玄田)
質問です。スネップへの支援としては
どのようなことが大切だと思いますか?
井村)
統計でみるとスネップは家族型の方が
「本人が焦りにくい」という
理由で心配な状況なんですねー。
若者の自立支援の現場でも
一人で頑張らないといけない人よりも家族の
庇護のある方の方がエンジンのかかりがゆっくりだ、
というのは同じだなと感じました。
ただ、私たちが出会う若者は若者支援の現場にやってくる若者です。
思いの差はあれ、「今の状況を何とかしなくっちゃ」と
ある程度エンジンがかかった状態でいらっしゃいます。
なので、現場支援者の感覚としては、何とか自立に向けて動き始めた後、
家族という大きな支え手を望むことができない一人型スネップの方の方が
大変だなぁと感じてしまったのだということに気が付きました。
全くエンジンがかかっていない人、
「今の状態を何とかしなくっちゃ」と思う状態にない人、
はお手伝いをされることを望んでおられない方々だと思いますので
私たちには、「もし何とかしなくちゃ、と思った時に思い出して欲しいです。」と
将来選択できる情報をお伝えすることくらいしかできないと思います。
でも、そうやって提供した情報を持って、
例えば2年前にお渡ししたチラシや、
3年前の新聞記事を持っていらっしゃる方は
実際におられますので選択できる情報を
事前に何らかの形でお伝えしておく、
ということは意味のあることだと考え
活動しています。
「スネップへの支援としてはどのようなことが大切ですか?」と
先生に尋ねていただいて若者支援者としてまず最初に思ったのは
10年前デンマークをぶらぶらしていた時に聴いた、
「デンマークでは成人すると親の子への扶養義務はなくなり、
代わって国に責任が移るんだよー」という言葉でした。
今風にいうと、
「家族による私的な扶養ではなく、社会による公的扶助を行う」という
ことでしょうか。
家族が守ればひきこもりが増え、社会が守ればホームレスが増える、
などといわれることもあるようで、私はただの若者支援者ですので、
国家の仕組みについて語ることはできませんが、
家族による扶養に期限を決めるということはスネップへの支援として
大切であると思います。
昨日の読売新聞の夕刊では、社会福祉がご専門の
日本女子大教授岩田正美先生が、家業を子が継承することが
珍しくなかった時代には、家産を継承するものが老親を
扶養することが自然だと見られるような実態もあったけれども、
今は雇用されて働く人の割合が増え、その実態が変わりつつある
ことを指摘されておられます。
社会が変わっていっているのであれば、
支援も変わっていかなくてはならないのではないかと思います。
また、社会的に孤立している方が社会に参加する能力を持っておられたとしても、
最初で最大のハードルとなるのが「社会性の獲得」です。
これは一般に「コミュニケーション能力」などと表現される
こともあります。
若者支援を約30年されておられる、
富山のピースフルハウスはぐれ雲の川又直氏は
「親や学校は教育機関なので、本人を守るために
最後は許してしまうけれど会社や地域社会はそうはいかない。」
と若者の社会性の獲得が家庭教育や学校教育の中では
なかなか身につきづらいことを
昔から指摘をされておられます。
孤立している若者たちを支援していると、
この「社会性の獲得」ができる場を得られるということは
今や当たり前のことではなく、贅沢なことなんだなぁと思います。
(実際大学生の就活の支援などをしていても社会性を獲得していく
ことができる要領のいい子からやっぱり受かっていきます)
この「社会性の獲得」ができる場を
どのくらい多様に作っていくことができるのか、
これがスネップへの支援として次に大切になってくることかと思います。
最後に「寄り添って、つながる」ということもスネップへの支援
として大切だなぁと思います。
昨日、家族が支えきれなくて心配な状態にある若者の所在が
分からなくなりました。
何か事件に巻き込まれてはいないだろうか、そんな心配も募ったので
その若者が住む地域の民生委員さんに連絡を取ったところ、
その若者が安全なところにいることが分かり、ほっとした、
ということがありました。
その民生委員さんは地域で、24時間、
その若者に「寄り添って、つながって」くださっています。
スネップがどこにいるかもちゃんと知っておられます。
私たち通所型の若者支援者には到底できない寄り添いをされておられるので、
「現場力、到底かないません。。。」というと
「私たちは地域でなんかあったら私たちが困るからやっているのよ!」
「それよりあなたみたいに地域に住んでいなくても関わってくれる人が増えて
助かるわ―」とまでおっしゃって下さいます。
私はスネップの状態にある方を支える方が増えれば増えるほど安定する
のでは、と思います。
関西大学臨床心理専門職大学院の石田陽彦教授が
「公助を求めると国がつぶれる、自助を求めると自殺が増える、
大事なのは共に助け合う共助」といつもおっしゃいます。
共に助け合えるための一員と少しでもなれるために
今後も勉強していきながら活動を続けていきたいと考えています。
たちかわ若者サポートステーション
井村良英
○
「社会性の獲得」
「寄り添って、つながる」
「支える人が増えれば増えるほど安定する」
スネップ支援の大事なヒントをいただきました。