初球

江夏の21球を
ラジオで聴く。
https://www4.nhk.or.jp/radiyakyu/

日本シリーズ最終戦。
無死満塁。

テレビとは違う
独特の緊迫感。
あっさりとどっしりが
同居する浮遊感覚。
解説は当時おなじみの
川上哲治と加藤進。

問題となった三塁ブルペンの
動きをアナウンサーはしっかり
伝えている。一方、マウンドに
歩み寄る衣笠には触れていない。

19球目の石渡の初球の見逃し方が
勝負を分けたようにラジオでは
聴こえた。

近鉄の3塁コーチとして
すべてに関わっていたのは
仰木彬。後の名将であり、
17年後に監督として日本一を果たす。

ひさしぶりに
山際淳司の名作
『スローカーブをもう1球』
を探してみたくなった。

数字

以前に書いた
こともあるが
職場の近くの交差点に
交番がある。
そこには昨日の東京23区の
交通事故による
負傷者数と死亡者数が
毎日貼り出されていて
途中何気なく見ることも多い。

これまで負傷者数は平日だと
だいたい100人弱くらいの記憶があるが
4月以降、出勤の際に
たまに見かけると
そのおよそ半分程度か、
やや上回るくらいだった
ことが多かったように思う。
こと死亡者数にいたっては、
見た限りずっとゼロだった気がする。

平成の時代でよかったことの一つは
交通事故で亡くなる人が格段に
減ったことだ。私も
幼稚園の頃、
車にぶつかって吹っ飛んだことがあり、
しばらく家で寝ていた記憶がある。
事故に遭ってしばらくして意識が戻ったとき
アニメのタイガーマスクに出てくる
ライオンマンのカードをずっと握っていたのを
なんとなくおぼえている。
よほど大事だったのだろう。

考えてみれば
交通事故の状況は
ネットでもわかるかもと思い調べてみた。
警視庁管内で昨日6月4日では
67件の事故に対し、
負傷者70人、死亡者0人だった。
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/smph/jiken_jiko/hassei/jiko.html

経済活動が再開するにつれて
交通事故もふたたび増えていくのだろう。

今も信号機なしの横断歩道では
歩行者が立っていても、
残念ながら止まってくれない自動車も多い。
それでも緊急事態宣言の頃は
止まってくれる運転手さんが
いくぶん増えたように感じた。

緊急事態宣言の解除で
それも元に戻ってしまうとすれば
少しさびしい気がする。

4月から毎日見ているデータでは
感染症拡大で亡くなった方が
7日間連続で10人を下回っている。

10という数字自体に
特に意味があるわけではない。
それでもどんな数字の背後にも
数々の物語があるんだろうと思う。

 

出勤

いろいろと
事務的な仕事なども
溜まってきたので
今日は一週間ぶりに
出勤することにした。

窓を開けた電車の風が
気持ちいい。
梅雨や真夏に窓は
どうなるのだろうとも思う。

同時に前回よりも
確実に人の移動が
多くなっていることを感じる。

大学は今も原則は
在宅勤務で、
出勤する場合も時間の管理があり、
事前届出することになっている。

どうしても時間が限られるので
前もって何と何をやるべきか
メモをして臨む。

ただ実際には
予想外のことも多々あり、
あっという間に時間は過ぎていき、
もう少しというところで時間切れ。

それでも
できないものは仕方ないさ
また今度でもいいだろうし
と開き直ることも
これからますます大切なのだろう。

さあビール呑も。

産業

ゲンダラヂオを
お聴(?)きいただいた方の
何人から産業別の特徴や対策
などについてご質問をいただく。
そこで今考えているところを
少しお話ししてみる。

産業別の就業動向については既に
新聞など色々な媒体で報道されている通りである。
そこでは需要の落ち込みから
飲食サービス業、宿泊業などで
急速に就業が悪化している他、
生活関連サービス業、娯楽業などでも
厳しさを増しつつあることなどを中心に
指摘されることが多い。
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/covid-19/c01.html#c01-8
実際、現状はそのとおりだと思う。

雇用や就業の変動を
マクロ経済学的に考えるとき
変動の起因(ショック)は
「マクロ的ショック(aggregate shock)」
「部門別ショック(sectoral shock)」
「固有的ショック(idiosyncratic shock)」
に分類される。
マクロ的ショックは経済全体に波及するショック、
部門別ショックは、特定の産業、地域、規模などに
集中するショック、固有的ショックはより特定の企業や
事業所に限定的に集中するショックを意味している。

2004年に出した拙著『ジョブ・クリエイション』第2章では
1990年代を通じ、雇用創出・消失に対しては、固有的ショックの
影響が強まっているのを書いたことがある。

一方で、2009年を中心に猛威をふるったリーマンショックでは
雇用の激動は圧倒的にマクロ的ショックによってもたらされていた。
世界的金融不況という金融システムそのものの崩壊の
危険にさらされていた状況は、特定の産業などを超えて
影響を及ぼしていたのである。その分析については
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2010/05/pdf/004-017.pdf
に書いた。

分析はこれからではあるが、おそらく今後
コロナショックと呼ばれるであろう今回の激動についても、
マクロ的ショックの影響がきわめて大きかったという結論に
なるのではないかと予想している。

今の時点では、雇用の悪化は、真っ先にサービス関連の産業で顕著に
表れているが、これからは他の産業にも少なからず波及する。
春先まではあった国内外からの受注がその後ピタリと止まることで
休業などで凌いできた製造業や建設業などの雇用消失が
徐々に顕在化してくる可能性もある。

そうなると特定の産業だけを見込んだ対策だけでは
明らかに不十分ということになる。
実際、現在の雇調金の支給範囲などを見ても、対策は特定の産業
だけでなく、全方位を想定しており、的確だろうと思う。

ただ、これまで最優先で取り組んできた雇用維持の対策だけでは
限界があるのも、また事実だろう。
感染症の拡大がある程度抑えられたとしても
外国からの旅行客の回復には時間がかかるだろうし、
いわゆる3密の可能性が避けきれない業種などでは、
当面事業の再開が難しい場合も出てくる。

そのため、事業を閉じるのをやむなく決心した事業主やその従業者には、
新たな就業先を支援・あっせんする雇用のマッチング対策が出番となる。
リーマンショック時に比べると、潜在的な求人は少なからず存在
することを考えると、再就職を望む人がマッチングによって希望を
実現することは不可能ではない。

ただ事業を永続的に離れることを望んでおらず、
一定期間は休業した後には、また元の仕事に戻りたいと望む人々も
きっと多いだろう。
それらの人々にはマッチング対策は必ずしも有効ではなく、
1年(場合によっては1年更新可)といった一定期間に限って
臨時の「つなぎ雇用」の機会を創出し、急場を凌ぐことが求められる。
そこで登場するのは、緊急的な雇用創出事業である。

そんな雇用創出事業として、リーマンショックや東日本大震災の際にも
雇用の実績を挙げたのが、雇用創出基金事業だった。
基金事業では一定の基金を都道府県に積み、
そこから臨時採用や緊急訓練などの緊急事業に対して
柔軟的・機動的に事業を実施することが可能となり、
リーマンショック時には55万人の雇用を創出した。

もう一つ、雇用を創出する企業に対して、税制上の優遇措置を実施する
雇用促進税制もある。2010年代に実施され、44万人の雇用を生み出した。
ただ今回は一時的に赤字に転落する企業も多いことを考えると、
より緊急的には基金事業の方が当面は有効かもしれない。

雇用維持対策を大前提として緊急的に進めつつも、それが限界に達する前に
雇用創出対策に踏み込むべきというのは、3月27日の官邸ヒアリングで述べ、
提出資料にも記載している。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/keizaieikyou/07/shiryo_06.pdf
今も考えに基本的に変わりはない。

基金事業については、
一部の政党でも前向きといった
ことを風の噂では聞いたことがあるが、
財政規律を重視する当局の判断や
不正支給のおそれに対する世間の厳しい目
などを懸念し、必ずしも本格的な検討が進んでは
いないようにみえる。

結論的には、産業別の対策はどうか?というご質問には、
特定の産業に対する雇用維持対策では今後限界があり、
産業間の移動を希望する人々へのマッチング対策に加え、
基金事業などによる産業を超えた雇用創出対策の検討を
そろそろ本格的に始めるべきときに来ているのではないか
と思っている。

在学

3月来、
感染症拡大で
仕事に最も直接的な
打撃を受ける人々として、
学校に在学しながら
アルバイト・パートなどで
働く学生・生徒の存在を
述べてきた。

労働力調査(基本集計)では
教育に関する項目別の統計がないため、
在学アルバイトなどへの影響について
追加の情報は残念ながらない。

最新の結果は5月中旬の詳細集計のまま。
https://genda-radio.com/archives/date/2020/05/15

5月15日に書いた主な内容を整理すると、

1)過去最多の200万人を超えていた在学中の
15~24歳のパート・アルバイトは、
2020年1-3月期には12万人減少し、
パート・アルバイト全体減少の半分以上を占めた。

2)仕事を失った大部分は大学生もしくは大学院生で、
その数は10万人に達していた。

3)大学卒の非正規(フリーター)よりもアルバイト
大学生のほうがさらに雇用は不安定な可能性が大きい。

など
(次の最新情報である4-6月期の詳細集計の公表は
8月11日と先になる)。

政府や学校などでの対策として、学生・生徒アルバイトの
厳しい状況に対して、生活費の補填や教育費の免除などの
動きは見られつつある。
一方で、学生や生徒を、一人の労働者として
労働の行政や制度によって保護するといった動きは、
遅々として進んでいないようにみえる。

背景には、学校に通っている
児童、生徒、学生は、
すべて教育行政の管轄という原則があるのだろう。
在学生は、労働行政の対象ではないため、
雇用政策としては、迂闊に手が出せないといった、
杓子定規の行政区分の明確化による弊害が
如実に表れているようにみえる。
学校の内部に教育以外の行政が
入っていくことの障壁は、今もなお高い。

中学での職場を主とする地域での体験学習や
高校や大学に在学中のインターンシップ、
卒業後の新規採用に向けた就職ガイダンスなど
在学生の働くことについて
学校が積極的に関与すべき点は多い。

ただ表向きは禁止されているが
実態は見てみぬふりをしているだけの高校生アルバイトや、
正式な雇用契約もなく、いわば雇い手の言いなりで
働き、結果的に深く傷ついている大学生アルバイトは
後を絶たない。学校や教員だけによる対応には、
どうしたって限界がある。

2001年に『仕事のなかの曖昧な不安』を書いたときに
比べれば、若者への雇用対策は拡大に進んだが、
在学生の就業者に関しては、これだけ増えたにも
かかわらず、特段の整備も進んでいない。

学生・生徒のアルバイトにも雇用契約を徹底し、
労働者としての権利を守ることや必要な保護を
行う必要性を2019年に拙著『雇用は契約』などで
述べてきたが、まったく無力だった。
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480016652/

今回、日々の生活にままならない大学生などを
生活面で緊急支援すると同時に、今や多くの職場で
欠かせないれっきとした働き手としてその権利を
守る気運につながることを祈るばかりである。