東京大学出版会が毎月刊行
している小冊子である『UP』
の最新号(7月号)で、いつもの
希望学三人組(宇野重規、中村尚史、
玄田有史)が、エッセイストの
岸本葉子さんをお招きして座談会。
とても楽しく、希望学そのものの
雰囲気をよく、岸本さんから引き出して
いただいた。
『UP』はちょっと大きな本屋さんにいけば
置いてあったりするのかな?また東京大学
出版会にご連絡いただければ105円で
入手できるようです。ぜひ希望学にご関心
の方は、お手にとって楽しんでいただければ
と思います。
詳しくは
http://www.utp.or.jp/topics/up/up2009/
まで、どうぞ。
多摩川部屋
昨日、電車に乗っていたら
多摩川駅のホームで、鉄柱に
むかって、なぜかテッポウの稽古
に励むおじさんがいた。
テッポウ: 相撲で、両手または片手に力をこめて、
相手のからだをつきとばすもの。柱に手を打ち付けて
その稽古をすることにもいう。
CHOJIKAN RODO
今年も折り返し。前半はいうまでもなく
希望学全四巻の刊行にもっとも時間と
エネルギーを費やしたけれど、同時に
本職の労働問題もやらなくちゃね、と
いつも思ってきた。
昨年は一年を通じて、非正規雇用の
問題、特にどうすれば、正社員化など
状況の改善が可能なのかをデータから
考えてみた。なんとか、自分のなかでは
非正規雇用三部作が完成。
今年の自分のテーマは長時間労働。
まず就業構造基本調査を使って1990年代
から2000年代初頭にかけて長時間労働が
増加した背景を、これまでと別の観点から
明らかにしたいと思って書いてきたのが、
「分配問題としての長時間労働:「即戦力」志向の背後で」
この時期、長時間労働は30歳代から40歳代前半で特に
増えていたことは、以前から指摘されていた。それに対して
この論文の特徴は、長時間労働が、男性正社員のうち
入社後まもない短期勤続層のあいだで急速に広がっていったことを
指摘した。新卒や転職者が、入社してすぐの業務が当時
増えたことで、それをきっかけに時間的・肉体的負担から
辞職を望むケースが増えたり、辞めないまでも労働時間の
短縮を望むケースが明らかに増えていた。
失われた10年と呼ばれた時期、正社員採用の採用条件として
「即戦力」がしばしばいわれた。上記の結果は
即戦力とは、結局、入社直後から長時間労働の
負荷を担う人への選別が強まったことを意味して
いたのだろうと、結論している。
詳細について、ご関心の方は
http://www.ier.hit-u.ac.jp/pie/stage2/Japanese/d_p/2009.html
をご参照ください。
後半はまた別のテーマで長時間労働を考えます。
5月の労働力調査発表
5月の労働力調査の結果が今朝発表。
完全失業者数は347万人、季節調整値
で5.2パーセントと、引き続き悪化が続いて
いる。
同日に発表される有効求人倍率も、現在の
調査方法では過去最低の0.44倍だそうだ。
雇用調整助成金の支給対象数に、減少が
みられるなど、来月もしくは再来月くらいからは
上昇のテンポもひと息つくかもしれない。
ただ、年齢別に発表された完全失業率は、
15~29歳で9.0パーセント(原数値)で他の
年齢層より抜きん出て高い他、対前年増減率も
1.9パーセントも最も大きくなっている。
雇用情勢が一段落しても、ふたたび若年就業の
冬の時代は避けられそうもない。
また失業率の男女差も拡大し、男性の方が
女性よりも就職の状況は概して厳しい。
このようなところから、雇用システムの変化
は始まっていくのだろう。
もう少し
いよいよ希望学の全四巻が
完成間近だ。明日で完全に私の
手から離れる。
昨年からこの四冊を最重要と
考えてきたので、ひとしおだ。
終わったら、仲間と打ち上げだな。