真の博識

 尊敬する労働問題研究の先輩・後輩が何人かいる。
 ごく素朴な内容も含め、どんな質問でも懇切丁寧に
 おしえてくれる。
 ただ、そういう実際の博識の方のなかには、
 表立った発言などを極力控えているように見受けられる
 場合も案外多い。まるで、知れば知るほど、単純な
 決め付けはしてはならないのだと、自ら戒めて
 いらっしゃるかのようである。
 知るということは、ときにおそろしいことでもある。

3月4日・希望学成果報告会

 『希望は終わらない』
 希望学成果報告会2005-2008
 主催:東京大学社会科学研究所
http://project.iss.u-tokyo.ac.jp/hope/symposium/090304_symposium.html
日頃からよく口にする言葉では必ずしもない。
けれども、しばしば耳にしたり目にしたりする言葉。
それが「希望」だ。
希望って何だろう。
なぜ人は、希望をときに失いながら、
それでも希望を求め続けるのだろうか。
 ○
 
東京大学社会科学研究所では希望を社会科学する
「希望学」を進めてきました。たくさんのご支援・ご協力を得、
希望学は多くの成果をあげることができました。
プロジェクトが一つの区切りを迎え、希望学に期待や関心を
お寄せいただいた方々に、4年間にわたる成果を、
感謝の気持ちとともに、ご披露いたします。
* 日時:
 2009年3月4日(水曜) 午後2時30分-午後6時30分
* 会場:
 東京ウィメンズプラザ・ホール (東京都渋谷区神宮前5-53-67)
    http://www.tokyo-womens-plaza.metro.tokyo.jp/contents/map.html
* 参加:
 参加無料 → 事前に下記までご登録ください(先着250名)
    http://project.iss.u-tokyo.ac.jp/hope/sympo_form/postmail.html
* プログラム:
開場 14:00
【講演】 「希望学-4年間の軌跡」
 玄田有史
【映像】 「映像のなかの希望学」
【鼎談】 「希望学をふりかえって今思うこと」
 宇野重規・玄田有史・中村尚史
【リレートーク】 「希望学とは何だったのか」
   出演者(アイウエオ順):
    アナリース・ライルズ、岡野八代、春日直樹、草郷孝好、
    仲正昌樹、中村圭介、仁田道夫、広渡清吾、宮崎広和 (他予定)
     【挨拶】
 小森田秋夫
* 懇親会:
時間: 19:00-21:00(予定)
場所: 青学会館アイビーホール・「ナルド」
          http://www.aogaku-kaikan.co.jp/access.html   
事前登録制: こちらから事前登録して下さい
  問い合わせ先: 希望学事務局
   e-mail:hope@iss.u-tokyo.ac.jp
* お知らせ:
 2009年4月より、東京大学出版会より『シリーズ希望学』(全4巻)が刊行されます。
第1巻『希望を語る-社会科学の新たな地平へ』
第2巻『希望の再生-釜石の歴史と産業が語るもの』
第3巻『希望をつなぐ-釜石からみる地域社会の未来』
第4巻『希望のはじまり-流動化する世界で』

1,2,

 自分が厄年のとき、
 厄明けというのは、節分を
 過ぎた立春から、ということを
 はじめて知った。
 厄明けのみなさん、おめでと3。

終電に乗って

 
 最近は終電の電車に乗ることが
 滅多にない。つい数年前までは
 ほとんど毎晩のように、という感じも
 あったのだけれど。理由はいろいろ
 あるのだけれど、飲み続ける体力が
 なくて「しんどい」というのが一番かも
 しれない。
 それでもたまには乗ることがある。
 それでちょっと前から感じていたことだけれど
 なんか、むかしに比べて終電が空いている
 ような気がしていた。
 ただ、自分の感覚が常識にあっているとは
 まったく思っていないので、終電マニア(?)
 の友人Wに聞いてみる。Wは、平日ほぼ毎日
 終電もしくはそれを過ぎてタクシー(もちろん自腹)
 という生活をここ数年続けている。その日も
 朝4時半にメール、これから新宿から江東区(大島)まで
 帰って、また午前中に出てくるという。
 そんなWも、いわれてみると、たしかに空いてきた
 気がすると、いう。不況のせいかな、と思ってた、と。
 Wの感覚を裏付けるのが、昨日発表された、厚生
 労働省毎月勤労統計(平成20年)速報だ。総実労働
 時間が2年連続減少、所定外労働時間は7年ぶりに
 減少という。
 http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/20/20fr/mk20p.html
 報道によれば、年間労働時間は90年に調査開始以来
 初の1800時間割という。経済状況の悪化による残業削減や
 一時帰休がその原因といわれている。
 不況の影響による労働時間の短縮はそのとおりだろう。 
 ただ、一方で、いわゆるサービス残業や過労死などの頻発が
 懸念されてきた20代から40代を中心とする男性の週間労働時間は、
 2004年頃を境に、長時間労働の傾向がゆっくりと減少しつつある。
 労働力調査によると、週60時間以上の就業割合は、20代から
 40代の、いずれの男性従業者についても、ここ2007年までの
 3、4年おしなべて低下している。無論、割合だから、年長フリーター
 などの短時間就業者の増加を反映したにすぎないかもしれない。
 だが、60時間以上就業者「数」という絶対数でみても、ほぼ減少
 しているのだ。
 07年までの数年ということであれば、それは不況というよりは
 むしろ景気は一時的にせよ、回復していた時期である。不況の
 影響とは考えにくい。だとすれば、新規採用や非正規増加により
 正社員の業務負担の減少などもあったのかもしれない。その原因
 は、私の知るかぎり、労働経済学の実証研究でもまだ明らかにされて
 いない。第一に、どうして2000年代にあれほど、不況にもかかわらず
 長時間労働が跋扈したのかは、残された大きな研究課題だ。
 一つ気になるのは、経済的要因に加えて、たしか2004年頃、会社の
 人事労務関係と呑んでいると、「おタクは、カントクショ、大丈夫?」
 といった話題が、まことしやかに言われていたことを思い出す。監督署
 とはもちろん労働基準監督署のことで、監督権さらには、逮捕権もある
 労働行政のいわば番人である。その頃は、サービス残業の摘発などに 
 監督署が本腰を入れ始めた、という意識が会社に強まっていた。
 そのような不正な就業は認められない、そのための公的な監督強化という
 行政の姿勢は、実際に監督に入らなかったとしても、重要なアナウンスメント
 効果があったのかもしれない。
 無論、自分の常識を常識と思わないことを考えれば、それはあくまで推論に
 すぎない。だが、雇用危機は、労働時間にも今後影響を及ぼすかもしれず、
 2000年頃のことを考えると、一部の労働者に業務量が偏り、全体で減っても
 労働時間が孤独に集中するWのような人たちも、これから増える可能性は
 少なくない。
 今こそ、最近までの長時間労働とはなんだったのか、あらためて 
 考えてみる必要があると思う。

本当のミスマッチ

 非正規雇用からの失業者に対する
 ミスマッチ対策について、昨日の答えに
 違和感をおぼえる人もいるかもしれない。
 おそらく通常のコメントは次のような
 感じではないか。
 
 「これからは介護などの人手不足分野
 への移動を促進することが必要です。
 そのためスキルのミスマッチの解消が
 重要であり、能力開発に、政府も積極的に
 取り組むべきです。」
 概ねそのようなコメントに反対はない。
 政府も実際には緊急の能力開発に向けた
 助成措置の拡充に走り始めているようだ。
 介護や医療など人手不足の生活密着分野
 への移動が、今回を契機に促進されれば
 それに越したことはないと思う。
 今朝のヤフーニュースにあった、雇用対策として
 振り込め詐欺の注意をする超えかけ人員確保
 というのは、ちょっとびっくりしたが。
 ただスキルのミスマッチが深刻であることは
 いうまでもないが、統計からはスキルのミスマッチや
 年齢によるミスマッチ以上に深刻なものがある。
 これも以前『ジョブ・クリエイション』で指摘したことでも 
 あるのだけれど、それは「希望のミスマッチ」である。
 『労働力調査詳細結果』をみても、数こそピークより減少
 傾向にあるものの、以前として仕事につけない理由として
 最大は「希望する仕事の種類・内容がない」である。http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/zuhyou/901700.xls
 やや手前味噌に聞こえるかもしれず恐縮なのだが、
 希望の問題と雇用問題は、密接に結びついている。
 希望する仕事がないとはどういうことなのか、
 どうすれば希望がみつかるのか、すぐにみつからないとき
 どうすればよいのかなどが、わからなければ、
 本当のミスマッチは、解消されない。私はそう思う。
 介護分野への移動促進についても、ただ就けばよいという
 わけでは無論ない。本当の意味で、納得し、そこに希望を
 もてるようなならなければ、いったん就業しても定着は困難
 だろうし、第一、仕事に誇りも感じられないのではないか。
 希望は、支えとなる人間があって育まれることも多い。
 それが希望学の一つのメッセージでもある。
 そう考えて、昨日のような、とにかく孤独にしない個別支援 
 という、ミスマッチ対策を思いついた次第である。