SNEP (27)

 スネップのなかには、もうこれ以上
 迷惑をかけたくない、できれば放って 
 おいてほしいという気持ちや感覚が
 一部にあるかもしれない、という
 ことを書きました。
 あまりに現状が厳しいときや
 過去に何度か状況を変えようと
 努力して、それでも何も変えることが
 できなかった経験を持つと、
 そのような気持ちになりやすいのかも
 しれません。
 しかし、私は何度でも、どれだけでも
 迷惑はかけていいのだと、思います。
 支援現場を、もっと利用する、迷惑を
 どんどんかけてほしい。
 この10年をみていて、困難な状況にある
 特に若者を支援する体制は、驚くほどに
 整備されてきました(もちろん完全では
 ありませんが)。
 支援の現場で活動を続けている人たちは、
 スネップ状態にある人たちから相談される
 ことを、迷惑どころか、ずっと待っていると
 思います。
 もちろんすぐに一気に状況を変えられること
 ばかりではありませんが、それでも社会から
 孤立した人たちに伴走しながら、同じように
 悩みながら、状況を変えていくという経験を
 積み重ねてきています。
 そのなかで、人間はどんなに苦しい境遇
 からでも、他人の助けをときに借りながらも、 
 自らの力で状況を少しずつ変えていくことが 
 できるのだということを、体験しているのです。
 やや大げさな言い方をすれば、人間が自ら
 変わっていくことができる力が備わっている
 ことに感動をおぼえることも多いのです。
 ですので、ぜひとも迷惑とか、恥ずかしいとか
 考えることなく、まずは相談に行っていって
 ほしいと思います。行ってみて、状況が
 変わらなくても、あきらめることはありません。
 最近は、探せばいろいろ相談できるところは
 あります。「どこかウマがあう」人に出会うこと
 ができれば、確実に状況は変わっていきます。
 本人がまだ望まないとすれば、家族や知り合い 
 が相談に赴くのでもかまいません。
 最後に、もう一つ、スネップが増えるとなぜ
 問題なのか、について。
 以前、ウィキペディアで「玄田有史」を見たら、
 「玄田のニート問題に対する主張は、ニートの
 増加は将来社会的コストにつながるということの
 ひとことに尽きる」といったことが断言してあって、
 ちょっと驚くというか、笑いました。へー、そうなんだ
 と思いました。今は、なぜか、その書き込みは
 なくなりましたが。
 たしかにニートにせよ、スネップにせよ、これ以上に 
 増加を続け、自立して生活ができない人が増えていく
 ことは、財政赤字が危機的な状況にある日本では
 なんとか避けなければならないことだと、思っています。
 そういう意味では、スネップも、個人や家族の問題に
 とどめることなく、社会の問題として考えてほしいという
 思いはあります。
 それから長期的には、日本は人口減少によって確実に
 働き手が不足する状況が待っています。経済の活力を 
 削ぐだけでなく、社会保障の担い手も足りなくなります。
 
 そのためにも働き手を一定程度確保することは、とても 
 重要なことです。ここ最近、60歳以上の就業者は着実に
 増えつつあります。一方で、スネップが表すような働き盛り
 の無業者は、どんどん増え続けているのです。
 働きたくても働けない主婦(主夫)の問題解決とならんで、
 スネップの問題解決は、働き手を確保するためにも
 大事であることは、やはり言っておきたいと思います。