一号店の夜

島根県の松江市の松江駅に
スターバックス一号店ができたのは
去年の4月。初日の売り上げが
全国で最高になったことなどが
話題になった。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130403/trd13040319090005-n1.htm
先日、松江駅を通りかかったときに
チラリとはじめてみたが、今でも
人気のようだ。
当初、あまりの行列の長さに松江の
ばあちゃんたちは、行ってみたくても
行けず、ずっと遠くで見守っていたらしい。
そんなある日、お寺の行事を終えて
松江駅から家路に帰ろうとする
ばあちゃんの集団がいた(8人くらいいた
と思われる)。
もう閉店間際の時間で、そのときは
さすがに人気のスターバックスも
空き始めていた。
今だっ(チャンス!)
ばあちゃんたちは決意し、
スターバックスの注文口に
初めて並んでみた。
そのなかの一人のばあちゃんは
緊張のあまり、トイレに行くという。
「アタシも同じのを頼んじょいて」。
駅のトイレを終え、
お店に戻ってみると、ばあちゃんたちは
大きいテーブルをみんなで囲みながら
注文が届くのをドキドキしながら待っていた。
なんだか楽しそう。
期待は広がるばかりだ。
数分後、出てきたのは
ほうじ茶だった。
それも丸い茶缶から茶葉を取り出し
淹れられた本格的なスターバックスの
ほうじ茶だったという。
多分、種類やら、大きさやら、
いろいろやさしくたずねられたのだろう。
自身、はじめてサブウェイのサンドイッチを
注文したときを思い出す。
緊張のあまり、きっと誰かが、
トールサイズのカフェラテなどではなく、
「アタシは、ほうじ茶があれば、そっちがええわ」
とつぶやいだのだろう。それに同調者が
もれなく続き、全員、ほうじ茶のオーダーに
無事たどり着いたのだ。
全員で閉店間際の初スターバックスで
大笑いしながら、ほうじ茶を飲んで
帰ったのだそうだ。
ところで、スターバックスにほうじ茶は
そもそもメニューにあったのだろうか。
なかったとすれば、金額はいくら
だったのだろう。
一号店の夜。
こっぽし。

大瀧栄一氏のこと

1月以降、大滝詠一さんを偲ぶ文章や
企画がたくさん出されていますが、
『月刊三陸かもめ』2014年2月号に
掲載されている
私の知っている
大瀧栄一氏のこと
というエッセイは、出色の内容です。
お書きになっているのは、
釜石市立鉄の歴史館館長の
佐々木諭(サトス)さんで、
大瀧さんご本人が滅多に語って
こられなかったご自身での
釜石での青春時代のお話が
豊富に語られています。
震災後に、旧制菊池栄一さんは
「サトス、生きてたか」と通信回線で
連絡されたとのこと。
高校時代に青森の三沢基地の
短波放送をどのようにしてキャッチ
していたかも、私ははじめて知りました。
「これまで作った音は、清算して、また新しい音楽に挑戦したいと、
思っているよ」
『月刊三陸かもめ』はhttp://sanrikukamome.net/
からも購入できるようです。
大瀧ファンならずとも、オリジナルとは
何かを考えさせられる、すばらしい内容です。す。

賃上げを可能にするもの

たまたま
昔受けたインタビューを
目にする。
https://jinjibu.jp/article/detl/keyperson/5/
内容からすると、10年近く前に
受けたもののようだ。
髪型など
今とずいぶん違うけれど
言っていること
思っていることが
今とまったく変わらない
ことに、ちょっと自分でも驚く。
今、正社員以外を含めて
賃上げをどう実現するかに
注目が集まっている。
私には、結局のところ
賃上げを可能にするのは
会社の人事部もしくは人事担当者の
器量と度量にかかっていると
思える。
業績の先がみえない、
グローバル化で人件費は
上げられない、
などと、理由を挙げて
賃上げに消極的になるのは
簡単だ。
けれども、賃上げを社員の
やる気と、それに伴う
職場の雰囲気改善、その結果
としての生産性の向上に
つなげることこそが、
人事の知恵だろう。
できるだけ安い人件費を求める
会社の財務担当や取引先は
当然賃上げを渋るだろうが、
それを見事に説得して
賃上げを勝ち取るのは
多くの会社では、今や
人事部や人事担当者しか
いない。
労働組合は何をしているのか
という人もいるだろうが、
労働組合に期待せず、
加入をしようとしない人たちに
労働組合を責める資格はない。
ひいては人事に期待する
しかないのだが、若い人事担当者は
入社以来、賃上げをしたことがなく
賃上げをするための根回しや土台作り
を経験したことがない。賃上げの技術
がない。
だとすれば、かつて様々な
切った貼ったに奮闘した人事労務の
ベテランが、知恵を授けて若い人事マンを
応援してほしいと願っている。

労働者派遣制度見直し

今朝の日本経済新聞朝刊一面に
掲載されたように、厚生労働省に
設置された部会から、労働者派遣
制度の見直し案が報告され、
厚生労働大臣に建議されることに
なった。
その提案を諮る労働政策審議会
職業安定分科会が、本日午後に
開催された。そこで先ほど、発言
した内容を、以下に記しておく。

 今回の労働者派遣制度の見直し提案を含む部会報告につきまして、分科会公益委員ならびに経済学研究者の立場から、ひとことだけ申し上げます。結論から申しますと、広く雇用契約期間の長期化につながる可能性を有する今回の見直しを、私自身、高く評価いたします。
 
 雇用形態にかかわらず、あらゆる労働者が豊かで安定した勤労生活を送ることは、立場を超えて、すべての国民の合意する目標といえます。その際、克服すべき喫緊の課題とは、およそ100万人にのぼる派遣労働者を含む、いわゆる正社員以外の処遇改善にあることも、多くの認めるところです。
 正社員以外の処遇改善には、技能形成の機会の見直しが不可欠です。ひるがえって正社員以外の労働者にとって、技能形成の機会が損なわれている背景には、業務内容の問題もさることながら、一つの職場で働き続けることのできる期間の短さがあります。
 どのような業務でも、短期間での習得は困難であり、一定期間継続して働いてこそ、その仕事を理解し、より深く掘り下げていくことを可能とする技能は形成されます。それは正社員、パート、アルバイト、派遣、契約、嘱託を超えて、すべてに共通する事実と思われます。
 その事実は、正社員以外から正社員への転職を実現した労働者について詳細に観察することからも証明できます。一般に非正社員の正社員への転職は困難といわれますが、総務省統計局「労働力調査」によると、離職した非正社員のうち、一年以内に正社員へと転職した人々が年間30万人程度存在します。
 そして、正社員への転職に成功した非正社員の人々の特徴として、多くが2年から5年程度、同一の職場で続けて働いた経験を持つという事実が、統計分析からは発見されます(注)。「石の上にも3年」という言葉があります。正社員でなくても、粘り強く一つの職場で3年程度地道に努力して働くことで、技能も形成され、より安定した仕事に移行可能となることを、その事実は示しています。
 一方、2012年に実施された総務省統計局「就業構造基本調査」をみますと、雇用契約期間が1年以下の非正社員の人々は774万人と、非正社員全体の38%を占める現実があります。派遣労働者に限っても、契約期間が1年以下は66.9万人と、派遣労働者全体の56%を占めているのが現状です。
 今回の制度見直しにより、派遣労働者に、まず3年及び期間の定めなく働く機会が拡充していくことは、正社員以外の人々全般に、技能形成の機会を普及していく重要な第一歩となると予想されます。
 その意味で、今回の労働者派遣制度の見直しの提案に至るまでの公労使の関係者皆様のご尽力に敬意を表すると同時に、制度の見直しが着実に実現・実行されることを希望いたします。
(注)玄田有史「前職が非正社員だった離職者の正社員への移行について」
『日本労働研究雑誌』580号、2008年11月号、61-77頁
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/11/pdf/061-077.pdf