玄田)
この10年くらいで若者自立支援の業界も
大きく変わってきているように思います。
一方で、変わらずやり続けていることも
あると思います。
最近の若者自立支援の世界について、
井村さんはどのように感じていますか。
井村)
玄田先生、ご質問いただきましてありがとうございます。
まだ13年しかこの仕事をしていない私が先生のご質問に
お答えできるのか甚(はなは)だ心もとないのですが
頑張ってみます(笑)。
10年前の2002年から若者自立支援の世界で一番変わったと
現場の人間として実感できることは、若者の自立に関わる人が
急増したことだと思います。
「若者支援の話ができる人が急増した」と支援者の立場から
言えると思いますし、「支援を選択できるようになった」と
若者の立場からも言えると思います。これは本当に大きい
ことです。
13年前の1999年、日本全国で若者支援をされている方を調べ、
訪問して回ったことがあるのですが、当時は20団体あるかないか
くらいでした。
1999年はNPO法が設立された年でしたので
NPO法人として活動しているところもなく、
団体のかたちは任意団体とか、有限会社とか、個人事業主とか様々で、
世間的にも、正直マイナーな活動だったと思います。
誤解を恐れずに言わしていただくと、
世間的には全く注目されていなかったか、
一部の(心ある)変わった方々がされているよくわからない活動、
とみなされていたと思います。
実際、私も情報を求めるのにはずいぶん苦労しました。
当時、若者支援をしている団体の情報が載った書籍は
「個性的な人生を歩んでいる人」として取り上げられ、
書店では「オルタナティブライフコーナー」にあった
ことを今でもおぼえています。
今は、インターネットなどで「若者支援」と情報検索をすると
0.22秒で250万件以上ヒットをします(笑)。
10年前の若者は就職や自立ができないのは
本人の努力不足だ、
と思われていた節はありましたし、
若者が就職できないのは努力不足だから
自衛隊に行かせて鍛え上げろ、
という発言が社会的な立場のある方々から公言されていたような
時代でもありました。
今は、そういう発言をされておられた方が
若者支援に関する予算を執行されたり、
シンポジウムに出られたりして、
少子高齢化を迎える日本社会で
若者は次世代を担う大切な存在であるとして、
社会的に包摂していくための活動や発言を行われています。
また12,3年前には、
ひきこもりの方が起こした事件が大きく報道され、
「ひきこもりの人は犯罪者予備軍なのではないか」
と訝(いぶか)しがられていました。
実は犯罪者予備軍でないひきこもりや今でいうニート
の若者などがほとんどであることは、
保健師さんやケースワーカーさん、児童相談所の職員さん
の方々などや、そのご家族の方々といった一部の方々には
よく知られている状況でしたが、
自立を望む若者にどのように支援をしたらいいのか
誰もわかっていなかった時代であったともいえると思います。
今は『地域若者サポートステーション』
(15歳~39歳までの若者の職業的自立を支える厚生労働省
委託事業。各地の若者支援を行うNPOなどが受託している)が
全国115か所に設置され、ハローワーク一歩手前の方に対する
相談援助が地域でできるようになったり、
また国だけでなく、市町村単位の一部の自治体でも
独自に若者支援を行われるようになったりと、
社会全体の問題として、若者の自立に関わる方々が
増えていることが大きく変わったことだと思います。
変わらずやり続けていること。
目の前にいらっしゃる方々に
一生懸命知恵を絞りながら関わるということは、
現場にいらっしゃるみなさん、私も
変わらずやり続けていると思います。
支援のテクニカルなところで
変わったところと言えば、
「ネットワークを活用した支援」
が成り立ち始めた
ということです。
若者の自立支援で一つだけはっきりしていること
があります。それは、
「自立支援は一か所では完結しない」
ということです。
これは変わりません。
10年前は他に若者支援をする機関がありませんでしたので
ネットワークを活用した支援が成り立たなかった
のですが、今は成り立ち始めています。
若者以外でも社会に暮らすものにとって、
支え手は多ければ多いほどいいと思います。
井村良英
投稿 : genda
SNEP (38)
就職支援の相談業務をされている方
からもお便りをいただきました。
お話からは、ひとすじ縄ではいかない現実が
見え隠れします。しかし同時に、広く支援現場で
働いていらっしゃる方には、少なからず共感いただける
内容だとも感じました。
それではご本人の許可を得てお伝えします。
○
SNEP・・・
そもそも私がお会いしている方々が
該当しているか?と「ん・・・・」と感じながらも
毎日、玄田先生のゲンダラヂオを拝読しながら
自問自答している時間がありました。
「無業」のほうが、実感値と共にイメージが付きやすいです。
まず、本日(注:6月20日・SNEP (36))のゲンダラヂオから
● 社会から孤立しているスネップが働けるようになるのでしょうか?
に対しては、「働けるようになる!!」私も同感です。
木村周先生の仰っている中で大好きな言葉が有ります。
「いつでも どこでも 誰でもが学べ やり直しがきく社会」の実現
岩舩展子先生((金属バット事件の頃からカウンセリングに
かかわり、主に家族療法などの幅広く実務家として経験値の高い先生です)も
「馬を水辺に連れて行くことは出来ても水を飲ませる事は出来ない」
とおっしゃいます。
それは自己責任論ではなく、本人次第、
本人が自分で決めて動かない限り
他人(家族も含め第三者(本人以外))は何も出来ない
とも実感しています。
井村さんの言葉の中にもありましたが
私の考えとしても
自助 共助 (左記を試みてそれでも難しければ) 公助
自分で考えて何とか動き始めることで、共同作業 人との絆?が成立
するのかな・・・と。
ちなみに、
こちらにいらした時点で、「仕事を探す意思」はあることになり
「無業(ニート)」では、定義上はなくなるのでしょうが
「無業から抜け出そうとする人」「無業にしないこと」は
常日頃意識して対応をしています。
誰がいつなっても不思議はない時代です。
ゲンダラヂオの中にも書かれていたように
数年前から 年老いた両親を介護するために離職し
数年経過した方々にお会いすることが多くなりました。
働き盛りの40代、50代の男性もいますし
ときには20代の男性もいます。
比較的、持ち家の実家暮らしで未婚
親を見るということを離職の言い訳
にしているのかしら?と感じることもあります。
口々に、
「親の年金が無くなったら・・」
「死ぬしかないか・・・」等
他力本願かぁと感じることも残念ながらあります。
女性のほうは、働きながら介護をしている方が多い
ように感じます。
それから若年者で、早期離職をした一人暮らしの方々も
来窓されます。
・ハードワークで心と体が疲れた
・整理の方法がわからなくなり自己効力感が低下している
・本人の理想と現実のギャップが乖離
・メンタル面が弱く心が疲れている
・経済的な問題を抱えている
・家族との関係から心身ともに自立出来ない(発達課題有りの場合)
・生理的欲求 食事も満足に取れずに栄養不足から思考能力低下
・家が無い場合
等々
生育歴は、本人が選択出来ず、与えられた環境により
残酷だなぁ・・・と感じることも多々あります。
その方の状態によって、支援の内容も全く異なります。
だからといって、支援者側が、一緒に同化することも
出来ないししてはいけないことだと自制することも必要です
(メサイヤコンプレックス等共依存関係になると危険です。)
故に、アウトリーチ的な方法は救える可能性もあるけれど、
依存性を高めて自立を阻害しないのかな?
とも感じてしまいました。
支援者の負担も相当高くなると思われます。
私も相談業務に携わった初年度は心身ともに壊れたので
以後コントロールをしてバランスを保つように心がけています。
それだけ、
「働くこと」=人の生涯を左右する可能性に携わることは
重いことであり、
相談員が抱えるには負荷が高く限界も有り
相当な覚悟を持って対峙することも有り
相談者を支援する側を支援する仕組みも
必要だと感じています。
私のほぼ同期で相談業務10年目のある男性の言葉です
「最近、自分のやっていることが、人の役に立つことでは
無いような気がしてどんどん気持ちが冷めてくる」
ただ
「働きたい」・・・本気で思っている方は働けると思います。
全力で支援が出来る体制も整っている場もあります。
本人と支援をする側が、お互いに自分(相手)の育つ(育てる)力を
信じることが出来るか、だと思います。
ときには、思い込みも大切です。
イメージコントロールをすることで
採用まで何人も導けた例があります。
一人ひとりの想いや価値観が、
自分のため だけではなく、人のために・・・と
「隣人を愛する」ことを良しとする世の中になると
「無縁社会」も無いのになぁと祈りたくなります。
とりとめがなさ過ぎますね。
自分の整理のために書き連ねてみました。
○
本気で「働きたい」と思っているか
信頼関係が築けるか
時折おとずれるある種の
「空しさ」といかにつきあうか
三番目の点については、以前
富山の川又直さんが言っていた
支援で必要なのは
「いいことしてると思わないこと」
だというのを、思い出しました。
いろいろ考えさせられる貴重な
お話でした。
ありがとうございました。
SNEP (37)
私は、個人的には
一人でいるということが
それほど嫌いではありません。
むしろ好きなほうだと思います。
私は、いまだに携帯電話を
持ちませんが、その理由も
つきつめると、一人でいられる
時間、一人でいられる自由を
得たいと、どこかで思っているから
かもしれません。
仕事で旅をすると、けっこう
一人で出歩くことが好きです。
会議中、ずっと関係者だけで
ホテルで食事をしている人などを
みると、なんだかもったいないなと
思ったりします。
一人で呑みに歩くと、むかしは目の
やり場とかに困っていましたが、最近は
ただぼんやりしていることに、なれて
きました。いい意味でも、そうでなくても
一人の時間に、いろいろ考えることが
多いように思います。
私ではなく、誰かがスネップについて語るのを
知ったとしたら
一人で、家族だけで、多いに結構じゃないか
と思ったかもしれません。
しかし、これは希望学で学んだことでもありますが
ずっと一人でいることは、希望を失わせることに
つながります。すると、今度は、希望ってないと
ダメなのかということになりますが。でも希望が
あってこそ、失望もできる、そして失望を経た上で
新たな希望に出会うといった、自分だけの物語も
生まれます。
希望はあればよいとか、希望とはつねに
すばらしいものだとは、私は思いませんが
希望は何かを動かす原動力であることは
まちがいないのだと思います。
一人でいる、沈思黙考することはとても
大事だと思いますが、そればかりになって
しまうことも、さみしいことなのだと感じます。
一人で呑むのも好きですし、だからこそ
たまに仲間と会って、ばか笑いしながら
ダラダラ呑むのも好きです。
なんだか、今日はスネップの話しから
それてしまいました。
SNEP (36)
● 社会から孤立しているスネップが
働けるようになるのでしょうか。
十分に可能だと思います。スネップの
なかには、人付き合いがあまり得意
ではないという人もいるかもしれません。
けれど、その多くはけっして生まれもって
変えられないものではなく、経験を通じて
変えていくことができるものです。
私の知るかぎり、若者自立支援を的確に
行っている人たちは、その経験づくりが
とても上手なようにみえます。地域や
会社の協力を得ながら、少しずつ人と
交わりながら、働く経験を積み増していく
のです。
この10年くらい「コミュニケーションスキル」
といった言葉をよく聞くようになりました。
就職には不可欠だとも言われています。
ただ、みているとコミュニケーションスキル
を、少し難しく考え過ぎているようにも
思えなくもありません。論理的・説得的に
話をしたりとか、英語を縦横無尽に駆使
できることが、コミュニケーションスキルだ
とは、私は思いません。
むしろ「わからないなりになんとかする」
とか「わからなくてもわかろうとする」こと
などが、大切とされているコミュニケ―ション
スキルのように思います。それは経験を
通じてできるようになるものだと思います。
それに仕事のなかには、周りとのかかわり
が密接なものから、比較的ひとりでもできる
ものまであります。状況に応じて、すこしずつ
人とのかかわりを持っていけばよいように
思います。
正社員の仕事を最初から目指さなくても
いいと思います。あせらず段階を一歩づつ
進んでいけば、必ず未来は開けると
確信しています。
SNEP (35)
● やはりどうして孤立無業が
増えたのかが、気になります。
最初に予想したのは、高齢化に
よる自宅介護の影響でした。
介護を要する必要から働くことが
ままならず、被介護者のみならず
介護をする人も外出すらできにくく
なり、社会的に孤立しているという
ものです。
調べてみると、自宅に要介護者の
いるスネップは、1996年が2.3万人、
2001年が5.7万人、2006年が6.4万人
と、たしかに増加傾向にあります。
スネップ全体に占める割合も
3.8%⇒7.0%⇒6.0%と増えている
のも事実です。
ただ、一方で自宅に要介護者がいる
スネップはそもそもそれほど多くなく、
10年間の45万人スネップ増加のうち、
4.1万人の増加を要介護が占める程度
です。
その意味では、要介護の増加がスネップ
増加の主な要因であるとは、言いにくい
というのが、率直なところです。
ただし、スネップに限らず、自宅に要介護
者がいることは、無業者が求職活動をする
ことの阻害要因であることは、統計的にも
明らかです。
もし介護保険制度が成立していなければ、
要介護が就業困難に与える影響はもっと
大きかったと思いますが、さらに自宅に
介護を抱えている人の就業に対して、どのような
支援が必要かは、スネップとは別に検討が
求められていると思います。
次に増加の背景として考えたのは、長期失業者
の増加の影響でした。一年以上の長期にわたり
失業を続けているうちに、社会とのつながりを失い
働くことを断念する傾向も強まるかもしれません。
ただ一年以上の長期失業者が最も増えたのは
2003年の113万人です。その後は2009年、2010年に
再び急増するまで、長期失業者は減少傾向にあった
のです。
1996年から2001年のスネップ増加には長期失業の
増加が影響しているかもしれませんが、2001年から
2006年の増加については、それではうまく説明が
つかないのです。
だとすれば、何が原因なのか。
スネップになりやすいのは、男性、(相対的)高齢者、
そして非進学者といった傾向があります。ただ、
変化をみてみると、むしろ、女性、20代前半、大学などへの
進学者ほど、無業者に占めるスネップの割合はより
増加しているのです。
以前はスネップになりにくかった人でも
スネップになる人が増えている。
これを私は『孤立無業の一般化』もしくは
『孤立無業の大衆化』と呼びたいと思います。
なぜ孤立無業の一般化が生じているのか、
その原因は今のところ不明です。この点を
解明するのが、今後の重要なテーマの一つ
です。