● スネップが、また新しい
「レッテル」貼りにならないかと
心配です。スネップは職探しを
していないことも多いそうですが
そのために「怠けている」とみなされたり
しないのでしょうか。
スネップはたしかに職探しをしない傾向が
ありますが、それは怠惰をむさぼっている
からではありません。社会から孤立している
ことで、就職活動に必要な「情報」が入手
できなくなっていることが、職探しをむずかしく
しています。
情報社会といいますが、スネップは理由は
明確ではないものの、インターネットをあまり
使っていません。電子メールや検索を通じて
就職に必要な情報を得たり、活用するということも
少ないのです。
別の私たちの研究では、就職活動には特に
電子メールの活用が重要だという結果が得られました。
しかし、孤立していれば、電子メールをやりたく
ても、やりとりする相手がか限られていて、そのために
パーソナルな情報も入手しにくくなります。これも
「怠け」の問題とは違います。
スネップのうち、特に家族と一緒にいる家族型
は、就職を希望していない傾向も強いのですが、
それも家族から守られていることが、当面、就職
を焦らなくてもよい状況を生んでいるという「構造上」
の問題なのです。こちらも意識や性格ではありません。
ずっと一人型のスネップは、テレビを視ていたり、睡眠
時間が長い傾向はあるのですが、それも怠けてテレビ
ばかりみていたり、たくさん寝ているうちに、友だちと
会わなくなったということは考えにくいように思います。
因果関係はむしろ逆で、なんらかの理由で誰とも会わなく
なった結果、時間つぶしにもなるし、おカネもあまりかからない
テレビや睡眠が多くなってしまっている、元々好きこのんで
やっているわけではないというのが、多くの状況だろうと
解釈しています。
経済学を含む社会科学は、社会病理と戦うための学問です。
無業者の孤立が広がる現状は、食い止めるべき社会病理だと
思います。しかし、医学の病理と同様、解決すべきは、病理その
ものであり、病理を煩っている人ではないのです。病人を怠けている
から病気になったのだという責めは、多くの場合、適切ではありません。
スネップの存在が、今後、もし多くの人に知られることになって
そこに怠け者であるというレッテルが誤って広まることがあれば
それは違うのだと説明を続けることは、研究をしてきた者としての
責任だと思います。
では、レッテル貼りや誤解のおそれがiあるために、問題を指摘
することをやめるべきなのでしょうか。
私はそうは思いません。あらゆる病理の解明は、その病理の適切な
発見から始まります。多くの深刻な病理は、未だ発見すらされていない
のです。発見されて初めて、時間がかかるとしても、処方の模索が
始まるのです。
ニートのときにも、たしかに最初はいろいろな誤解や混乱もありましたが
それでもこの問題を正確に理解していた研究者や支援現場の人たちで、
ニートを怠惰の問題であると考えていた人は誰もいなかったと思います。
少なくとも私の知る限りはそうです。楽観的かもしれませんが今も
ニートを怠け者の問題と考えている人は、以前に比べると本当に少数に
なっていると考えています。
誤解や偏見は、努力と時間を通じて、解消に向かうことは可能だと信じます。
むしろ存在するにもかかわらず、あたかも存在しないかのように扱われる
「無視」ほど悲しいことはありません。
このように考えて、ニートやスネップの問題に取り組んできました。
投稿 : genda
SNEP (43)
昨日は一橋大学
経済学部でセミナーに
お招きいただきました。
そこでスネップのことを
報告し、たくさんの貴重な
コメントをいただきました。
● 家族との同居の状況
によって孤立無業を分類
することも重要ではないか。
たとえば、家族と同居しながらも
それでも家族と一緒にいないと
する一人型の状況は、特に
深刻かもしれない。
● 親の状況をもっと詳細に
調べてみてはどうか。親が就業中
であるか、親の経歴や生活状況も
子どもの孤立と関係しているかも
しれない
● やはり孤立無業と本人の健康
状況が気になる。「社会生活基本調査」
では無業者の健康状況が調査されて
いない。次回の2016年調査では無業者の
健康状況についての調査も加えることが
望ましい。
● 孤立無業の現在の生活状況だけでなく
これまでの経歴もあわせて明らかにすべきだ。
必要な対策もスネップになってしまってからだけで
なく、スネップになる可能性の大きい人の背景を
明らかにした上で、事前的・予防的な対策を講じる
べきだ。
● スネップが増えているとしたら、その背景には
産業構造の変化も影響しているのではないか。
たとえばかつては、製造業や建設業などで、一人で
コツコツやる仕事もあったのではないか。そのような
仕事がなくなってしまった結果として、他者と交流
することに困難を抱える人たちの就業機会も減って
しまったのではないか。製造業の衰退は先進国で
共通の課題であり、だとしたら孤立無業の増加は
先進国共通の課題ではないか。
● スネップが、新しいレッテル貼りにならないように
注意すべきだ。
いずれもとても重要で示唆的なコメントでした。私たち
だけでどれだけできるか、わかりませんが、つねに
心にとどめておきたいと思います。その上で無業について
の研究に参加してくれる人が増えてくれるといいなと
思います。
ありがとうございました。
SNEP (42)
スネップ(孤立無業)を通じて
お話したいと思ったことは
主に次の三つです。
(1) 働き盛りの人々が
無職になったとき、家族以外と
交流のない孤立状態に陥る傾向が
強まっていること
(2)無業者が孤立した場合、
求職活動など仕事に就こうとする
ことも弱まっていく結果、さらに無業
と孤立が深まるという悪循環が
生じていること
(3)孤立無業者になるのは、一部の特定
の人たちだけでなく、誰もがなるかもしれない
という孤立の一般化がみられること
です。これらの特徴について
なぜそのような状況が生じているのかを
データと実際に詳しい人のインタビューなどに
よって、明らかにしていく必要があります。
SNEP (41)
玄田)
若者の自立支援で一つだけはっきりしていること
があります。それは、
「自立支援は一か所では完結しない」
ということです。
10年前は他に若者支援をする機関がありませんでしたので
ネットワークを活用した支援が成り立たなかった
のですが、今は成り立ち始めています。
と前回発言されました。とても関心があるのですが
そのあたりを、具体的な事例など、もう少し教えて
いただけませんか。
井村)
ハイ、ご関心を持っていただきましてありがとうございます。
まず「自立支援は一か所で完結しない」という意味には2つ意味があります。
一つ目は、若者の自立支援で若者の自立の課題となるのは
常に社会性の獲得である、ということです。
採用などの現場では社会性のことを「コミュニケーション能力」
とよぶこともあります。
この社会性は家や学校だけでは身につけることは難しく、
社会の中でしか身につけることができません。
社会というのはどこか特定の一か所の支援機関のこと
を指すわけではありませんので、「自立支援は一か所で完結をしない」
と申し上げました。
ただし、物事にはなんでも例外があります。
若者の自立支援が特定の一か所の支援機関で成り立っている
場合もあります。それは共同生活型の若者の自立支援機関です。
今から10年以上前の若者支援のスタイルは
ほぼ、若者たちに自宅を開放して寝食を共に
して一緒に成長する共同生活型の若者支援機関でした。
スタッフも含めて他人同士が同じ釜の飯を食べることで
家でもない、学校でもない社会を創りだし
若者たちの社会性を生活の中で育む、
最強の若者自立支援です。
先週は偶然、そのような共同生活支援を
30年以上前からされておられる、
ピースフルハウスはぐれ雲の川又直さん(富山県)、
はじめ塾の和田重宏先生(神奈川県)、
ため塾の工藤定次さん(東京都)に
別々にお会いする機会がありました。
その皆さんが最近
ネットワークの活用による若者支援に関心を示しておられ、
特に工藤さんは、
「我々は一か所で1~100までやるような仕組みを作ったけれども、
諸団体との連携をこれからはしていかないといけない、それが反省点だ」
とおっしゃっておられました。
若者の自立支援に長くかかわってこられた先輩方の
深いお考えについて私は知る由もありませんが、
若者支援に関わる人と、関心を持ってくださる方が増え、
若者支援にネットワークを活用してしよう!
という時代になってきているのは確かだと思います。
二つ目は、若者支援には、
「発見」→「誘導」→「支援」→「出口」→「定着」
という5原則があるのですが、
若者を発見し支援機関に誘導する役割をする方、
支援した方を就職など出口につないで、
定着の支援をする方、
という役割分担が成り立ち始めています。
具体的にどう成り立ち始めているのか、
の一例ですが、たとえば、やんちゃ系で更生保護を必要とする
少年が就労支援を求めていたとします。
関わっているのは、家族以外に保護観察官と保護司さんが
主になっています。
その保護司さんが支援情報の収集や就労支援を求めて、
少年の代わりに支援機関に電話をするときに、
支援機関の方から
「少年とはどういうご関係で連絡をされていらっしゃるのですか?」
と聞かれてしまうと、たいへん困るそうです。
保護司です、とか、保護観察官です、と少年との関係性を名乗ってしまうと、
更生のチャレンジ途中であるその少年に関するセンシティブな情報が
漏れてしまうことになります。
それが理由で他機関との連携は必要だとわかっていてもつながりづらい。
もしもそういうニーズがあったとしたら、それぞれのお役目、お立場や
組織の在り方、文脈なども踏まえて何が、どうできるか、を
若者の自立支援機関は泥臭く考えていき
「発見」→「誘導」→「支援」の連携を成り立たせていきます。
たとえば、進路未決定者が多い普通高校の担任の先生や進路担当部長さんが、
学校求人も減ってきて、生徒の就職がなかなか決まらない、
しかも特別な支援を必要とするような生徒も多い中で
卒業の時期が迫ってきている、他機関との連携が必要かもしれない、
とうっすらと思っていたとします。
他にも、中学校の先生が、不登校の生徒をクラスに3人も抱えてもいたら、
それぞれの個別対応をしたいと思っていてもとても回らない。
どこかとつながることができれば……と一瞬考えたとします。
これらのことなどに対しても、泥臭く、では何がどうなったら、
その連携を取ることが可能になるのか、を
様々なステークスホルダー(関係者)とコミュニケーションを取りながら、
探っていきます。うまくいけば、コストがほとんどかからず、
それぞれの専門性同士が響きあい、みんなが楽になり、成長しあうという関係が
生まれます。
長くなっていてスミマセン。。。
これらのネットワークを活用した支援についての詳しい内容につきましては、
2013年1月末に開かれる内閣府主催の、NPO等の民間団体において
青少年支援に当たる職員合宿研修会でもお話させていただく予定ですので、
より深くご興味のある方は、
内閣府青少年支援担当のところ
(内閣府政策統括官(共生社会政策担当))に
お問い合わせいただけましたら嬉しいです。
http://www8.cao.go.jp/souki/index.html
また、大阪の若者自立支援の老舗、淡路プラッツで先日創刊されました
『ゆうほどうマガジン』にも少し上記に関連することを
書かせていただいておりますのでご興味のある方は
お問い合わせいただけましたら嬉しいです。
http://awajiplatz.web.fc2.com/staff_book.html
井村良英
SNEP (40)
無業から抜け出すための
良い方法があります。
まず名刺をつくることです。
そこに自分の名前と住所
そして自分の会社もしくは
自分の職業を明記するの
です。
そんな実在しない会社を
つくってもいいの?
大丈夫です。その会社や
職業を始めるための準備、
その最初が名刺をつくる
ということです。
無業者には、「失業者」、正確
には完全失業者と「非労働力」
の二種類があることを以前お話し
しました。
仕事につくための求職活動をしていれば
失業者、そうでなければ非労働力という
ことになります。それにしても非労働力と
いうのは、あらためてすごい言葉だと
思います。ニートは、非労働力の一部です。
実は、ハローワークなどに通って
求職活動をすることの他に、開業の準備を
している場合でも、失業者に含まれます。
つまりニート状態にあった人が、自分で会社
をつくろうとすれば、非労働力から失業者に
かわる、つまりはニートから卒業ということに
なるのです!
名刺をつくって、実際になんらかの自分だけの
仕事を始める準備に入れば、それは履歴書にも
その期間「事業を開業するための準備」と記入
することができます。履歴書の空白もこれで
埋まります。
そして名刺をつくるだけでなく、実際に自分の
会社をつくっても、いいのです。昔に比べれば
会社をつくることの手続きや費用はグンと安く
なっているはずです。
会社をつくって収入や売り上げがなくても
心配ご無用。世の中には赤字の会社など
いくらでもあります。赤字を出していないだけ
立派です。
なんだか鼻をつままれた話のように感じる
方もいらっしゃるかもしれませんが、私は
意外に本気です。日本の働くことの最大の
問題は、自分で自分のボスになるという
気概をもって動く人が1980年代初等から
減少を続けていることだというのが持論です。
雇用者は実のところ、減っているわけではなく、
増え続けています。非正規雇用が増えている
から?と思われるかもしれませんが、雇用の
定めがない、もしくは一年を超える雇用契約の
常用雇用も2008年までは増えていたのです。
大きく減少しているのは自営業です。1950年代
には1000万人を超えていた自営業も2009年には
600万人を切りました。自営業の一部が大きく成長
することで、経済全体に雇用機会を作り出します。
そのシード(種)となる自分で事業を興そうとする
人がたくさん出てこない限り、雇用の持続的な
回復もありません。
まず名刺をつくる。そのために自分の会社の
名前を考えましょう。肩書きも自由です。私の
考えるスネップやニートを含む無業対策の一つ
です。