2020年3月の労働市場(3)

今回の不況のうち、
かつて観察されなかった出来事を
挙げるとすれば、その一つは
「休業者」の危機直後の
短期間での急増ということになる。

総務省統計局「労働力調査」によれば
2020年3月時点の休業者(仕事を持ちながら
調査期間中の3月末一週間に仕事をまったくしなかった人)は
249万人に達した。249万人は、名古屋市と大阪市の人口の
ちょうど中間あたりに相当する。

その数は、実施された調査期間のうち、
e-statから取得可能な1985年以降で
過去最多となっている(休業者数は
すう勢的に増加を続けているが、同時に
近年3月は他の月に比べて多くなる傾向もみられる)。
なお東日本大震災直後も休業者は急増したことも
予想されるが、当時調査が不可能となっていたため
2011年3月から9月に関しては統計が存在しない。

休業者は2月から3月にかけて53万人増加し、
うち非正規雇用が48万人を占める。

一斉休業は、緊急的な景況悪化に対する
雇用調整の回避手段の措置であり、
それだけ会社は、3月時点では危機が一時的なものと
みなしている場合が多かったと考えられる。

一方、リーマンショック発生直後の2008年9月には
すぐには休業者は増加せず、しばらく100万人程度であった。
それが年末の同年12月になって145万人と突然増え、翌春まで
140~150万人台を続けた。それが5月以降、緩やかに減少
するのと並行し、完全失業率も4%台から5%台へと
高まっていった。

今回も休業は、事態が当面改善するといった見通しが
持てず、危機が持続的だと期待が変化するのに応じて、
契約期間の満了や解雇など、別の雇用調整へと転じていく
可能性がある。

その意味でも、今後の雇用情勢を占う上で、
短期間で急増した休業者の推移を
注意深く見守っていくべきだろう。