2005年からはじまった希望学のなかでは、
たくさんの素敵な出会いがありました。その一つが、
国際救急救命医の二宮宣文さんと社会科学者の中村圭介さん
の出会いです。
中村さんによって描き出された二宮さんの物語から、
私は医療の希望を見た気がします。この本には
壮絶な写真も含まれています。
でも現実に目を背けてはいけないと思いました。
本の刊行までにはいくつかの試練や困難もありましたが、
乗り越えた先にやっぱり希望は待っていてくれました。
ここにまた一つ、希望学の貴重な成果が生まれました。
ご一読いただければ幸いです。
カテゴリー : ベンキョーしてみた
絶望なんかしていられない
希望学の新しい本が出ました。
『絶望なんかしていられない
-救命救急医ドクター・ニーノ・戦場を駆ける』
中村圭介著、荘道社、1,575円
です。帯を書かせてもらいました。
ぜひ読んでください。
○
この一冊には世界の希望が宿っている!
希望を安易に語らない二宮さんは
「本当に必要なのは『野望』かもしれない」
と言った。戦場を駆け巡ってきた救命救急医と、
みずからを調査屋と名乗る当代随一の社会科学者による
出会いと対話が生んだ奇跡。希望学のエッセンスが見事に
ちりばめられているこの一冊には、日本人の、いや世界の
希望が宿っている。この本に何も感じない人は、医者に
なってはいけない。この本で勇気を得た若者は、きっと
医者に向いている。今すぐ医者をめざすべきだ。
玄田有史
女性と仕事の未来における危機
10年程前、ポジティブアクションと
呼ばれた雇用均等もしくは男女共同参画
に関連した政策にかかわったりしていた。
そこで「個性は性を超える」というフレーズに
出会ったことがある。今から20年以上前に、
男女雇用機会均等のエッセンスを伝えるために
つくられたコピー。とてもよく出来ていると
思う。
6月は雇用均等月間ということで毎年ポスターが
作られ、普及活動が続けられてきた。「個性は性
を超える」というコピーを含んだポスターは、
東京の三田にある女性と仕事の未来館にある。
しかし、その未来館の運営を含む女性と仕事
総合支援事業が、仕分け作業のなかで廃止と
決まったことはまったく報道されていない。
廃止にも異議を感じるが、それがまったく報道
されないことにも違和を感じる。
「男らしさ、女らしさも大事だが、その人らしさ
が一番大事」。そんな当たり前の認識が、やっと
少しずつ広がりかけてきた矢先の廃止だ。このまま
では流れは、元の閉塞的かつ極端な状況に逆行を
始めるだろうし、ブレーキが効かなくなるかも
しれない。そらおそろしさを感じる。
そんな危機感から署名活動が始まっている。
http://www.shomei.tv/project-1552.html
同様な懸念をお感じの方に署名のご検討をお願いしたいと
思う。
大とは?
鈴村興太郎先生の随筆より。
「(一橋大学)学長を務められた
増田四郎教授は、中世史の講義で
<大学>の大の文字を分解して
<一人で学ぶ>と読んでみせ、
自由で内発的な研鑽の重要性を
説かれたものだった・・・」
鈴村興太郎「厚生経済学の実践者・都留重人」
(『回想の都留重人』尾高煌之助・西沢保(編)
勁草書房、2010年)より引用。
学術本
『人間に格はない』をアマゾンでみたら、
購入に2週間以上と出ていました。つまりは、
アマゾンには在庫がないということ。自分だったら、
2週間以上というのは、少し買う意欲をそがれるかな。
ご注文いただき、お待ちいただいている方には、
心から感謝申し上げます。
でも世の中に『格なし本』がないかというと
そういうわけではありません。紀伊国屋さん
とか、丸善さんとか、大きな本屋さんの本店で
あれば、在庫はあるようです。地方の方には
たいへん申し訳ないのですが、どうか足を運んで
いただき、お買い上げのご検討いただきたく
お願い申し上げます。
今、学術本が売れません。そんなこともあってか
研究者(特に経済学)では、本を書くことよりも
学術雑誌に論文を投稿するに注力するのが
若手を中心に多くなっています。投稿は、厳しい
レフェリー審査を受けながら、採択を目指すものです。
今回の本にも、この何年かかで投稿した論文を
ベースにした内容が多く含まれています。
私は投稿論文は投稿論文でとてもすばらしいと思う
のですがわずかな経験から思うのは、本と論文では、
主張のかたちがかなり違うということです。論文は、
細かい論点についての厳密性を徹底的に追求
することに向いていますし、そうでなければ
採択はなかなかされません。
また投稿論文は、採択までの過程で、レフェリーの
影響を少なからず受けることが多いように思います。
感覚的には、投稿論文は、投稿者とレフェリーの共作
と事実上なっている場合も少なくないように思います。
それに対して、本はより大きな観点から、多少なり
とも大胆なメッセージを自分の責任で提案することに
長けていると思います。サッカーでいえば、論文は
あらゆる批判に対するディフェンスの力が問われている
感じがしますが、本はむしろフォワード、広く訴えかけて
いこうとする攻めの姿勢が重要に思います。
今回の本も、2000年代を舞台に、師匠の石川先生の
思いを踏まえつつ「定着」をキーワードに、自分なりに
思い切った提案を書いてみました。今は望むべくもなく
「転々」とせざるを得ない人、働くことに希望を失った
人が自尊の念を保てるように、もっと目を向けていく、
共感が広がっていくことが大切というのが、その主張です。
最近は、ブログやツィッターなどがメッセージ発信の
中心になりつつあるようです。まずは、なんといっても
タダというのは大きい。本であれば、1000円を切った
新書でないとなかなか買ってもらえません。
それらも重要なメディアだと思いますが、私は学術本でしか、
表現できないものが、やはりあるよう思いますし、そう
信じています。感覚的には、これらのメディアでは
「わかりやすさ」がきわめて重要な評価基準になりますが、
学術本には「わかりやすさ」よりも大切なものがあるように
思います。
むしろ、どこまでわかって、どこからはまだわかって
いないかを、その境界領域を自分の責任で明らかにしよう
とすることが大切で、わかりやすさとか、啓蒙ということとは
違うものです。
値段も高く誠に恐縮ですが、一度、本屋で手にとってみて
もらえれば、とてもうれしいです。