今回の労働力調査によれば、
6月時点で
就業者全体の約5%に相当する
340万人いた
宿泊業、飲食サービス業で
働いていた人々のうち、
7月時点では
18万人(約5%)が
同業から離れている。
そのうち
10万人が
仕事をしていない
完全失業者もしくは非労働力人口
となっている。
*
今回の労働力調査によれば、
6月時点で
就業者全体の約5%に相当する
340万人いた
宿泊業、飲食サービス業で
働いていた人々のうち、
7月時点では
18万人(約5%)が
同業から離れている。
そのうち
10万人が
仕事をしていない
完全失業者もしくは非労働力人口
となっている。
*
今回も
総務省統計局「労働力調査」から
前月から今月にかけての移動状況を
見ておく。
6月の就業者のうち、
7月は完全失業者または非労働力人口に
移行した割合は1.6%と、
5月から6月の1.4%、4月から5月の1.6%
とほぼ変わりなく安定していた。
就業者を非正規雇用に限っても
3%前後とほぼ変わらない。
6月に非正規雇用だった人々のうち、
7月には内部昇進や転職などによって
正規雇用になった割合は
今月も3.0%と、
前回の3.3%、前回の2.8%と
同程度であった
(数にすれば50~60万人程度が今も
毎月非正規から正規に移行している計算になる)。
6月に完全失業者だった人々のうち、
7月に就業者に移行したのは
13.6%に達し、
前回の11.5%、前々回の11.7%よりも
持ち直し気味に推移している。
昨日の夕刊などでも
「雇用悪化続く」という文字をみかけたが
見方を変えると、経済全体では
驚くほど4月以降の就業動向は安定している
といえる面が少なくないことは指摘しておきたい。
同時に、働き止めで非労働力化した人々が
就業に復帰する動きも段々と収束しつつある。
6月の非労働力人口のうち
7月に就業者となったのは1.9%であり、
前回調査の2.3%、前々回の2.4%から
ゆるやかに縮小が続いている。
ただし、休業者については、
ほぼ感染拡大前の水準に戻ったが
従業者に復帰する割合は徐々に
減り始め、失業もしくは非労働力の
無業状態に移行する割合が増えている
ことには要注意だろう。
具体的には
4月から5月には6.6%だったのが
5月から6月には7.2%に上昇、
6月から7月にかけては
12.5%へと跳ね上がっている。
感染拡大後、休業を続けていた人のうち
どうにも仕事を再開できなかった人々が
7月に来て仕事を失う状況が強まっている
のもまた事実である。
就業全体は比較的落ち着きを見せるなかで、
これまで休業していた人々に対しての
支援が急がれる。
全体でみれば安定していることと
そのなかで一部の人々が
たいへんな思いをしていることは
矛盾しない。
4月の感染症拡大
による緊急事態宣言以降、
就業状況全般としては、
厳しさが続く一方、
経済活動の再開に伴い、
緩やかな回復傾向が
続いている。
本日発表の
7月分の
総務省統計局「労働力調査」
ならびに
厚生労働省「職業安定業務統計」
の結果全体を総括すると
概ね上記のようになるだろう。
7月になってからの
感染症の再拡大による
先行き見通しの悪化から
雇用をもちこたえられず
就業者数について
4月に続く2番底を迎える深刻な事態は
なんとか回避されたようだ。
良い意味で予想が外れ、
よかったと思う。
労働力調査によれば、
就業者数(季節調整値)は
4月に1963年1月以来の
前月からの落ち込みを記録した後、
5月から7月にかけては、
ほぼ横ばい、もしくは緩やかな増加と
なっている。
なかでも罹患リスクなどを考慮し
いち早く「働き止め」をしていた
と思われる65歳以上の就業者の数は
2月、3月の感染拡大前の水準まで
7月にはほぼ戻っている。
感染リスクが消失したわけではないものの、
生活のための収入確保や、
マスク着用などの感染防止策を徹底しながら
就業を再開している人々が
高齢者を含めて多いのだろう。
職業安定業務統計では、
有効求人倍率(季節調整値)が
前月の1.11倍から1.08倍にやや低下した。
有効求人数はわずかに増加したものの、
働き止めの解消による
6月の新規求職申込者の急増の余波も残って、
それ以上に有効求職者数が拡大した結果
となっている。
ただ、それでも非労働力人口全体は
3月から4月にかけて増加した
約100万人分の半分程度が
維持されたままであり、
7月でも依然として働き止めを
続けている人がいることも示唆される。
一方、4月以降、失業急増を
ある程度回避させた主な要因の
一つである緊急事態を背景とした
休業者の数は、6月、7月を通じて、
感染症拡大前の水準に
ほとんど戻っている。
さらにもう一つの要因である
短時間就業のシフトについても
週35時間以上勤務の雇用者数、
週1~34時間勤務の雇用者数ともに
5月から7月にかけて、ほぼ安定した
状態に戻っている。
以前にもここで指摘したように
雇用者のうち、
正規の職員・従業員数は
実のところ、
緊急事態宣言下の2020年4月に
2013年以来過去最多となっていた。
https://genda-radio.com/archives/date/2020/08/02
さらに7月の正規雇用者数は、
4月の水準を上回るなど
拡大が長期的に今も続いている。
その意味で感染症の拡大は
長期的な正社員数の
力強い増加トレンドを
脅かすものとまでは
今のところなっていない。
一方、非正規の職員・従業員数は
4月の大幅な落ち込みの後、
5月に若干回復してからは、
ほぼ横ばいの状況が続いている。
7月の非正規雇用は、対前年同月でみると、
131万人と大幅な減少になっており、
今回の報道などでも、この点が
強調して取り上げられると推測される。
ただ、これはむしろ2019年に
非正社員数が記録的な高水準に達していた
ことの影響を少なからず反映している。
2019年の非正規雇用の増加は
消費税増税前の9月まで続くため、
非正規雇用の対前年同月減少は
今しばらく続くことになる。
対前年の数値だけでなく、
全体の長期的な流れを捉えることが
重要になる。
見方によれば非正規雇用者数は、
先に有効求人倍率が1倍を
超えていた2016年から17年と
同程度の水準に今もあり、
一定の求人に下支えられている
とも取れる。
また感染症拡大前後の動きとして
これまで自営業の増加気味の
動きに注目してきた。
https://genda-radio.com/archives/date/2020/08/01
https://genda-radio.com/archives/date/2020/08/12
ただ今回の7月調査からは、
自営業にはさらなる拡大の動きは
見られない。今後の動向が気になる
ところだ。
経済活動の再開に伴い
就業維持および就業確保の
努力が7月も多くで続けられている。
一方、宿泊・飲食業では
休業者数が前年同月水準まで戻り、
就業者数の減少も前年に比べて20万人以上
減少する状況が4ヶ月連続するなど、
余裕のない状況が続いている。
また建設業などでも6月、7月と前年に比べた
就業者数の落ち込みが激しくなっており、
こちらはオリンピック延期などとも
関連しているかもしれない。
このように一部では就業機会の
維持・確保の努力が限界に
達しつつある可能性もある。
今後も必要な対策を見定め
届けていくことが
求められる。
八月は
今日で終わりだけれど、
明日朝には
七月分の
労働力調査と
職業安定業務統計が
発表される。
陽性者と重症者が
急拡大した先月末の状況であり、
先行きの雇用見通しが
厳しくなった事業所も
多かったかもしれない。
明日は
今後の就業情勢や雇用政策など
を考える上でも
重要な一日になるだろう。
*
今日の一曲。
ムーンライダーズ「くれない埠頭」
https://www.youtube.com/watch?v=Fpwg5AtcGMU
https://www.youtube.com/watch?v=ur9-1WVBuZ8
28日、
安倍首相は
辞任表明の記者会見のなかで
政権の自己評価の一つとして
就業者数の増加を挙げた。
実際、
再び首相の座についた
2012年から
(正確には2012年12月)
感染症拡大前の
2019年にかけて
全体の就業者数は
444万人増加している。
それまでの就業者数の
ピークであった1997年からは
277万人減少していたことを
考えると、
いわゆる「失われた10年」と
呼ばれた時期の就業機会の
喪失を一気に取り戻した計算になる。
444万人の就業者増加のうち、
なかでも女性では340万人、
65歳以上の高齢者が296万人
の増加となっており、
女性と高齢者の就業拡大が
広がったのも2012年からの特徴である。
6度の選挙にすべて勝利したのにも
抽象的な政治理念よりは、
まずは経済と雇用の回復という
選挙権者の多くの生活に直結する
テーマを掲げたことが功を奏した
と言われているようだが、事実だろう。
ただこれらの就業増加を
本当に安倍政権による成果であると
評価できるだろうか。
記者会見でも、
政治は「結果」がすべてだと
首相は述べていた。たしかに
444万人の就業増加は、
結果的に事実だとしても、
その理由は別のところにある
可能性はないだろうか。
2012年から19年にかけて
就業機会が大きく拡大したのには
少なくとも4つの理由が考えられる
ように思う。
第一は、首相就任と同時に
打ち出された経済政策の効果だ。
当初「3本の矢」という指針と
新総裁を迎えた日本銀行との連携のもとに
驚くような金融財政政策が実施された。
その結果、それまでの円高傾向が
修正されることで輸出に改善が見られるなど
経済状況は確かに好転が見られた。
あわせてリーマンショック後の2009年を底に
回復傾向にあった有効求人倍率の上昇も
軌道に乗り、2014年以降は1倍を超え続けてきた。
経済政策による求人拡大の結果としての
就業増加は、アベノミクスによるものと
評価するのが適切だろう。
ただ、第二の理由として、
政策が効果を持ったとしても
重要なのは雇用政策だった可能性がある。
たとえば高齢者の就業機会拡大には、
政権期間中の2013年度より施行された、
65歳までの雇用機会の確保を義務化する
高齢者雇用安定法の影響が大きかったことは
まちがいないだろう。法改正は65歳までの
雇用を拡大したのみならず、65歳以降も
働くことを希望する高齢者にとっての
貴重な就業の架け橋となった。
しかしこの法改正はすべて
2012年までの多くの関係者の努力の賜物である。
実現に向けた労使による粘り強く精力的な
議論と行政による慎重な法制度の設計は、
すべて第二次安倍政権成立前のものである。
その意味で高齢者の就業拡大は、文字通り
政権期間中に結実した結果であると考えるのが
自然だ。
(※ 70歳までの就業機会の確保を
努力義務とする改正は来年度から施行される。)
同様に女性の就業機会の拡大には、
仕事と子育ての両立支援に向けた雇用政策が
効果を持った可能性がある。両立支援のための
育児・介護休業法の改正の施行は2010年であり、
こちらも安倍政権によるものとは考えられず、
まさに結果アピールの機会を政権が享受した
一例と言える。
(※ 育児・介護休業法は、2009年以降、
政権期間中の2016、17年にも改正が行われている。)
(※※ もう一つ安倍政権下での雇用政策では
「生産性上昇」に資するものかが問われることが
増えたのも特徴である。それを労働市場の効率性
改善の契機とみなすか、さまざま理由で生産性を
上げられない(最優先できない)企業や人々の
切り捨てとみなすかは、雇用政策の役割や意義
として議論の分かれるところに思う。)
第三の理由としては、
政策とは別に
2010年代になり
人口減少と高齢化という長期的な
人口変動の影響を見ることも可能である。
2012年から19年には
若年人口は本格的な減少モードに突入した。
2011年に人口はピークを迎え、
それ以降なかでも25~39歳は
461万人もの大幅な減少を記録した。
この若年人口そのものの減少が
それまで数々の制約下にあった
女性の就業にとってチャンスに
なったことは大いに考えられる。
若年女性の貢献なくしては
仕事がはっきりと回らなくなったのが
2010年代だった。
65歳以上の高齢者人口も
2011年以降615万人と大きく増えたが
そのなかには健康で働く希望を持った
人々は少なくなかっただろう。
これらの就業可能な高齢者が
非正規雇用を中心とした求人拡大の
大きな受け皿となってきた。
2014年以降は、非正規雇用のみでなく
正規雇用も増大していったが、
そこには多くの企業の業績改善と
あわせて人口減少が見込まれるなかで
人材を確保したいという企業の意図も
少なくなかったように思う。
これらの、以前から指摘されてきた
人口変動が2010年代に本格化したことは
結果的に就業増加につながった面もあり、
それらの影響は人為的な政策とは一線を
画すかたちで評価されるべきものであろう。
最後に第四の理由として、
収入の不足と将来の不安の強まったことが特に、
生活の苦しい人々が働かざる得ない状況を作り出し、
それが結果的に就業増加につながった
可能性もある。
就業機会は正規雇用についても拡大したが
拡大ペースは非正規雇用のほうが
いくぶん大きかった。特に
就業拡大に寄与した女性や高齢者の場合、
非正規雇用への就業がかなりの部分を占めた。
就職氷河期世代など
年齢の若い女性は
十分な世帯収入がないことが
就業を選択する主な理由な一つだったと
考えられ、
高齢者についても、
十分な貯金もなく、
年金だけで今後生活することに
不安を感じたことから
働ける限り働くことを
選択したというのが多くの実情だろう。
(※ その状況は、ブルース・ホーンズビーの
名曲 The Way It Isの歌詞を彷彿とさせる。
https://www.youtube.com/watch?v=GlRQjzltaMQ
http://neverendingmusic.blog.jp/archives/19576530.html
)
『危機対応の社会科学(下)』において
大沢真理さんは、安倍政権下での
税・社会保障制度が
高所得層や専業主婦世帯を優遇し、一方で
共働きやシングルマザーなどを罰するかたちで
逆機能していたことを、データを踏まえて厳しく
批判している。詳しくは下記を参照。
http://www.utp.or.jp/book/b481716.html
生活の苦しい人々が安心・安全に暮らせなくなった
結果として、
働かなければやっていけない状況
働いても働いてもラクにならない状況
をさらに作り出したのならば
それを政権の成果と主張することを
国民がどのように受け取っているかは、
関係者はよくよく考えるべきだろう。
広く一般論としても、
誰かが誰かの仕事を作った(作ってあげた)
というのは、
(問われたからそう答えた限りと言われる
かもしれないが)
くれぐれも慎重であるべきと
改めて思った。