが
望まれよう。企業間移動による正規化には個人の能力に関する、
企業と労働者間での情報の非対称性を解消していくための、
労働市場における情報面での環境改善が政策として有効である。