大学では
研究所に属している。
授業も担当しているが
受講しているのは
もっぱら大学院生となる。
学部を卒業して
大学院に入ってから
2年目もしくは3年目の
大学院生にとって
最大の課題は
修士論文を提出し
修士号の学位を取得することだ。
修士論文の提出は
だいたい年明け直後くらいだろう。
これまでたくさんの
修士論文に挑む大学院生の姿を見てきたが、
勝負は夏、特に夏休みになる。
夏を制するものは受験を制す
ようだが、
夏を制するものは学位も制す
のだ。
修士論文に限らず、
博士論文もそうなのだけれど、
審査員の一人となった場合、
評価で最も重視するのは、
それが独創的であるかどうか
ということになる。
では、
独創的(オリジナル)であるとは
どういうことなのか。
Original は、Newとは違う。
Newは必ず陳腐化する。すぐに追いつかれる。
それに比べて簡単な追随を許さない圧倒的な
ものがあるのが、本当のOriginalというものだろう。
それを乗り越えることには
一定の価値があるというのが
知る人ぞ知るという状態なのだが、
そのためには、膨大な時間と労力、
そして忍耐を要することも同時にわかっている。
だから、これまで多くが足を踏み入れることが
できないままでいた。それを地道な努力と
ちょっとした工夫もあって、コツコツ積み重ねた
結果、一つの境地に到達したとき、そこには
なにがしかのOriginalが含まれている。
Originalに運よく到達できた人々は、
不幸にもその域まで進むことができなかった
先人が何にどれだけ奮闘してきたのかもよく理解できる。
そのためOriginalには、過去への深いRespectが
必ず伴っている。
Originalの実現には、時間がかかると同時に
しんどいプロセスであるぶん、
ときには何も考えず、ただただ
一定のリズム(Rhythm)に乗ってやり続けることも求められる。
修士論文でOriginalにたどり着くためには、
勝負となる秋に、論文を書くことのリズムを
すっかりに身に付けていなければならない。
だから夏が勝負になるのだ。
今年は大学に行って資料やデータなどを集めることに
いろいろと制約があったり、
調査のために現地を直接たずねることができないなど、
多くの困難のなかで、大学院生は論文作成に挑んでいる
ことと思う。この夏を地道な努力と小さな工夫で
活かしてほしいと思っている。