いかに折り合いをつけるか。

 これから復興の具体的策が本格化する。
 現在のところ、復興は、被災地の現状回復
 ではなく、新しい場所への移動を前提とした
 新生活の再建が安全かつ効率的という意見が
 すこしずつ大勢を占めつつあるように感じる。
 私も一時的な移住に賛成する部分もある。まずは
 将来に向かって動き出すために、一時の休息
 をとり、心と体を休めるためには、安息できる 
 場所に移動することも大事だろう。その場合、
 孤立することなく、ある程度、近しい人たちと
 移ることができれば尚さら望ましい。
 ただ、釜石をはじめ、被災者の多くは、やはり
 生まれ育ったふるさとをなんとかふたたび 
 元気にしたいということを、生きる支えもしくは
 希望としていることを、無視してはならない。
 彼らはけっして永久に移住することを望んではいない。
 無論、どうがんばっても、元のとおりにはならない
 ことは、みんなが一番わかっている。だからこそ、
 本当の意味でも「ふるさと」のアイデンティティを
 いかに残せるかを、みんな模索しているのだ。
 釜石の友人と電話で話した。「今、こちらから
 できることはないか」とたずねたところ、
 「知恵を貸してほしい」といわれた。その言葉の
 意味は重い。
 
 移住と再建という、難しい二つの選択のあいだに、
 いかに折り合いをつけていくことができるのか。
 被災の状況によってそれぞれにあった折り合いの
 つけ方があるのだろう。それでも正解などないの
 かもしれない。しかし何らかの決断もしなければ
 ならない。
 
 いったい、自分に何ができるのか。
 ここでも考える。