2006年に実施された
社会生活基本調査では
インターネットの利用状況が
詳しくたずねられています。
スネップは、人と直接接触
することがない代わりに、
インターネットを通じて
つながっていることも
多いのではないかと
思われるかもしれません。
しかしながら、過去一年間
にインターネットを利用しなかった
と答える確率は、スネップは
むしろ高くなっていました。
特に家族とだけ一緒にいる
家族型のスネップほど
インターネットを利用しない
傾向が強く表われていました。
YouTubeの開始が2005年、
ニコニコ生放送が2007年からと
今は状況が違うかもしれませんが
少なくとも2006年の時点ではスネップが
特別にインターネットにはまっている
とはいえません。
インターネットを利用した
情報の検索や入手について
週4日以上行っているという
割合は、若干ですが、ずっと
一人の一人型スネップで
やや多いのは事実です。
具体的には週4日以上
情報検索をしているのは
無業全体で19%、
スネップ全体で20%、
一人型スネップで23%
といった具合です。スネップが
情報検索に積極的だとしても
ごくわずかな違いしかありません。
むしろ一方で、まったく
ネットによる情報検索・入手を
しないという割合が
無業全体で54%、
スネップ全体で58%、
一人型で50%
となっています。
あわせて
パソコンゲームやテレビゲームなども
むしろスネップはあまりやっていない
ようです。特に過去一年に
スポーツ、旅行、ボランティアなどを
一切していないスネップほど、
パソコンゲームなど
をしない傾向が強く見られました。
ネット中毒、ネット依存症が
スネップ増加の原因とは
いえないと私は思います。
2012年5月
SNEP (10)
スネップは、
1996年の35万人から
2006年には107万人へと、
わずか10年で3倍も
急拡大しました。
では、どのような特徴が
その増加の背景に
あるのでしょうか。
スネップになりやすい無業者として
男性のほうが女性よりなりやすい
30代以上のほうが20代よりなりやすい
高校中退者など教育機会が十分でない
人ほどなりやすい
といった事実があることを指摘しました。
一方で、無業者に占めるスネップの割合を
みると、こんなこともわかったのです。
男性に比べて女性の無業者のスネップ割合が
急速に高まっている
20代前半の若年無業者のうち、スネップの割合が
高まっている
大学卒の無業者のうち、スネップの割合が
高まっている。
つまりは、どちらかというと
スネップになりにくい無業者たちのなかでこそ
孤立状態にある人が増えているようなのです。
以前に、特段におカネ持ちでもなく、一方で
特段に困窮しているわけでもない、普通の
家庭からスネップは生まれているということを
述べました。
ここでもやはり、スネップは一部の人たちに
限られた現象から、性別、年齢、学歴の違いを
超えて、誰でもなるかもしれない現象に
なりつつあることがわかります。
SNEP (9)
では、本人が治療や療養をしていない
として、家族はどうなのでしょうか。
家族のなかに介護を要する人たちが
いて、そのケアに忙殺される結果として
ずっと一人か、家族とだけか、
つまりはスネップに
なっているのかもしれない。
ところが、
統計分析からは
自宅に要介護者が家族に
いる人ほど、スネップに
なりやすいという傾向は
みられませんでした。
たしかに家族の介護に
忙しく、社会とつながることが
難しい面もあるかもしれません。
しかし、その一方で、介護される
家族がいるということが、支援者の
輪を広げ、それに加わり、社会との
つながりを広げていく面もあるのでは
ないでしょうか。
本人の健康に不安があったり
家族が要介護であるために
スネップになりやすい
「わけではない」!
だとすれば、孤立化の
原因は何なのか。
それをみんなで探していきませんか
ということが、
スネップを提起した
一番の理由です。
SNEP (8)
スネップの人たちは、
病気や怪我を抱えていることが
多いのではないか。
そう思う方もいるかもしれません。
いわゆるメンタル問題を含めて
病気や怪我のために外出が困難に
なったり、人と会うことが難しくなる結果
スネップ状態に陥っているのかもしれない。
社会生活基本調査のうち
最新に行われた2011年の調査では、
健康状態についての設問があります。
ところが匿名データが提供されている2006年
調査では、健康の設問が含まれていません。
そこでかわりに、調査された2日間のうち
治療や療養のための時間があるかどうかに
注目しました。
しかし実際、統計分析をしてみると、
治療・療養の時間がある人ほど
スネップになりやすいという傾向は
みられませんでした。
むしろどちらかといえば、治療や療養
の時間がある人ほど、スネップになりにくい、
つまりは誰かと交流しやすくなっているという
傾向すらありました。
ちなみに、細かいことですが、お医者さんや看護師さん
など、仕事上の行為として接触している場合は、
「一緒にいた」という交流には含まないことになっています。
それでも、治療や療養をして、健康になりたい、
社会に復帰したいという思いや行動があることは
それを応援してくれる友人や知人とのつながりを
生みやすいのかもしれません。
それに問題は、健康でなくても、いろいろな理由で
治療や療養をしないまま、無業状態にある人なの
かもしれません。
健康とスネップの関係については、2011年の
社会生活基本調査が利用可能になった時点で
ぜひともあらためて検討してみたい点です。
SNEP (7)
金環日食の直後、
ラジオをつけたら、
ノラ・ジョーンズの
サンライズが流れていた。
そのすぐ後に、
キム・カーンズの
ベティ・デービスの瞳が
流れた。こっちの
バカバカしい感じが
好きだ。
「みえた」「みえた」と
盛んだったけれど、
不運にも雨や雲でみえなかった
子どもたちもたくさんいることを
考えると、自然や確率そのものに
もう少し思いをはせるということでも
よかったような気がするけど。
○
スネップへのなりやすさについて
思いがけない発見がありました。
家庭の経済状況です。
ニートの場合、バブル経済が大きく
崩壊する以前の1990年代前半には
経済的に余裕のある家庭の若者ほど
ニートになりやすい傾向がありました。
所得に余裕のある分、無理して働かなく
てもよいと、本人も親も考えることが
できました。これを経済学では、
労働供給の所得効果と呼びます。
それがバブル経済の崩壊と経済停滞の
長期化にあわせて、所得効果が弱まって
いきます。つまり、以前とは反対に、経済的に
余裕のない家庭の若者が無業になったとき、
もう仕事につくことの希望を持たなくなり、
ニートになる確率が高くなっていたのです。
経済的に貧しい場合ほど、進学をするのが
難しかったり、仕事につくための情報やノウハウが
得いにくいということがあったのかもしれません。
このようにニートには、貧困問題が大きく影を
落としていました。
それに対して、スネップへのなりやすさの特徴の一つは、
それが、家庭の収入とは基本的に無関係だということです。
極端に所得の低い場合や所得の高い場合などをのぞき、
どのような家庭からでもスネップ、つまりは孤立無業は
発生していたのです。
収入ではなく、家の広さ(部屋数)の関係もみてみましたが
ごく平均的な部屋数の家から孤立無業が生まれる確率は
一番高くなっていました。
社会から孤立するということには、貧困問題だけでなく
何か別の大きな力が働いているのかもしれません。最近
中流の没落といったことがいわれたりしますが、案外
誰でもスネップになるかもしれないということと
どこかで関係しているのかもしれません。
その何か別の力とは何か。
データ分析だけではわからないものかもしれません。
そこには、たとえば就職支援や若者の自立支援現場
にいる人たちが、大事なヒントをつかんでいるような
気がしています。