2020年4-6月期の労働市場(1)

本日、
総務省統計局「労働力調査」
2020年4-6月期(第2四半期)の
詳細集計の結果が公表された。

詳細集計からは、
毎月の基本集計からは
把握できなかった事実も確認できる。

たとえば正規・非正規別の
雇用形態別の動向は、
基本集計の場合、
現在と比較可能なのは
2013年1月以降である。
それに対し詳細集計では、
2002年第1四半期からの比較が
可能となる。

2020年第2四半期の
非正規の職員・従業員は
2036万人と
感染拡大前だった
前期より117万人
前年同期より88万人
と大きく減少した。

非正規の前期比117万人減は
リーマンショックのもとにあり、
日比谷公園での日雇派遣村などが
話題となった
2008年第4四半期から
2009年第1四半期にかけての
97万人減を
上回る深刻な状況となっている。

非正規雇用は
昨年第3四半期が
過去最多の
2189万人を記録したために
前年比で比べた場合
今後非正規の深刻化が進むのは
必至だろう。
https://genda-radio.com/archives/date/2020/08/02

年齢階層別にみると
就職氷河期世代を含む
35~44歳について
非正規雇用が前年同期に比べて
31万人減少と
状況はより深刻である。

また非正規雇用のうち、
15~24歳の在学中アルバイト・パートは
2019年第4四半期に過去最多の
203万人に達していた。
それが緊急事態宣言の出された
2020年第2四半期には
157万人になり、
46万人の大幅な減少も記録している。

ただ非正規雇用の動向と並んで
今回の詳細集計から
改めて印象深いのは
感染症が拡大した
2020年第2四半期にあっても、
正社員数はいまだ
増加傾向のなかに
あったことだろう。
https://app.box.com/s/a7zmywc6v25jxiz6nfcd1ig6pffbnvor

正社員数は
2002年第2四半期に
3529万人を記録した後、
すう勢的に減少傾向を続けてきた。
それが2014年第1四半期に
3232万人と底を打つと、
反転して増加傾向を続けてきた。
そして2020年4-6月期には
3543万人とV字回復し、
2002年以降では過去最多(※)と
なっていたのである。

※ 基本集計では2020年4月に正社員数は
2013年以降最多を記録し、6月にもほぼ同水準を
維持していた。
https://genda-radio.com/archives/date/2020/08/02

正規・非正規の問題といえば
雇用者のうち今や非正規が
約4割(かつては3割といった)
を占めるという「比率」
に長く注目が集まってきた。

その比率の長期的な高まりには
非正規の増加があるのは事実だが、
同時にそれは、
正規が減っていた時期と
正規が増えていた時期では
持つ意味が違っている。

個人(ミクロ)の就業選択から考えれば、
前者の状況では正社員となるチャンスが
縮減していることになるが、後者では
正規と非正規の両方の選択肢が広がっている
という解釈も可能だ。2014年を境に状況は
前者から後者へと移行している。

また経済全体の生産活動に与えるマクロ的影響
を考えると、比率も大事ではあるが
(賃金差、つまりは相対的な価値への影響など)、
むしろそれよりは、活動の生産要素となる
それぞれの「絶対数」こそが重要になる。

非正規雇用が大きく減少を続けることは
当然生産活動を停滞させるため、
早期の回復が求められるのは間違いない。
さらにその上で経済全体の活動水準が
どの程度維持できるかは、比較可能な統計の範囲内で
今世紀最多の水準まで回復していた正規雇用者数
の動向が、必ずやカギを握ることになる。

正規雇用が増え続けてきた背景には、
人手不足の基調が長期的に予想されるなかで
会社にとって欠かせない従業員を
確保したいという意図が大きかった。
現在、正規雇用者数が増えているのは
どちらかといえば相対的に年齢の高い層だ
(一方、氷河期世代を含む35~44歳では
前年同期より正社員も25万人減少)。
女性の正社員数も、2014年までは横ばい
だったのが、その後は着実に増加してきた。

長期的な見通しに基づく正社員への
企業の需要が、感染拡大の中で
どれだけ下方修正されたのか、
それとも変更は限定的なのか。

非正規雇用の深刻化への対応と併せて
正規雇用の拡大という長期的な流れを
感染症の広がるなかであっても
どの程度保持できるかが、
今後の日本経済の行方を大きく左右するだろう。