震災と雇用(1)

昨日書いた
総務省統計局「就業構造基本調査」
の速報結果を見ている。
そのなかでまず印象的だったことが
いくつかある。
その一つが、
被災地の無業者が、
特にニート化しているわけでは「ない」
ということだ。
高齢者や学生、生徒の多くを除く
25歳から59歳の働きざかりの年齢に
ありながら仕事をふだんしていない
無業者に注目する
(調査された2012年10月時点)。
無業者は、
仕事につきたいと思い求職活動
をしている「求職型」、
仕事につきたいと思っているが
求職活動はしていない「非求職型」、
仕事につきたいと思っていない
「非希望型」に分類される。
このうち「非求職型」と「非希望型」
を加えたものが、いわゆる「ニート」
になる。
度重なる失業給付の延長などや、
さまざまな支援があるために、
被災者が仕事をしようとしていない
のではないか、という声もあるようだ。
はたして、それは事実なのか。
統計をみるかぎり、それは
事実ではない。
被災3県の25~59歳無業者のうち
非求職型は30.4%、非希望型は42.1%
合計のニート割合は72.5%と高くみえる。
しかし、前回調査の2007年の就業構造基本
調査から、全国の20~59歳無業者で同じ
計算をすると、
非求職型は27.6%、非希望型は48.0%
合計のニート割合は75.6%と
あまり変わらないか、むしろ被災3県のほうが
低いのだ。
そこでは、家事を切り盛りしていることの多い
女性割合の地域差の影響が出ているのでは
ないかという疑いを持つ人もいるだろう。
しかし男性に限ってみても、
被災3県のニート割合は54.9%であり。
全国(2007年)の55.7%よりも
低いくらいなのだ。
被災3県で働きたいという意欲が萎えている
わけでは、けっしてない。多くが働きたいと
いう思いを持っている。

東日本大震災の仕事への影響に関する結果(速報)

 昨日
 東日本大震災の仕事への影響に関する結果(速報)
 が総務省統計局から公表された。
 http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
 昨年10月に実施された「就業構造基本調査」(5年に1度)
 のなかでは、震災が仕事に与えた影響の他、避難や移動の
 状況などが調査された。全国で約100万人が回答する大規模
 調査で、ここからは県別の他、市町レベルでの震災が仕事や
 働く人たちに与えた影響を知ることができる。
 毎度毎度いうことだが
 重要なのは発見だ。
 声にならない声に耳を澄ますこと。
 発見のないところに解決の一歩はない。

労働政策フォーラム「震災から2年、復興を支える被災者の雇用を考える」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
労働政策フォーラム
「震災から2年、復興を支える被災者の雇用を考える」のご案内
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
独立行政法人労働政策研究・研修機構では、3月13日(水)に労働政策フォー
ラム「震災から2年、復興を支える被災者の雇用を考える」を浜離宮朝日ホール
小ホールで開催します。
■開催概要
東日本大震災から2年が経とうとしています。被災地は落ち着きを取り
戻しつつありますが、未だ本格的な復興には至っていません。被災地では
被災者自らが復興を支え、未来に希望をつなぐべく奔走しています。産業・
雇用政策は被災地で働く人をどのようにバックアップしたらよいのでしょうか。
  本フォーラムでは、労働行政、研究者、現場で復興に携わる団体が、
それぞれの取り組み等について報告した上で、被災者の雇用をいかに創り、
地域の復興、コミュニティの再生につなげて行くのかについて議論します。
 ・日 時:3月13日(水) 13時30分~17時00分
 ・場 所:浜離宮朝日ホール 小ホール(東京・築地)
 ・参加費:無料(要予約、定員300名)
 ・内 容:厚生労働省政策担当者による基調報告、研究者による研究報告、
被災地で復興に携わる団体による事例報告、パネルディスカッション
■プログラム
13時30分~
◆基調報告:
「被災地の雇用対策について」
 本多則惠 厚生労働省職業安定局雇用政策課長
◆研究報告:
「被災者雇用が復興と自立に果たす役割~被災地調査からの示唆~」
 小野晶子 労働政策研究・研修機構副主任研究員
「キャッシュ・フォー・ワーク:東日本大震災での成果と課題」
 永松伸吾 関西大学社会安全学部・大学院社会安全研究科准教授
◆事例報告:
「かーちゃんの力・プロジェクト協議会の取り組み」
 渡邊とみ子 かーちゃんの力・プロジェクト協議会会長
       イータテベイクじゃがいも研究会会長
「NPO法人@リアスNPOサポートセンターの取り組み」
 鹿野順一 NPO法人@リアスNPOサポートセンター代表理事
15時30分~
◆パネルディスカッション:
(パネリスト)
 本多則惠  厚生労働省職業安定局雇用政策課長
 永松伸吾  関西大学社会安全学部・大学院社会安全研究科准教授
 渡邊とみ子 かーちゃんの力・プロジェクト協議会会長
       イータテベイクじゃがいも研究会会長
 鹿野順一  NPO法人@リアスNPOサポートセンター代表理事
 小野晶子  労働政策研究・研修機構副主任研究員
(コーディネーター)
 玄田有史  東京大学社会科学研究所教授
【お申込みはこちら】
http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20130313/info/

デフレと国際競争

デフレ傾向の原因は
いろいろあるげれど
少なくとも支払われる
賃金に上昇傾向が
生まれない限り、
デフレは解消に向かわない
ことはまちがいないだろう。
ところがデフレ解消と
そのための政策を強く
主張する人たちさえ
賃金の引き上げに対しては
きまって慎重な口ぶりになる。
理由は、国際競争力を
失いつつある日本企業にとって
賃金引上げによる人件費高騰は
さらに競争力を弱めることになる
というのが、常套句になっている
からだ。
デフレは解決しないといけない。
けれど賃金は上げられない。
どこか矛盾していないか。
ただ経済学的に一つだけいえるのは、
重要なのは、賃金そのものの
水準の高低ではないということである。
大事なのは、働く人たちに支払われる
賃金が、その「働きに見合っているか」
ということである。
働き、もしくは働きぶりのことを
経済学では、(労働)生産性という。
生産性に比べて賃金が高すぎるならば、
人を雇うことは損、反対に人を減らすことによる
費用の節約効果が収入減少分を上回るため
得になる。
反対に生産性に比べて賃金が低ければ、
人を雇うことによる収入の増加が人件費の
増加を上回るため、さらに利益を生む。
いわゆる非正規で働く人たちが、絶対数でも
雇用者に占める割合でも、依然として増え続けて
いることは、非正規に支払われる賃金が、その
仕事ぶりに見合っておらず、低すぎる水準に
あることを意味するのではないか。
非正規というと、つねに能力開発もなく
単純労働であるという決まり文句にいつも
違和感をおぼえる。正社員でなくても、
いい仕事をしている人たちはたくさんいる。
むしろ非正規であっても、一所懸命の
仕事ぶりに見合った収入が得られないために
働くこと自体に絶望し、若者などに働くことを
断念する傾向が強まっているとしたら、
それはとりかえしのつかない事態になる。
目先の賃金よりも、有為な人々が働くことから
離れていくことのほうが、長期的な国際競争に
とってみれば、より深刻な事態だと思う。
働くことを断念しているニートやスネップが
訴えているのは、そんなことではないだろうか。