労働力調査のうち、特に就業や無業の中身や状態を
くわしくたずねた詳細結果が発表された。この詳細結果は、
信頼性のある標本数を確保するために、3ヶ月間の集計値
というかたちで報告されている。
そこから以前にも指摘した、失業者の現状が新たに分かって
きた。失業者が増えたとき、そこには2つの可能性がある。
新たに失業する人が増えるか、失業していた人が抜け出せずに
より滞留するようになるか、だ。
詳細結果をみると、2008年10月~12月期以来増加を続けて
きた失業期間3ヶ月未満の短期失業者が、今回大きく減少した。
それに対して、大きく増えたのは、3ヶ月以上1年未満の
中期失業者だ。現在のところ、1年以上の長期失業者はまだ
大きくは増えていないが、この傾向が続けば増加は時間の
問題だろう。
今朝の新聞でも、雇用調整助成金などによる休業措置などで
失業を土壇場で免れている人たちが200万人近くにのぼるの
ではないかと書かれていた。それらの人々が助成金が切れて
失業すれば、大量に短期失業者があふれ出す。だが、それと
同時に、現在の失業問題の根幹は、失業プールから抜け出せ
なくなった、失業の長期化現象の広がりにあることも忘れては
ならないだろう。
加えて詳細結果では、前職の雇用形態別失業者数の統計も
示されていた。4月~6月期に急増し、7月~9月期にも同様の
傾向を続けているのは、前職が正社員の失業者だ。その数は
100万人に達する勢いである。
2009年の年明けに話題となった派遣や請負の失業やパート・
アルバイトなどの非正規の失業も増えているが、それでも失業
は前職の雇用形態を超えた広がりをみせている。
2002年の7月~9月期と10月~12月期には、正社員からの失業者
は当時、100万人を超えていたことを考えると、冷静な対応も必要
だろう。だが、それにしても、今回の正社員からの失業の急増ペースは
すさまじいものがある。
先日のニューヨークタイムズでは、アメリカの最近の失業の特徴として、
解雇よりも採用抑制がより顕著であることと、既存労働者の実質賃金は
労働時間の現象もあって高まり気味であることを述べていた。なんだか
90年代の日本の失業のようだ。それに比べるとデフレが実質賃金の低下
につながり、正社員の雇用安定も中小企業を中心に危うくなった日本の
失業構造は、米国とは大きく異なりつつあるようだ。
この雇用総崩れの時代、何から始めればよいのだろうか。そういえば
アメリカの友人から「日本はアメリカのことが嫌いになっているのではないか」
と聞かれ、私には答えがみつからなかった。
たしかに危機の直接の原因は外国から発したものであろうが、それ以前に
恩恵を受けていたことも事実だ。またいつ起こってもおかしくない事態に
対して、1980年代以降からずっと減少を続ける自営業など就業の
最終基盤としての最整備を実現できてこなかったことは国内問題である。
さらには雇用を新たに作り出す雇用創出力は、1998年から衰退したままだ。
危機にはっきりと直面しなければ、変わらないものなのかもしれない。
ただ一ついえるのは、
犯人捜しをしている余裕など、今はどこにもないということだろう。