賃上げ

賃上げへの期待が
高まっている。
どんな国の
どんな時代でも
賃上げを実現するのは
そこでもっとも成長が
著しい産業だ。
成長する産業は
つねに人手不足気味であり
人手を確保するために
世間相場よりも賃金を率先して
上げていく。そのための原資も
確保されているものだ。
だとすれば、日本にとっての
成長産業は何か。
製造業ではない。
金融業でもない。
小売業でもない。
建設業でもない。
それはひとえに
医療・福祉業だ。
医療や福祉は着実に
就業者が増えているが
まだまだ人手が足りないままだ。
規制の影響などもあって
なかなかそこで働く人の賃金は
上がっていかない。
しかし今後ますます重要性の
高まる医療や福祉の現場で
働く人の給料が上がらないかぎり
日本全体の賃金は上がらない。
賃金が上がらなければ
デフレもおさまらない。
日銀の金融政策は
時間がかかるだろうが
いつかは物価を上昇気味には
するだろう。
しかし日銀に医療や福祉の
賃金を直接上げる力はまったくない。
物価が上がって、賃金が上がらなければ
労働者の生活はますます苦しくなる。
よろこぶのは、賃金据え置きのまま
物価の上昇で利益が得られる企業と
負債を物価上昇で軽減される資産家
だけだ。バブルは彼らにだけ利益になる。
医療や福祉の賃金を、利用者の
負担を過剰に高めないで、上げるには
さまざまな規制の緩和も必要だが
なんといっても現場で頑張っている人たちの
知恵を集め、それを制度の改善につなげて
いくしかない。
デフレを克服できるのは
日銀ではない。
それを可能にするのは
賃上げを実現するための
現場の知恵だけなのだ。