『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』
玄田有史編、慶應義塾大学出版会
http://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766424072/
「どうして賃金が、ぜんぜん上がってこないの?」
金融政策を専門とする経済学者の友人から、
こんな質問をされたのは、
たしか2000年代前半か、半ばくらいの頃でした。
どのように返事したのかは、定かではありませんが、
おそらく「不況が続いてきたから」といったようなことを答えたように思います。
けれども、いわゆる「失われた10年」と呼ばれてきた時代が過ぎ、
少なくとも経済統計上は、景気が回復基調に入った段階でも、
依然として賃金の改善していく兆しはみられませんでした。
さらには2000年代終わり頃からは、完全失業率は趨勢的な低下を続け、
有効求人倍率が大きく上昇するようになっても、
賃金が大きく増え始めたという声は、ほとんど聞こえてきません。
労働や経済などの研究者や実務家に限らず、
人手が足りないはずなのに、なぜそれが賃金の増加に結びつかないのかに、
素朴な疑問を感じてきた方々は、実は多いのではないでしょうか。
この本に込められた発見やメッセージが、そんな読者のみなさんに、
「なるほど」「そういう見方があるのか」と、思ったり、感じていただけたならば、幸いです。
(「あとがき」より)