●SNEPと、引きこもり・ニートを
どのように区別して理解すれば
よろしいでしょうか。
質問がありましたので、
回答します。
ひきこもりは政府のガイドラインによれば
「様々な要因の結果として社会的参加
(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、
家庭外での交遊など)を回避し、原則的には
6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり
続けている状態(他者と交わらない形での外出を
していてもよい)」とされています。
私は、ひきこもりは、スネップの一部だと
考えています。たとえばスネップの約37%は、
一年間にスポーツ、旅行、ボランティアなどを
一切していません。なかでも、家族とも一緒に
いない一人型のスネップは、46%がまったく
それらの行動をしていません。
約19%だけがそれらの行動をしていない
非孤立無業とは大きな違いがあります。
これまでもひきこもりについての研究はありましたが
残念ながら対象を把握するのが難しく、実際には
非常に限られた回答者からの研究がほとんどでした。
それに対してスネップは、1000件を超える該当者の
回答が寄せられており、統計的に信頼性の高い結論が
得られます。
ちなみに一人型スネップは半分以上が、単身世帯ですが、
家族と暮らしながらも、家族との交流がない一人型の人々も
います。そこにも、ひきこもりは少なからず含まれると
考えられます。
ニートは、無業者のうち「仕事をしたいと思っているが
仕事を探していない」人(非求職型ニート)と
「仕事をしたいと思っていない」人(非希望型ニート)があります。
一方、「仕事をしたいと思っており仕事を探している」人
のことは完全失業者といいます。
テレビや新聞などで耳聞する完全失業率は、
就業者と完全失業者の和(労働力人口と言います)
に占める、完全失業者の割合で、ニートは含まれません。
スネップは、非孤立無業に比べて、より高い割合で
ニートが含まれています。その関係を表した図は、
今週月曜に発売の『週刊エコノミスト』80頁の図3に
示しました。ぜひそちらもご覧ください。
図からは、スネップのほうが、ニートがより高い割合で
含まれることがわかります。特に、家族と一緒にいる
家族型スネップで、非希望型ニートが多くなっていて、
4人に1人が働く希望を持っていない状態となっています。
また過去一年にスポーツ、旅行、ボランティアなどを
一切行っていないスネップも、働く希望を失いやすく
なっています。
スネップとニートは重なる部分が多いのですが、
図にもあるように、それでも非孤立無業にも
ニート状態の人も、スネップほどではないですが
含まれています。
またニートは、経済的に困窮した家庭から生まれる
傾向が強まっていますが、スネップと出身家庭の
経済力とは必ずしも関係がみられません。その意味で
スネップとニートには、一部違いもみられます。
詳細な統計分析にご関心の方は、
http://cis.ier.hit-u.ac.jp/Japanese/publication/cis/dp2012/dp555/text.pdf
に示した、東京大学大学院の高橋主光君と私の
共同研究をご覧ください。
就業、ニートとの関連などは、表11から表13、本文では17~20頁
あたりで、詳しく説明しています。