デフレ傾向の原因は
いろいろあるげれど
少なくとも支払われる
賃金に上昇傾向が
生まれない限り、
デフレは解消に向かわない
ことはまちがいないだろう。
ところがデフレ解消と
そのための政策を強く
主張する人たちさえ
賃金の引き上げに対しては
きまって慎重な口ぶりになる。
理由は、国際競争力を
失いつつある日本企業にとって
賃金引上げによる人件費高騰は
さらに競争力を弱めることになる
というのが、常套句になっている
からだ。
デフレは解決しないといけない。
けれど賃金は上げられない。
どこか矛盾していないか。
ただ経済学的に一つだけいえるのは、
重要なのは、賃金そのものの
水準の高低ではないということである。
大事なのは、働く人たちに支払われる
賃金が、その「働きに見合っているか」
ということである。
働き、もしくは働きぶりのことを
経済学では、(労働)生産性という。
生産性に比べて賃金が高すぎるならば、
人を雇うことは損、反対に人を減らすことによる
費用の節約効果が収入減少分を上回るため
得になる。
反対に生産性に比べて賃金が低ければ、
人を雇うことによる収入の増加が人件費の
増加を上回るため、さらに利益を生む。
いわゆる非正規で働く人たちが、絶対数でも
雇用者に占める割合でも、依然として増え続けて
いることは、非正規に支払われる賃金が、その
仕事ぶりに見合っておらず、低すぎる水準に
あることを意味するのではないか。
非正規というと、つねに能力開発もなく
単純労働であるという決まり文句にいつも
違和感をおぼえる。正社員でなくても、
いい仕事をしている人たちはたくさんいる。
むしろ非正規であっても、一所懸命の
仕事ぶりに見合った収入が得られないために
働くこと自体に絶望し、若者などに働くことを
断念する傾向が強まっているとしたら、
それはとりかえしのつかない事態になる。
目先の賃金よりも、有為な人々が働くことから
離れていくことのほうが、長期的な国際競争に
とってみれば、より深刻な事態だと思う。
働くことを断念しているニートやスネップが
訴えているのは、そんなことではないだろうか。