SNEP (9)

 では、本人が治療や療養をしていない
 として、家族はどうなのでしょうか。
 家族のなかに介護を要する人たちが
 いて、そのケアに忙殺される結果として
 ずっと一人か、家族とだけか、
 つまりはスネップに
 なっているのかもしれない。
 
 ところが、
 統計分析からは 
 自宅に要介護者が家族に
 いる人ほど、スネップに
 なりやすいという傾向は
 みられませんでした。
 
 たしかに家族の介護に
 忙しく、社会とつながることが
 難しい面もあるかもしれません。
 しかし、その一方で、介護される
 家族がいるということが、支援者の
 輪を広げ、それに加わり、社会との
 つながりを広げていく面もあるのでは
 ないでしょうか。
 
 本人の健康に不安があったり
 家族が要介護であるために 
 スネップになりやすい
 「わけではない」!
 だとすれば、孤立化の
 原因は何なのか。
 それをみんなで探していきませんか
 ということが、
 スネップを提起した
 一番の理由です。
 
 

SNEP (8)

 スネップの人たちは、
 病気や怪我を抱えていることが
 多いのではないか。
 そう思う方もいるかもしれません。
 いわゆるメンタル問題を含めて
 病気や怪我のために外出が困難に
 なったり、人と会うことが難しくなる結果
 スネップ状態に陥っているのかもしれない。
 
 社会生活基本調査のうち
 最新に行われた2011年の調査では、
 健康状態についての設問があります。
 
 ところが匿名データが提供されている2006年
 調査では、健康の設問が含まれていません。
 そこでかわりに、調査された2日間のうち
 治療や療養のための時間があるかどうかに
 注目しました。
 しかし実際、統計分析をしてみると、
 治療・療養の時間がある人ほど
 スネップになりやすいという傾向は
 みられませんでした。
 むしろどちらかといえば、治療や療養
 の時間がある人ほど、スネップになりにくい、
 つまりは誰かと交流しやすくなっているという
 傾向すらありました。
 ちなみに、細かいことですが、お医者さんや看護師さん
 など、仕事上の行為として接触している場合は、
 「一緒にいた」という交流には含まないことになっています。
 
 それでも、治療や療養をして、健康になりたい、
 社会に復帰したいという思いや行動があることは
 それを応援してくれる友人や知人とのつながりを
 生みやすいのかもしれません。
 それに問題は、健康でなくても、いろいろな理由で
 治療や療養をしないまま、無業状態にある人なの
 かもしれません。
 
 健康とスネップの関係については、2011年の
 社会生活基本調査が利用可能になった時点で
 ぜひともあらためて検討してみたい点です。
 
 
 

SNEP (7)

 金環日食の直後、
 ラジオをつけたら、
 ノラ・ジョーンズの
 サンライズが流れていた。 
 そのすぐ後に、
 キム・カーンズの
 ベティ・デービスの瞳が
 流れた。こっちの
 バカバカしい感じが
 好きだ。
 「みえた」「みえた」と
 盛んだったけれど、 
 不運にも雨や雲でみえなかった
 子どもたちもたくさんいることを
 考えると、自然や確率そのものに
 もう少し思いをはせるということでも
 よかったような気がするけど。
 ○
 スネップへのなりやすさについて
 思いがけない発見がありました。
 家庭の経済状況です。
 ニートの場合、バブル経済が大きく
 崩壊する以前の1990年代前半には
 経済的に余裕のある家庭の若者ほど
 ニートになりやすい傾向がありました。
 所得に余裕のある分、無理して働かなく
 てもよいと、本人も親も考えることが
 できました。これを経済学では、
 労働供給の所得効果と呼びます。
 それがバブル経済の崩壊と経済停滞の 
 長期化にあわせて、所得効果が弱まって 
 いきます。つまり、以前とは反対に、経済的に
 余裕のない家庭の若者が無業になったとき、
 もう仕事につくことの希望を持たなくなり、
 ニートになる確率が高くなっていたのです。
 
 経済的に貧しい場合ほど、進学をするのが
 難しかったり、仕事につくための情報やノウハウが
 得いにくいということがあったのかもしれません。
 このようにニートには、貧困問題が大きく影を
 落としていました。
 それに対して、スネップへのなりやすさの特徴の一つは、
 それが、家庭の収入とは基本的に無関係だということです。
 極端に所得の低い場合や所得の高い場合などをのぞき、
 どのような家庭からでもスネップ、つまりは孤立無業は
 発生していたのです。
 収入ではなく、家の広さ(部屋数)の関係もみてみましたが
 ごく平均的な部屋数の家から孤立無業が生まれる確率は
 一番高くなっていました。
 社会から孤立するということには、貧困問題だけでなく
 何か別の大きな力が働いているのかもしれません。最近
 中流の没落といったことがいわれたりしますが、案外
 誰でもスネップになるかもしれないということと
 どこかで関係しているのかもしれません。
 その何か別の力とは何か。
 データ分析だけではわからないものかもしれません。
 そこには、たとえば就職支援や若者の自立支援現場
 にいる人たちが、大事なヒントをつかんでいるような
 気がしています。

SNEP (6)

 ふたたび20~59歳の
 未婚無業者(通学中を除く)
 のうち、ずっと一人か、
 家族としか一緒にいない
 スネップに話を戻したいと
 思います。
 
 スネップになりやすい人には
 どのような特徴があるのでしょうか。
 
 まず性別では、女性よりも男性の
 無業者のほうが、孤立しやすいよう
 です。
 ひきこもりは、男性が多いということが
 いわれてきましたが、スネップにも
 あてはまるようです。そもそもの社交性
 が性別で違いがあるのかもしれません。
 さらには自立しなければならないという
 プレッシャーは男性のほうが強く、それが
 かえって社会に出にくくするということも
 あるかもしれません。
 教育も関係があるようです。高校卒の人
 に比べると、高校中退者を含む中学卒
 の無業者が孤立する割合は高くなっています。
 高校を中退することで、仕事につきにくくなる 
 と同時に、友人関係も狭まってしまうことも
 あるのかもしれません。
 ニート状態の人のなかには、高校中退を
 経験した人も多く、スネップはニートと共通
 する特徴があります。
 
 このようにスネップは、ひきこもりやニートと
 相通じる部分が少なくありません。
 ただ年齢については、少しスネップに固有の
 面があるかもしれません。
 ひきこもりやニートは、まず若者の問題として
 注目されてきました。107万人のスネップのうち、
 20歳代も38万人とけっして少なくありません。
 ただし、無業者に占めるスネップの割合は
 30歳代以上になって、グンと高まります。
 スネップはどちらがというと、働き盛りのなかでも
 年齢の高い人たちにとって深刻な問題です。
 たとえばずっと一人でいる一人型のスネップは
 50代後半の未婚男性無業者で割合が
 特に高くなっています。
 若いうちは、学校時代の友だちとも会う機会が
 それなりにあるのですが、年齢を経るとつきあいも
 限られてくることがあります。そのなかで仕事のない
 ことが人間関係の乏しさに拍車をかけているのでしょう。
 スネップは、もう若者問題の枠組みだけでは
 とらえられない広がりを持っている無業問題です。
 

SNEP (5)

 スネップは、20歳以上59歳以下の
 働き盛りのうち、未婚の無業者に
 注目しています。
 
 未婚で仕事がないとなると、生活に
 必要なおカネは、貯金を取り崩すか、
 親やきょうだいから援助を受けると
 いったことが必要になります。
 
 一方で、20~59歳の既婚者でも
 社会生活基本調査で調べられた
 連続2日間に家族以外とまったく
 一緒にいる人がいなかったという
 人は少なくありません。2006年の
 調査では、479万人の既婚者が
 誰とも一緒にいませんでした。
 ただし、そんな誰とも一緒に
 いない既婚者ですが、過去一年に
 スポーツ、旅行、ボランティアなどを
 一切しなかった人というのは少数です。
 スネップの場合、37%がそれらの行動
 をまったくしていなかったのですが、
 既婚の場合は、わずか12%です。
 既婚者では、調査された2日間に
 家族以外と一緒にいなくても一年
 という期間でみれば、なんらかの
 社交活動をしている人が多いように
 思います。
 それに対し、離婚もしくは死別した
 20~59歳の無業者は、既婚者と
 大きく状況が異なります。ずっと 
 一人だったか、家族と一緒だった
 離死別経験者は25万人ですが、
 その31%が過去一年にスポーツ、
 旅行、ボランティアなどをまったく
 していません。
 イメージとしては、漫画の
 「34歳無職さん」のような感じ
 でしょうか。
 http://members3.jcom.home.ne.jp/fzrdnzl/34.html
 さらには、いわゆるシングルマザーや
 シングルファザーも、孤立した状態に
 なりやすいということかもしれません。
 スネップや高齢者とならんで、いろいろな事情で
 離別したり、不幸にも配偶者と死別された
 方も、社会から孤立しやすいということも
 今回の研究で、はじめて知りました。
 それだけ離死別者ほど、仕事を通じて
 社会とつながることが必要とされている
 ということだと思います。