2020年9月の労働市場(2)

今月も
先月4日と同様、
過去7年の平均と比べた
産業別の就業者数増減を計算してみた。

すると
減少幅が特に大きかったのは
次のようになった。

農業、林業 31万人減
卸売業、小売業 21万人減
製造業 15万人減

今回は農林業の減少が
これまでと比較して突出して
多くなっている。
卸売小売業の減少は先月に
続いて多く、
製造業も大幅な減少となっている。

宿泊業、飲食サービス業は
過去7年に比べると2万人減少と
6月の26万人減と比べれば
かなり落ち着きを見せ始めている。

対照的に、就業者数について
今月急拡大が確認されたのは
医療、福祉業。
過去7年平均より71万人多くなっている。

飲食業などで
心ならずも仕事を失った人々のうち、
福祉の世界などで
がんばりはじめた方々が増えている
のかもしれない。

8月には飲食宿泊業で働いていて
9月に医療福祉に移った就業者は
統計的には観察されないことから
転職をしたとしても一定期間、
職業訓練、資格取得、求職活動
などに相当の努力された上での
決断だったはずだ。

新型コロナウィルス感染症は
まちがいなく多くの職業人生に
影響をおよぼしている。






2020年9月の労働市場(1)

本日朝、
総務省統計局「労働力調査」
厚生労働省「職業安定業務統計」
の2020年9月分の結果が公表。

労働力調査からは
4月の緊急事態宣言以降、
全般的に続いているものの
正規雇用や若年者に今回
気になる動きがみられるなど
新たに注視すべき点も見え隠れする。

4月以降、
季節調整値で見た就業者数は
9月になってはじめて前月より
4万人の減少となった。

その原因は、正社員の伸びが
停滞する兆しがみられることだ。
全体的には長期的な拡大トレンドから
大きくは乖離していないものの
4月以降では最も低水準の雇用者数と
なっている(ただし原数値)。
対照的に非正規雇用は回復傾向が
続いている。

過去7年平均との比較でみても
これまでおおむね安定していた
正社員に9月に入って陰りがみられる。
https://app.box.com/s/nba4azhcqsd03rvzdsnctkqoe40t8bi2

先月に続いて製造業などにも雇用は
厳しい状況が続いており、10月にも
このような状況が続くと
正社員を含む大規模な雇用調整が
始まったと認めざるを得なくなるかもしれない。

また感染拡大後に急増した非労働力人口も
これまで順調に減少し、労働市場への復帰が
着実に進んできた。
それが9月になると久しぶりに反転拡大した。

男女別でみると、女性の非労働力人口が
前月より2万人減少しているのに対し、
男性では10万人も増えている(季節調整値)。
年齢別では15~24歳の非労働力人口が
突出して26万人増加し(原数値)、
その他の年齢層の減少を凌駕している。

若年で非労働力人口(言ってみればニート)
が拡大した理由は今のところ不明だ。
だが、大学などでの授業の本格再開
や飲食などのアルバイト探しの断念なども
一部で関係しているのかもしれない。
全体でも8月にアルバイトをしていて
9月に非労働力となった人々は23万人と多い。

また8月から9月にかけて
15~24歳の正規雇用は
290万人から271万人へと
大きく減少している(ただし原数値)。
春に正社員となったものの、
職場に通うことが制限されたまま
仕事に希望が持てなくなり、
仕事を辞めた若者もそこには含まれる可能性がある。
場合によっては企業が正社員の雇用調整を
若者から始めている可能性もある。

今後若年層の非労働力が失業に移行した
場合にも(現在は顕在化していない)、
雇用情勢の大幅な悪化につながる
可能性もある。

不況の就業への影響を厳しく受けるのが
若年である事実は常に変わらない。
正社員の雇用が難しくなれば
来年卒業予定の学生・生徒の新規採用もおのずと
制限されることになる。
若年雇用の安定化に向けて、
今後の動向を慎重に注視しつつ、
一層の取り組みが必要になるかもしれない。







2020年8月の労働市場(4)

昨日の共同通信の配信のなかで
「若年女性の失業4.7% 最も悪化」 
と題された記事が掲載される。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6374956


実際、総務省統計局「労働力調査」(2020年8月分)
によれば25~34歳女性の
完全失業率は7月の3.7%から
8月の4.7%(季節調整値)へと大きく上昇している
のは事実。
ただこの結果自体は、
約一か月前に既に公表されていたものなので
なぜこのタイミング?と
少し驚く。

記事では若年女性の失業増加の原因として
{不安定な非正規雇用の割合が高く、就業者が多い
宿泊業・飲食サービス業がコロナ禍の直撃を受けたため
とみられる。」としている。

その見方に著しい異論があるわけではないが、
以前見た通り、過去7年平均との比較した場合、
宿泊・飲食サービスの就業が最も減少して苦しかったのは
今のところ6月頃であって、若干困難のピークを
過ぎているようにもみえる。

一方、女性の就業割合も高く、
全体の就業者数も元々多い
卸売・小売業が過去7年平均に比べて最近
就業者数が大きく落ち込んでいることも、
もしかしたら一部で若年女性の失業増加に
影響しているかもしれない。
https://genda-radio.com/archives/date/2020/10/04


また7月から8月にかけて
25~34歳女性について
完全失業者数は
19万人から24万人と大きく増えているが
(いずれも季節調整値)
同時に非労働力人口は
122万人から114万人へと大きく減っており
(こちらは原数値)
それまで就業を停止していた若年女性が
本格的に職探しを開始するようになったことで
失業者が増えたと考えても、
つじつまは合う。

また今回の記事に触発されて
改めて統計を見てみると、
15~34歳女性のうち、
7月に完全失業者だった人々で
8月も同じく完全失業者だった人が
30万人と、とても多くなっていた。
それは
6月から7月の16万人、
5月から6月の19万人に
比べてもかなり大きな数字である。

つまりは職探しを始めた若年女性が
なかなか希望する就業先に就くのが
難しくなっていることもまた
失業増加の理由になっている可能性もある。
就業機会が限られている他、
収入面や安全面で慎重に職選びをしている女性に
とって就業確保は容易ではない面もあるのかもしれない。

明日は2020年9月の労働力調査の発表。
引き続き注視していきたい。

https://youga-yougaku.info/purada.html










審査

今日は、
博士論文の口頭試問が
一つ。

ときに厳しい
コメントが投げかけたり
するのだけれど、
それに懸命に
答えようと頑張る姿は
いいものだと思う。

それこそ修士のときから
含めれば5年以上の大切な
時間を研究に費やしてきたわけだ。
痛い厳しい指摘をされても
簡単にはひきさがれないし、
けっしてひきさがってはいけない。

学者もしくは研究者を
志す若者が必ずしも増えていないという。
自分が今、学生だったら大学院に
進もうとは思っていないかもしれない。

ただ、研究の道は
楽しいことばかりではなく
苦しいことも多いけど
わるくないものだと
改めて思う。

https://www.youtube.com/watch?v=wTP2RUD_cL0