金環日食の直後、
ラジオをつけたら、
ノラ・ジョーンズの
サンライズが流れていた。
そのすぐ後に、
キム・カーンズの
ベティ・デービスの瞳が
流れた。こっちの
バカバカしい感じが
好きだ。
「みえた」「みえた」と
盛んだったけれど、
不運にも雨や雲でみえなかった
子どもたちもたくさんいることを
考えると、自然や確率そのものに
もう少し思いをはせるということでも
よかったような気がするけど。
○
スネップへのなりやすさについて
思いがけない発見がありました。
家庭の経済状況です。
ニートの場合、バブル経済が大きく
崩壊する以前の1990年代前半には
経済的に余裕のある家庭の若者ほど
ニートになりやすい傾向がありました。
所得に余裕のある分、無理して働かなく
てもよいと、本人も親も考えることが
できました。これを経済学では、
労働供給の所得効果と呼びます。
それがバブル経済の崩壊と経済停滞の
長期化にあわせて、所得効果が弱まって
いきます。つまり、以前とは反対に、経済的に
余裕のない家庭の若者が無業になったとき、
もう仕事につくことの希望を持たなくなり、
ニートになる確率が高くなっていたのです。
経済的に貧しい場合ほど、進学をするのが
難しかったり、仕事につくための情報やノウハウが
得いにくいということがあったのかもしれません。
このようにニートには、貧困問題が大きく影を
落としていました。
それに対して、スネップへのなりやすさの特徴の一つは、
それが、家庭の収入とは基本的に無関係だということです。
極端に所得の低い場合や所得の高い場合などをのぞき、
どのような家庭からでもスネップ、つまりは孤立無業は
発生していたのです。
収入ではなく、家の広さ(部屋数)の関係もみてみましたが
ごく平均的な部屋数の家から孤立無業が生まれる確率は
一番高くなっていました。
社会から孤立するということには、貧困問題だけでなく
何か別の大きな力が働いているのかもしれません。最近
中流の没落といったことがいわれたりしますが、案外
誰でもスネップになるかもしれないということと
どこかで関係しているのかもしれません。
その何か別の力とは何か。
データ分析だけではわからないものかもしれません。
そこには、たとえば就職支援や若者の自立支援現場
にいる人たちが、大事なヒントをつかんでいるような
気がしています。
カテゴリー : ベンキョーしてみた
SNEP (6)
ふたたび20~59歳の
未婚無業者(通学中を除く)
のうち、ずっと一人か、
家族としか一緒にいない
スネップに話を戻したいと
思います。
スネップになりやすい人には
どのような特徴があるのでしょうか。
まず性別では、女性よりも男性の
無業者のほうが、孤立しやすいよう
です。
ひきこもりは、男性が多いということが
いわれてきましたが、スネップにも
あてはまるようです。そもそもの社交性
が性別で違いがあるのかもしれません。
さらには自立しなければならないという
プレッシャーは男性のほうが強く、それが
かえって社会に出にくくするということも
あるかもしれません。
教育も関係があるようです。高校卒の人
に比べると、高校中退者を含む中学卒
の無業者が孤立する割合は高くなっています。
高校を中退することで、仕事につきにくくなる
と同時に、友人関係も狭まってしまうことも
あるのかもしれません。
ニート状態の人のなかには、高校中退を
経験した人も多く、スネップはニートと共通
する特徴があります。
このようにスネップは、ひきこもりやニートと
相通じる部分が少なくありません。
ただ年齢については、少しスネップに固有の
面があるかもしれません。
ひきこもりやニートは、まず若者の問題として
注目されてきました。107万人のスネップのうち、
20歳代も38万人とけっして少なくありません。
ただし、無業者に占めるスネップの割合は
30歳代以上になって、グンと高まります。
スネップはどちらがというと、働き盛りのなかでも
年齢の高い人たちにとって深刻な問題です。
たとえばずっと一人でいる一人型のスネップは
50代後半の未婚男性無業者で割合が
特に高くなっています。
若いうちは、学校時代の友だちとも会う機会が
それなりにあるのですが、年齢を経るとつきあいも
限られてくることがあります。そのなかで仕事のない
ことが人間関係の乏しさに拍車をかけているのでしょう。
スネップは、もう若者問題の枠組みだけでは
とらえられない広がりを持っている無業問題です。
SNEP (5)
スネップは、20歳以上59歳以下の
働き盛りのうち、未婚の無業者に
注目しています。
未婚で仕事がないとなると、生活に
必要なおカネは、貯金を取り崩すか、
親やきょうだいから援助を受けると
いったことが必要になります。
一方で、20~59歳の既婚者でも
社会生活基本調査で調べられた
連続2日間に家族以外とまったく
一緒にいる人がいなかったという
人は少なくありません。2006年の
調査では、479万人の既婚者が
誰とも一緒にいませんでした。
ただし、そんな誰とも一緒に
いない既婚者ですが、過去一年に
スポーツ、旅行、ボランティアなどを
一切しなかった人というのは少数です。
スネップの場合、37%がそれらの行動
をまったくしていなかったのですが、
既婚の場合は、わずか12%です。
既婚者では、調査された2日間に
家族以外と一緒にいなくても一年
という期間でみれば、なんらかの
社交活動をしている人が多いように
思います。
それに対し、離婚もしくは死別した
20~59歳の無業者は、既婚者と
大きく状況が異なります。ずっと
一人だったか、家族と一緒だった
離死別経験者は25万人ですが、
その31%が過去一年にスポーツ、
旅行、ボランティアなどをまったく
していません。
イメージとしては、漫画の
「34歳無職さん」のような感じ
でしょうか。
http://members3.jcom.home.ne.jp/fzrdnzl/34.html
さらには、いわゆるシングルマザーや
シングルファザーも、孤立した状態に
なりやすいということかもしれません。
スネップや高齢者とならんで、いろいろな事情で
離別したり、不幸にも配偶者と死別された
方も、社会から孤立しやすいということも
今回の研究で、はじめて知りました。
それだけ離死別者ほど、仕事を通じて
社会とつながることが必要とされている
ということだと思います。
SNEP (4)
スネップでは、20歳以上59歳以下の
いわゆる働き盛りの年齢にあたる
無業者に注目しています。
最近発表された統計によると、
2010年10月に日本人口は一年で
25.9万人減と過去最大の減少幅に
なりました。いよいよ本格的な人口
減少社会への突入です。
人口減少のなかで重要なのは、
働き手、つまりは就業者数を一定
程度確保することです。高齢社会
を受けて、60歳以上の就業者は
着実に増加傾向にあります。
反対に20歳から59歳の働き盛りの
就業者は1997年をピークに減少の
一途を辿っています。高齢社会といっても
社会の主な担い手はやはり働き盛りの
人たちです。その就業者の減少を
食い止めるためにも、孤立無業の
実態をよく調べ、対策を考えないと
いけないと思います。
ただその一方で、60歳以上で
ずっと一人か、家族としか一緒に
いない無業者も、膨大な数にのぼります。
その数は、実に少なくとも1061万人と
働きざかりスネップの10倍にも達する
のです。そのうちやはり3人に1人は、
過去一年にスポーツ、旅行、ボランティア
などを一切していません。
働き盛りのスネップとならんで、
高齢者で社会から孤立した人たちの
置かれている状況にも
もっと目を向けていく必要がある
と思います。
SNEP (3)
『社会生活基本調査』は、指定された
連続2日間、つまりは全48時間に誰と
何をしたかを、15分単位ですべて記入
するものです。
調査票は
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2006/pdf/choa.pdf
にあります。
このような時間の日頃の時間の使い方
を調べる調査のことをタイムユースサーベイ
といいます。ヨーロッパなどでも同じような
調査がありますが、だいたい2日間が調べ
られています。
一緒にいた人は
「一人で」「家族」「学校・職場の人」「その他の人」
から選ぶことになっています。あるとき、この調査票
をみていて、指定された連続48時間に、ずっと
「一人で」または「家族」だけとか過ごさなかった人
は、どのような生活をしているのだろうか
と思いました。これがスネップを考えようとする
スタートになりました。
ただ、2日間を調べるだけで、孤立しているかどうかは
わかるの?という疑問もあると思います。しかし
調べてわかったのですが、むしろランダムに指定された
連続2日間にわたる無業者の対人行動をみるだけで、
その無業者が通常おかれている状況がはっきりと
特徴づけられることこそが、スネップという概念の
特徴なのだと確信するようになりました。
たとえば、こんなことがあります。
社会生活基本調査では、連続2日間とあわせて
過去一年間の行動もたずねられています。そこからは
過去一年にスポーツ、ボランティア、旅行を一切
しなかった人の割合がわかります。いずれも基本的
には家の外に出て行うものです。多かれ少なかれ、
人との出会いもあります。
20歳から59歳の未婚無業者のうち、これらの
活動が一切なかった人の割合は、2006年で
約30%です。それをスネップ以外に限ると、
19%まで減ります。8割は、スポーツや旅行
などの社交活動をしています。
それがスネップの場合には、37%が一切
していないのです。特に家族とも一緒にいない
一人型のスネップでは46%が
何もしていませんでした。
このように指定された連続2日間にずっと一人か、
家族としかいなかった人たちは、深い孤立状態に
あることが、他のいろいろな設問からも
見て取れます。