被保険者の条件

 前回記載した内容について
 雇用保険に詳しい知り合いから
 ご指摘をいただきました。
 
 2007年10月1日より、
 「短時間労働者」のうち、
 ①1週間の所定労働時間が20時間以上
 かつ
 ②1年以上引き続き雇用されることが見込まれること
 の条件に適う場合、
 「正社員等の通常の労働者」と区別なく
 「一般被保険者」として取り扱われることになりました。
 「30時間」という目安は制度上なくなったことになります。
 そうなると問題は①ではあるが、②ではない、つまり
 雇用の見込みが1年未満の場合に、雇用保険の被保険者
 としての資格が得られないことにやはりなります。
 派遣・請負に限らず、1年未満の雇用契約が広がる中
 加入資格が現状のままでよいのか、やはり議論が必要かも
 しれません(失業給付が満12ヶ月の加入を要するという(ただし
 解雇・会社都合の場合は、加入が満6ヶ月以上)現制度も
 同時に検討する必要があります)。
 それにしても(言い訳?)、制度、わかりにくいなあ。
 やはりわからないときには、専門の窓口に相談するのが
 一番のようです。
 ご指摘ありがとうございました。

保険と再分配

 雇用危機に際して、
 雇用保険の加入範囲を拡張することが
 検討されていると新聞報道があった。
 その方向には基本的に賛成だ。
 
 同時に財源確保のためには、保険料の
 引き下げどころか、引き上げ、特に不況期に
 手厚くするシステムをつくることも重要に思う。
 その上で、有期雇用者や学卒無業者等を含む
 より多くに加入・給付対象を拡張する制度に
 した場合の、課題は2つある。
 
 第一に、単純に制度を導入したときに予想される
 使用者および労働者の一部から生じる可能性の
 あるモラルハザードを防止するシステムや体制を
 いかに整備するか。
 第二に、対象を拡大した場合、保険制度が
 ほぼ共通した外生的リスクに直面する加入者同士の
 相互扶助という保険原理から、リスクの低い加入者
 からリスクの高い加入者への給付を通じた再分配
 という制度という側面が事実上強まることになる。
 それに対して、失業リスクの相対的に小さい
 正社員などの加入者の合意・納得が得られるか。
 より重要なのは、第二の論点だろう。
 セーフティネットは、誰かが負担をしなければ手厚く
 できない。正社員と非正社員との処遇格差を解消する
 ために、正社員の賃金を下げることに合意を形成する
 のは難しいだろう。だとすれば、あえて保険という原則
 よりも再分配制度として保険制度を解釈・運用することも
 一案だと思うのだが、どうだろうか。
 ただ、その場合も、正社員全体の合意が得られるかどうか
 である。
 注):
 現状でも、週30時間以上勤務している人であれば
 雇用保険の加入資格はある。さらに週20時間以上30時間
 未満でも1年以上の働く見込みがあれば、同じく加入資格は
 ある。
  それは有期雇用者であっても同じであって、派遣労働者
 は、すべて雇用保険に加入できないかのような誤解を与える
 報道には注意を要すると思う。
  ただし、法律があることと、そのような法律が守られているか
 どうかは別問題である。派遣会社によって厳格に法が遵守されている
 かどうかは、監督すべきだろう。そこに行政の関与する余地は大きい。