さまざまな新しく独創的な若者自立・就労支援の
活動を続けているNPO法人に
「育て上げネット」があります。
http://www.sodateage.net/
育て上げネットは、定期的に
メールマガジンを発行しています。
メールマガジンをご覧になりたい方は
melmaga@sodateage.net
までご相談ください。
その最新号で、理事長の工藤啓さんが
スネップについてのご意見を記されています。
工藤さんの許可を得て、ここに引用します。
○
今週の「週刊エコノミスト」(毎日新聞社)エコノミストレポートで
東京大学の玄田有史先生が寄稿されています。
「ニート予備軍 孤立無業者「スネップ」が急増している」
紙面によると
「スネップとは、他者と接触のない無業者
の増大に直結する。自立支援の手を差し伸べる対策が急務だ。
で説明されている。総務省「社会生活基本調査」を元に20歳以上59歳以下の
在学中でない未婚者で、ふだんの就業状態が無業のうち、一緒にいた人が
家族以外に一切いなかった人々(調査された連続二日間)を調べたところ
1996年には無業者の30%に届かなかった「スネップ」が、2006年には
60%近くに上昇していることがわかったそうです。
つまり、現在の日本社会は「無業者」であることと「孤独」状況に密接な
関係性が見て取れるということです。詳細は紙面に譲りますが、
これまで実際の支援現場に来られる若者も”感覚値”では、比較的家族
以外の他者とコミュニケーションを取っていないタイプが多かったわけですが
それを論拠を持って証明することはできませんでした。ひとつには
相談を受けるにあたってわざわざ「友達いますか?」「孤独でないですか?」
という項目を立てて、すべての方にヒアリングするわけではないからです。
もうひとつは、相談をしたり、オープンなコミュニケーションの場で観察
すると「人慣れ」「話慣れ」していないことを把握することができたからです。
ちなみに、この紙面では、スネップの方のうち、電子メールの送受信を
しているひとは40%程度だそうです。つまり、60%はメールも使っていない。
「自宅でずっとネットやっているのでは?」という話はよくでますが
感覚値でも、ネット依存型の若者はほとんどおらず、むしろ予想以上に
使っていない感じがしています。
そうなると、とにかく難しいのは「出会う」ことであり、重要なのは
アウトリーチ/(家庭)訪問支援などに頼らざるを得なくなるのではないかと
思います。
NEETという言葉が日本に広まりかけた時、英国に調査に行きました。
そのときにご担当者が話をしていたのは、
「NEET状態の若者をどうするかも重要だが、何よりも重要なことは
UnknownをKnownにすることなんだ」
と言われました。何をしているのかまったく把握されない状況にある方と
とにかく接触できるよう努力をして、「何もしていないこと」「何かを
していること」がわかることに全力をそそぐことが重要であると。
「何をしているかわからない」を、「何もしていない(できていない)」こと
がわかるようになること。
もしスネップという言葉が広がるとしたら、この部分にしっかり取り組む
こと。そして、「来る(来られる)を前提としたサポートにしない」ことを
強く意識していくべきだと考えています。
このメルマガを読んでくださっておられる方は、若者への目線がやさしく
社会課題としての若者支援に理解がある方ばかりなのですが、
定義がある状態を示す言葉が、「やる気」とか「怠け」といった定義を
無視したイメージや、「自己責任論」で語られたりしないことを
願います。
理事長/工藤 啓
○
unknownをknownに
ということに、私もとても
共感します。
よく問題解決が必要といわれますが、
本当に深刻な問題はそんなに簡単に
解決しません。
むしろ大事なのは、問題発見です。
本当に大事な課題は発見すらされず、
当然、解決もしません。
一方で問題が発見され、共有と共感が
広がれば、解決に向けて大きく前進する
という実感があります。
スネップもそうなってほしいものです。