2020年5月の労働市場(3)

2020年4月に労働市場に
起こった歴史的な変化として
非労働力人口の増加、
休業者の増加とならんで、
短時間就業への一斉シフトを
指摘してきた。
https://genda-radio.com/archives/date/2020/05/31

このうち
非労働力人口のなかには
徐々に労働力化に向かい始める動きもみられ、
休業者も依然として多いものの
およそ半分弱は仕事に復帰する動きを確認した。

では残った短時間就業の一斉シフトは
その後5月になってどうなっていたのだろうか。

2019年4月には、非農林業従事者者のうち、
月末一週間に1~34時間就業の雇用者(以下、短時間雇用者)は
3月より887万人増と大きく拡大していた。
新年度のパート・アルバイトの採用にも
急ブレーキがかかっていたことを考えると、
短時間雇用者がここまで増えたのは驚異的であった。

このような短時間雇用への一斉シフトをもたらしたのは、
正社員を含む一般時間就業からの移行だった。
非農林業で週35時間以上就業する雇用者の減少幅は、
前月に比べて1289万人、対前年同月でも198万人と、
驚くべき減少を示していた。

それが5月になると、短時間雇用者は前月より823万人減少し、
同時にかつ一般時間就業者は983万人増加している。
まさに短時間就業から一般時間就業への
明確な「より戻し」が生じていたことになる。

4月に生じた短時間シフトの多くは、緊急事態宣言による
休業実施や自粛要請を受けたものと予想されるが
その背景としては、元々大型連休によって就業時間を
短くすることが、事前に組み込まれていたことで
スムーズに実施できた面もあった。

そのため大型連休が終わり、緊急事態宣言も解除されれば、
おのずと通常の労働時間へと戻る人々も多くなったものと
考えられる。

ただし短時間シフトには、一時的な連休の影響だけではなく、
働き方改革の大号令以降続いてきた、短時間で生産性を上げる
ための取り組みの本格実施や加速化も背景として機能していた
可能性がある。だとすれば今回を契機に労働時間の短縮が
定着する動きも一部で広がるかもしれない。

総務省統計局「労働力調査」からは、
月末一週間の就業時間とならんで
一か月の就業日数と就業時間も把握できるが、
就業者全体について、
今年5月の平均月間就業日数は、
昨年同月に比べて1.7日減少し、
4月の0.8日縮減よりも減少幅はさらに拡大している。
同様に平均月間就業時間も
4月の対前年5.8時間減に比べ
5月には16.6時間減と、短縮幅はより大きくなっている。

この労働時間の短縮の継続は
正規の職員・従業員、いわゆる正社員でも顕著にみられる。
正社員では、5月に平均月間就業日数が
対前年同月1.8日減、平均月間就業時間が20.8時間減と、
それぞれ4月の0.6日減、9.1時間減に比べて
削減幅は拡大していることがわかる。

その際問題は、5月以降、就業規則に定められた
通常の就業時間への復帰と並行して、
そのなかでも就業時間を本当に必要な時間だけに
集中することで、結果的に時間あたりの労働生産性が
向上しているかどうかだろう。その状況は今回の
公表結果からは把握することができず、今後の検証に
委ねられることになる。

感染症拡大への対応経験を一つの契機として、
在宅勤務やオンライン利用の業務も
広がりつつあるが、それが生活時間や労働時間の活用見直し
を求めることになって、望むらくは、
働きやすさや働きがいの向上につながることだろう。

一方で、週60時間以上勤務などの長時間労働は、
前年同月よりは少ないものの、こちらも先月よりは
確実に増えつつある。誰かの業務効率化が、
別の誰かへの負担のしわ寄せを前提とする
のであれば、それは本末転倒である。

ただオンラインや在宅勤務などの仕事の個別化は、
それらのしわ寄せの発生を見えにくくすることにも、
同時に注意が必要になる。その調整は、一義的には
管理職である上司と人事担当者の役割であるが、
見えにくい構造があるぶん、働く本人も適宜
必要な声(ボイス)を挙げることも求められる。

新たに望ましい仕事の仕方と
業務の公正かつ適切な配分について
現在はまだその模索の途中過程であり、
過渡期にあるといえるのだろう。