人手不足

人手不足が深刻だと
いわれる。経営や人事を
あずかる方々にとっては
悩みが尽きないところだろう。

ここ最近、人手不足にまつわる
全体データなどをいくつか見る
機会があったが、人手不足は
働く人がいないという量的な
問題もあるが、実像は質的にも
モザイク模様でかなり多様だという
印象だ。

それを失業とのアナロジー(類推)で
マクロ経済学的に考えてみると
多様な人手不足も大きくは3種類に
分類されるように思う。

(1)需要拡的的人手不足
(2)摩擦的人手不足
(3)構造的人手不足

(1)は景気の回復などもあり、
求人が大きく増えたことに起因する。
(2)は求人と求職がそれぞれ多様に
なったこともあって、なかなか適材適職
に出会えないことによるものだ。
(3)は人手不足というよりはどちらかというと
人材不足の問題に近く、そもそも求人にかなう
スキルや選好の人がいないことから来るものだ。

重要なのは、それぞれで必要となる人手不足への
政策的な対応が異なってくる点だろう。

(1)の場合には、需給の不均衡が一義的に
問題であるので、賃金(価格)調整機能、つまりは
賃上げのすみやかな実現が大切になる。賃金に
あわせて労働条件や職場環境の整備も、対応策に
含まれるかもしれない。

労働需要を抑制するための引き締め政策は、
まだ時期尚早だろう。まずは労働需要の増加に
応える労働供給の喚起を、個々の労働時間の増加
ではないかたちでの実現の目指すのが第一になる。
現在も、非労働力人口はおよそ4000万人にのぼり、
25歳から64歳に限っても約800万人と、
潜在的労働参画可能者は、少なくない。

(2)の場合は、情報面での偏在が重要なので
いわゆるマッチング対策が求められることになる。
求人・求職情報の活用のほか、情報を適切に判断する
ためのコンサルティングやカウンセリングの充実も
対策には含まれる。

地域間移動や産業間移動で対応できる人手不足は
この摩擦的人手不足対策といえるかもしれない。

(3)の場合には、どちらかというと能力開発を
促進する政策の出番ということになる。必要な
スキルを獲得することができるよう、教育訓練など
が求められる。むずかしいのは、(1)(2)に比べて
対策の成果に、ある程度時間を要することだろう。

さらに介護や育児などが制約となって労働参加が難しい人々
について、関連する制度上の制約を緩和するよう環境整備を
することは、構造的人手不足対策といえるかもしれない。

それぞれの種類の人手不足がどの程度であるかを把握
するのは、労働経済学の良い研究テーマになるだろう。
案外(3)が大きいのではないか。いずれにせよ、
研究成果を楽しみにしている。