SNEP (12)

 スネップはインターネットを
 あまり利用していないようでした。
 
 それは電子メールの利用についても 
 あてはまります。電子メールは
 PCによるものだけでなく、
 携帯メールによるものも含みます。
 2006年時点で20~59歳の独身の
 無業者のうち、およそ半分は
 電子メールを利用していませんでした。
 有業者については、7割以上が
 電子メールを使っていたことと
 比べると、大きな開きがあります。
 ただし、無業者のなかでも、
 スネップ以外の非孤立無業では
 6割近くが電子メールを利用していました。
 35%以上は、週4日以上、誰かと電子メール
 のやりとりをしていました。
 一方、スネップでは電子メールの利用者は
 41%に限られていました。なかでも
 家族型は、特に電子メールの利用が
 少なくなっていました。
 実際に、家族以外との交流が少ないだけでなく
 電子メールを利用した交流も少ないというのが
 スネップの特徴です。
 

SNEP (11)

 2006年に実施された
 社会生活基本調査では
 インターネットの利用状況が
 詳しくたずねられています。
 スネップは、人と直接接触
 することがない代わりに、
 インターネットを通じて
 つながっていることも
 多いのではないかと 
 思われるかもしれません。
 しかしながら、過去一年間
 にインターネットを利用しなかった
 と答える確率は、スネップは
 むしろ高くなっていました。
 特に家族とだけ一緒にいる
 家族型のスネップほど
 インターネットを利用しない
 傾向が強く表われていました。
 YouTubeの開始が2005年、
 ニコニコ生放送が2007年からと
 今は状況が違うかもしれませんが
 少なくとも2006年の時点ではスネップが
 特別にインターネットにはまっている 
 とはいえません。
 インターネットを利用した
 情報の検索や入手について
 週4日以上行っているという
 割合は、若干ですが、ずっと
 一人の一人型スネップで
 やや多いのは事実です。
 
 具体的には週4日以上
 情報検索をしているのは
 無業全体で19%、
 スネップ全体で20%、
 一人型スネップで23%
 といった具合です。スネップが
 情報検索に積極的だとしても
 ごくわずかな違いしかありません。
 むしろ一方で、まったく
 ネットによる情報検索・入手を
 しないという割合が
 無業全体で54%、
 スネップ全体で58%、
 一人型で50%
 となっています。
 あわせて
 パソコンゲームやテレビゲームなども
 むしろスネップはあまりやっていない
 ようです。特に過去一年に
 スポーツ、旅行、ボランティアなどを
 一切していないスネップほど、
 パソコンゲームなど 
 をしない傾向が強く見られました。
 ネット中毒、ネット依存症が
 スネップ増加の原因とは
 いえないと私は思います。
  

SNEP (10)

 スネップは、
 1996年の35万人から
 2006年には107万人へと、
 わずか10年で3倍も
 急拡大しました。
 では、どのような特徴が
 その増加の背景に
 あるのでしょうか。
 スネップになりやすい無業者として
 男性のほうが女性よりなりやすい
 30代以上のほうが20代よりなりやすい
 高校中退者など教育機会が十分でない
 人ほどなりやすい
 といった事実があることを指摘しました。
 一方で、無業者に占めるスネップの割合を
 みると、こんなこともわかったのです。
 男性に比べて女性の無業者のスネップ割合が
 急速に高まっている
 20代前半の若年無業者のうち、スネップの割合が 
 高まっている
 大学卒の無業者のうち、スネップの割合が
 高まっている。
 つまりは、どちらかというと
 スネップになりにくい無業者たちのなかでこそ
 孤立状態にある人が増えているようなのです。
 以前に、特段におカネ持ちでもなく、一方で
 特段に困窮しているわけでもない、普通の
 家庭からスネップは生まれているということを
 述べました。
 ここでもやはり、スネップは一部の人たちに
 限られた現象から、性別、年齢、学歴の違いを
 超えて、誰でもなるかもしれない現象に
 なりつつあることがわかります。
  
 
 

SNEP (9)

 では、本人が治療や療養をしていない
 として、家族はどうなのでしょうか。
 家族のなかに介護を要する人たちが
 いて、そのケアに忙殺される結果として
 ずっと一人か、家族とだけか、
 つまりはスネップに
 なっているのかもしれない。
 
 ところが、
 統計分析からは 
 自宅に要介護者が家族に
 いる人ほど、スネップに
 なりやすいという傾向は
 みられませんでした。
 
 たしかに家族の介護に
 忙しく、社会とつながることが
 難しい面もあるかもしれません。
 しかし、その一方で、介護される
 家族がいるということが、支援者の
 輪を広げ、それに加わり、社会との
 つながりを広げていく面もあるのでは
 ないでしょうか。
 
 本人の健康に不安があったり
 家族が要介護であるために 
 スネップになりやすい
 「わけではない」!
 だとすれば、孤立化の
 原因は何なのか。
 それをみんなで探していきませんか
 ということが、
 スネップを提起した
 一番の理由です。
 
 

SNEP (8)

 スネップの人たちは、
 病気や怪我を抱えていることが
 多いのではないか。
 そう思う方もいるかもしれません。
 いわゆるメンタル問題を含めて
 病気や怪我のために外出が困難に
 なったり、人と会うことが難しくなる結果
 スネップ状態に陥っているのかもしれない。
 
 社会生活基本調査のうち
 最新に行われた2011年の調査では、
 健康状態についての設問があります。
 
 ところが匿名データが提供されている2006年
 調査では、健康の設問が含まれていません。
 そこでかわりに、調査された2日間のうち
 治療や療養のための時間があるかどうかに
 注目しました。
 しかし実際、統計分析をしてみると、
 治療・療養の時間がある人ほど
 スネップになりやすいという傾向は
 みられませんでした。
 むしろどちらかといえば、治療や療養
 の時間がある人ほど、スネップになりにくい、
 つまりは誰かと交流しやすくなっているという
 傾向すらありました。
 ちなみに、細かいことですが、お医者さんや看護師さん
 など、仕事上の行為として接触している場合は、
 「一緒にいた」という交流には含まないことになっています。
 
 それでも、治療や療養をして、健康になりたい、
 社会に復帰したいという思いや行動があることは
 それを応援してくれる友人や知人とのつながりを
 生みやすいのかもしれません。
 それに問題は、健康でなくても、いろいろな理由で
 治療や療養をしないまま、無業状態にある人なの
 かもしれません。
 
 健康とスネップの関係については、2011年の
 社会生活基本調査が利用可能になった時点で
 ぜひともあらためて検討してみたい点です。