SNEP (2)

 スネップについて考えようと
 思ったきっかけがあります。
 一つは、ひきこもりです。これまで
 ひきこもりについて、いくつかの
 重要なデータ分析があります。
 ただそこでのひきこもりに該当する
 人たちのサンプル数は、せいぜい
 数10件程度と、必ずしも十分なもの
 とはいえませんでした。
 二つ目は、無縁社会との関係です。
 2010年ごろに、無縁社会という言葉
 が話題になりました。ただし、何をもって
 無縁と考えるのかに、はっきりとした定義
 がなかったように思いました。
 三つ目は、やはりニートのことがあります。
 ニートはいろいろな理由で働くことをあきらめた
 人たちですが、なぜあきらめてしまっているのか
 その理由には、まだわからないことがたくさん
 あります。
 以前、行ったニート研究では、バブル崩壊前には
 どちらかというとお金持ちの家の子どもたちが
 ニートになりやすかったのですが、崩壊後は、むしろ
 経済的に苦しい家庭の子どもたち、特に大学などに
 進学しなかった子どもたちが、ニートになりやすい
 傾向に変わりつつありました。
 このようにニート問題は、いわゆる貧困問題と
 密接にかかわっているのですが、その他の原因は
 まだまだ未解明でした。
 さらにひきこもりも、ニートもそうですが、すでに
 若年問題だけでなく、40代や場合によっては50代
 といった中高年の問題にもなっているという指摘も
 あります。この点も実態が気になっているところでした。
 スネップの研究に用いたのは、総務省が昭和51年から
 5年ごとに行っている『社会生活基本調査』です。最新の
 調査は昨年実施されました。
 http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index.htm
 その匿名データは、平成18年(2006年)まで申請をする
 ことで利用できます。
 http://www.stat.go.jp/index/seido/2jiriyou.htm
 2006年の社会生活基本調査の匿名データを申請したところ、
 そこには前回定義した孤立無業のサンプルが1000件以上
 含まれていました。分析に十分なサンプルです。
 またスネップには、無縁社会と違って明確な定義があります。
 無縁社会は単身世帯の増加とよく結び付けられますが、単身
 でも友人や知人と交流を持っている人もたくさんいます。社会
 生活基本調査では、実際に他人と交流があったのかが調べられて
 います。
 さらに2006年の調査からは、仕事についての状況も調べられて
 います。仕事を探しているか、仕事につくことを希望しているか、 
 仕事につくために学習しているのかが、わかります。ニートの
 研究にも応用可能です。
 そこで社会生活基本調査を使って明らかになったのが、 
 20代から50代までの働き盛りの無業者のうち、100万人以上が
 スネップであることでした。今や無業者の57%がスネップです。
 1996年には29%にすぎなかったことと比べると、驚くべき
 増加です。
 スネップは、無視できない深刻な問題なのです。
 

SNEP (1)

 ここ最近、
 仕事をしていない人、つまりは
 無業者について研究をしています。
 大学院生の高橋主光(かずてる)君
 との共同研究です。
 フリーターや非正規雇用など
 働いている人のことも気になりますが 
 なんといっても仕事をしていない無業者
 のことが気になります。
 自立して生活したり、社会とつながるには
 やはり仕事は大事だと思っています。
 ちなみに無業者って何人くらいいると思いますか。
 総務省『労働力調査』によれば、2010年平均で
 働いている就業者が約6千2百万人強なのに対し
 日本全体では約4千8百万人の無業者がいるのです。
 そのなかで、私たちが研究してきたのは、次の
 無業者です。
 20~59歳の未婚者のうち(通学中を除く)、
 仕事をしていないだけでなく、一日中ずっとひとりでいるか、
 そうでなければ家族しか一緒にいる人がいない人たち。
 そんな友だちや知り合いとの交流がない無業者のことを
 孤立無業者、英語でスネップと呼ぶことにしました。
 
 孤立無業は英語でSolitary No-Employed Persons、
 頭文字をとるとSNEPになります。ちょっとSMAPみたい
 ですが。
 実は、働き盛りであるにもかかわらず孤立無業状態に
 あるスネップの人たちが、最新の調査である2006年には
 107万人に達していたのです。
 1996年には35万人だったスネップは10年で3倍に増加
 していたのです。
 とても驚きました。
 
 これからこのスネップについて多くの人に知ってもらい
 何ができるのか、考えていきたいと思っています。

雇用政策

  震災後一年間に経験した
  雇用対策にまつわる話を
  備忘録的にまとめてみました。
 http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2012/05/sum4.htm
  もしご関心の方がいらっしゃれば
  抜き刷りがありますし、PDFでもお送り
  できますので、ゲンダラジオの
  genda_radio@yahoo.co.jp
  までご連絡ください。