先7月過去最高だった完全失業者数が
376万人(季節調整値)が、8月には
362万人に減少。ちなみに8月で過去最高は
2002年の368万人。
季節調整済みの雇用者数も、先月から2ヶ月
連続した増加。多くのエコノミストによる8月の
雇用状況はさらに悪化という予想は「外れ」と
いうのが正直なところだろう。
これで雇用について安心できる段階ではないが、
先月も書いたように、失業者数や就業者数の
量的な問題だけでなく、これからは長期失業や
低賃金就業など、その質についてもっと問われる
べきだろう。
その意味では、今年の労働力調査詳細集計の分析は
今後につながる重要な意味を持つ。
今月の結果で最も印象的だったのは、
男女による雇用状況の明暗がかなり鮮明に
なってきたこと。
男性の就業者数が、対前年同月比で
109万人減少と大幅であるのに対し、
女性では1万人減少とほぼ横ばい。
就業率も前年同月で男性が1.9%減少
に比べて、女性では0.4ポイントの上昇だ。
雇用状況の男女差は、当然、失業率にも
反映する。男性の完全失業率は5.8%である
一方、女性は5.0%(季節調整値)と、
4月以来、0.5ポイント以上の差が継続している。
女性にはサービス業など、仕事に就くチャンスが
まだあるが、建設、製造など、男性にとっての主な
就業機会は大きく削減されているというのが、ここ
数年、多くの地方で顕在化してきた現象だった(特に
雇用が全般的に厳しい地域)。その状況が広く
日本全体に広がりつつあるのかもしれない。
かつて男性に比べて女性の就業機会が制限されて
きたというのが、日本の労働市場の特徴といわれて
きた。今回の不況の影響だけではないが、これからの
就業は、むしろ男性に受難の時代なのかもしれない。
カテゴリー : ベンキョーしてみた
転落防止柵(その後)
以前、自殺対策として、
交通量の多いすべての駅に
転落防止策を早急に付けるべきではないか
と、ゲンダラヂオに書いたことがあった。
昨日、久しぶりにあった友人で、鉄道に
きわめて詳しい人から、なぜ設置が進まないか
おしえてもらった。
まず、異なる鉄道会社が乗り入れている路線
(たとえば東急線と日比谷が乗り入れている
東横線など)では、実は鉄道会社によって
車輌が異なっており、そのために停車位置が
微妙に異なっている。そのために一律に停車位置を
定めて防止柵を作るのは単純でないそうだ。たしかに
自分が利用している駅でも、東急の車輌とメトロの車輌では、
停車位置が微妙に異なっている。
もう一つの問題は、駅のホームのうち、ホームの乗車口下が
空洞になっている場合とそうでない場合がある。空洞になっている
駅のなかには、防止柵の重みに耐えられない場合もあり、ホーム
自体を改修しない限り、柵の設置が難しい場合もあるのだそうだ。
ただし、彼がいうには、このような問題があるにせよ、ほとんどの
駅に設置することは、けっして不可能ではないという。そのためにも
軽量で移動幅の大きい防止柵の開発など、一定の技術革新が
必要なのかもしれない。
さらには、現状でも、経営体力のある東京圏の鉄道では可能で
あろうという、彼の見立てだった。
対策の難しさと可能性を同時に感じさせる話だった。
@オックスフォード
13年ぶりにオックスフォードに着。
当時、一番好きな場所だった
port meadowをぶらぶら
歩く。そこでふと考えたこと。
(1)不当な労働条件の変更に
対して判例を積み重ねること
(不当にどれだけ訴えることが
できるか、現状日本を変えるのは
判例、総合労働相談コーナーの重要性)
(2)非正規を中心に組織化の
新しい流れをつくること
(正規が従業員代表ということを
どれだけ真剣に考えるか、圭介さんの
影響、非正規のためでなく、正規のためにも
代表とは何か、審議会に非正規の代表も)
(3)将来起こりえるトラブルに
対応できるような学校教育を
中学時点で行うこと
(深刻なトラブルから自分を守る
ために、専門家しかわからないことは
チカラをもたない、キャリア教育の原点
回帰など)
そんなことを、意味もなく
なぜか、
思ったりしました。
夜、オックスフォードのみなさん、どうも
ありがとうございました。自分の記憶の
なかで、多くで右と左が反対なことを、
なんだか不思議に思いました。
自分の仕事とは。
昨日の雇用システムワークショップの
お二人のご発表もいずれも示唆に富んで
学ぶところが多かった。
そのなかでふと個人的に感じたのが、
仕事の範囲、もしくは期待される役割に
ついてという問題。
ざっといえば、これまで日本では、期待
される仕事の範囲や、それにもとづく評価に
曖昧さをあえて残すことを選択してきた。
仕事の範囲にのりしろを残すことで
緊急のときなどに柔軟性を確保するメリットが
大きかったからである。
ただ、時代の変化のなかで、そのメリットよりも
仕事という概念が曖昧なことへのデメリットが
大きくなっている。曖昧であることは、ややもすると
「なんでもやる可能性がある」ということであって、
多かれ少なかれ、様々な制約がある人々が増えるなかで
働く人と雇う人のあいだの齟齬が大きくなっている。
それはよくjob descriptionの問題といわれるが、
あらためてその点について考えさせられた。
では、job description、つまりは自分が果たすべき
仕事の役割や責任をより明確にすることが近未来的に
重要だとしたときに、何が決め手になるか。
一つのアイディアは、自分の仕事に関する範囲や責任に
ついての発言力や表現力を、一人ひとりがより身につける
ことではないか。
これまで、企業からすれば、どちらかというと、そのような
発言力や表現力を労働者が持たないほうが、柔軟に
対応を要求する上では、便利だった。しかし、これからは
むしろそれらを個々の労働者がもっと身につけられるように
企業側も積極的に取り組むことが、企業と労働者の個別の
コミットメント(約束)を強め、信頼関係を増すことで、結果的に
評価の納得性や生産性にプラスに働くのではないか。
つまりは、労働者のボイス(発言)を鍛えることも、これからの
企業の重要な能力開発投資になるように思えた。
その場合、仕事の範囲や責任を表現するとは、逐一
すべて厳格に線引きするということではない。明確に
する部分と、あえて曖昧にしておく部分の範囲を決める
ことも、含まれる(むしろ、それが重要だろう)。
自分の仕事を自分の言葉を語れるようになるのは
正規、非正規を超えて簡単ではない。ただ、一人でも
多くが、自分の仕事を誇りを持って語り、約束できる
状況を実現することが、近未来の雇用システムを設計
するときの、一つの理想状況ではないか。
そんなことを昨日は考えさせられた。
雇用システムワークショップは、たいへん多くの方に
ご参加いただいて、幹事の一人として嬉しい。でも
いちばん嬉しいのは、労働問題を勉強している実感を
強く持てることである。
7月の完全失業率発表
7月の完全失業率が発表された。
ついに2002年6、8月、2003年4月の
過去最高だった5.5パーセントを超え、
季節調整で5.7パーセントとなった。
これを衝撃的とするニュースや記事
などが広く報道されるだろう。まずは
動揺するだけでなく、冷静に事実の把握
を積み重ねることが大事だ。
パーセントでなく、絶対数も大事になる。
完全失業者数が359万人というのは
2002年当時とまだ同水準。今後400万人
を超えるかどうかが、一つの目安だろう。
これまで年内の失業は年前半に深刻化する
ことが多かったが、これから年後半に益々
悪化するとすれば、それこそ大きな構造変化
になるかもしれない。数字の増減だけでなく
秋以降の動きが気になるところだ。
調査では、雇用者の減少幅(80万人減)で
前月(110万人減)に比べ30万人縮小も示されている。
季節調整値にいたっては、前月比で雇用者数は
24万人増加と、8ヶ月ぶりの回復の兆しもあることも
見逃せない。
雇用者の増加が増えたとしても、それが採用が
増えたからか、離職が減ったからかで、認識や
対応も異なる。その区分が重要だ。
失業率(数)も、新しく失業した人が増えても
拡大するが、失業からの脱出が困難化しても
増える。どちらで増えたかで、失業の見方も
異なる。
今後、あくまで推論だが、景気の底打ちに伴い
失業に入って来る人の勢いは一時よりも弱まる
かもしれない。そうなるとより対応が急がれるのは、
失業から抜けられない人、失業の長期化問題になる。
求職活動は3ヶ月が一つの勝負で、それを超えると
誰でもたいへんになる。長期失業から脱却できた
ケースの状況を集めて、広く関係者で共有すべきだろう。
大事なのは、具体的な改善例だ。
ちなみに今回の報告は、総選挙の直前になったが、
選挙の日程が決まる前から、確定していた発表日
である。そのことは、あらためて記しておきたい。