全国就業実態パネル調査2020臨時追跡調査

本日、株式会社リクルートが
「緊急事態宣言下で人々の働き方はどう変化していたのか」
(全国就業実態パネル調査2020 臨時追跡調査)
を発表。
https://www.recruit.co.jp/newsroom/2020/0827_18794.html

リクルートワークス研究所が
継続して実施している全国就業実態パネル調査の
回答者(2019年時点就業者・20~60歳)の約1万人から
緊急事態宣言下にあって
どのように働いていたのかを緊急調査したものだ。

その結果からは、これまで明らかになってこなかった
さまざまな状況が垣間見られて興味深い。

なかでもまず特筆すべきは、
やはりテレワークの実態だろう。

感染症の影響を受けて職場からテレワークを
推奨された人は15.7%だという。
この数字は、必ずしも高いとは
いえないように思う。
緊急事態宣言の期間が
長かった7都府県に限っても
21.7%にとどまる。

そのなかで
職場からの推奨の有無にかかわらず
週1日でも終日テレワーク勤務
をしていた人は
約4人に1人弱にのぼったが
(昨年12月時点では10人に1人弱)、
76.9%はまったくしなかったという。

さらにテレワークをしなかった理由をたずねると、
58.2%が職場でテレワークが認められていなかった。
正社員でも60.1%が認められていない。

対面形式の業務の多い職場では
テレワークに消極的であることは予想されるが
たとえば情報通信業ですら42.8%が認められていない。
情報通信業は、過半数がなんらかのテレワーク勤務を
していた唯一の産業だが、それでも多くがこれまで
同様通勤していたのである。

そう考えると、
緊急事態にあっても
全体的にみれば
テレワークは思うほどには
活用されていなかった、
活用されていたとしても
実のところ一部にすぎなかった
というのが
正確な実態かもしれない。

調査では
昨年12月と比べた生産性の自己評価なども
示されているが、
全体的に生産性は低下したという割合は
上昇したという割合よりも高くなっている。
ただそこには、仕事の仕方の問題よりも
業績そのものの悪化の影響も無視できない。

テレワークがまったくなかった人々よりも
テレワークの週4日以上を行っていた人のほうが
生産性が上昇したという割合は高く、確かに
一部の人にとってテレワークが生産性を上げる
ことに寄与しているようにはみえる。

ただし、テレワークをしている人であっても
生産性は低下したと回答した割合が、
日数にかかわらず
3割から4割にのぼっており、
テレワークをしなかった人で生産性が
下がったという約2割よりもむしろ多い。
テレワークによって
これまで以上に仕事がはかどった
という実感を持っている人は少ないようだ。

緊急事態宣言の解除後にも
テレワークの推奨が継続
しているという割合も15.4%にとどまる。
大学などは推奨の継続に属すると思うが
(学習・教育支援業は情報通信業に次いで
テレワーク勤務は多かった)、それでも
それは全体からみると少数派だ。

今回の調査結果をざっと見る限り、
感染症の緊急事態をきっかけに、
日本ではテレワークによる仕事が一気に主流になった
というところまでは、どうやら言えそうもないように思える。

おそらくは感染症の広がる以前に
テレワークを既に導入していたか、
少なくとも導入の検討を開始していたところでしか、
緊急事態での適用は難しかったのではないか。
制度は急にはつくれない。

全国就業実態パネル調査は、
追跡調査であるため、
今回の調査対象者の
過去および今後の状況も知ることができる。

緊急事態で過去にどのような状況にあった人々が
円滑にテレワークを導入できたかや、
テレワークの経験がどのような長期的な効果
につながるのか等、
これからも注目すべき点だろう。