七月

八月は
今日で終わりだけれど、
明日朝には
七月分の
労働力調査と
職業安定業務統計が
発表される。

陽性者と重症者が
急拡大した先月末の状況であり、
先行きの雇用見通しが
厳しくなった事業所も
多かったかもしれない。

明日は
今後の就業情勢や雇用政策など
を考える上でも
重要な一日になるだろう。

今日の一曲。
ムーンライダーズ「くれない埠頭」
https://www.youtube.com/watch?v=Fpwg5AtcGMU

https://www.youtube.com/watch?v=ur9-1WVBuZ8

 

結果

28日、
安倍首相は
辞任表明の記者会見のなかで
政権の自己評価の一つとして
就業者数の増加を挙げた。

実際、
再び首相の座についた
2012年から
(正確には2012年12月)
感染症拡大前の
2019年にかけて
全体の就業者数は
444万人増加している。

それまでの就業者数の
ピークであった1997年からは
277万人減少していたことを
考えると、
いわゆる「失われた10年」と
呼ばれた時期の就業機会の
喪失を一気に取り戻した計算になる。

444万人の就業者増加のうち、
なかでも女性では340万人、
65歳以上の高齢者が296万人
の増加となっており、
女性と高齢者の就業拡大が
広がったのも2012年からの特徴である。

6度の選挙にすべて勝利したのにも
抽象的な政治理念よりは、
まずは経済と雇用の回復という
選挙権者の多くの生活に直結する
テーマを掲げたことが功を奏した
と言われているようだが、事実だろう。

ただこれらの就業増加を
本当に安倍政権による成果であると
評価できるだろうか。

記者会見でも、
政治は「結果」がすべてだと
首相は述べていた。たしかに
444万人の就業増加は、
結果的に事実だとしても、
その理由は別のところにある
可能性はないだろうか。

2012年から19年にかけて
就業機会が大きく拡大したのには
少なくとも4つの理由が考えられる
ように思う。

第一は、首相就任と同時に
打ち出された経済政策の効果だ。

当初「3本の矢」という指針と
新総裁を迎えた日本銀行との連携のもとに
驚くような金融財政政策が実施された。
その結果、それまでの円高傾向が
修正されることで輸出に改善が見られるなど
経済状況は確かに好転が見られた。

あわせてリーマンショック後の2009年を底に
回復傾向にあった有効求人倍率の上昇も
軌道に乗り、2014年以降は1倍を超え続けてきた。
経済政策による求人拡大の結果としての
就業増加は、アベノミクスによるものと
評価するのが適切だろう。

ただ、第二の理由として、
政策が効果を持ったとしても
重要なのは雇用政策だった可能性がある。

たとえば高齢者の就業機会拡大には、
政権期間中の2013年度より施行された、
65歳までの雇用機会の確保を義務化する
高齢者雇用安定法の影響が大きかったことは
まちがいないだろう。法改正は65歳までの
雇用を拡大したのみならず、65歳以降も
働くことを希望する高齢者にとっての
貴重な就業の架け橋となった。

しかしこの法改正はすべて
2012年までの多くの関係者の努力の賜物である。
実現に向けた労使による粘り強く精力的な
議論と行政による慎重な法制度の設計は、
すべて第二次安倍政権成立前のものである。
その意味で高齢者の就業拡大は、文字通り
政権期間中に結実した結果であると考えるのが
自然だ。
(※ 70歳までの就業機会の確保を
努力義務とする改正は来年度から施行される。)

同様に女性の就業機会の拡大には、
仕事と子育ての両立支援に向けた雇用政策が
効果を持った可能性がある。両立支援のための
育児・介護休業法の改正の施行は2010年であり、
こちらも安倍政権によるものとは考えられず、
まさに結果アピールの機会を政権が享受した
一例と言える。
(※ 育児・介護休業法は、2009年以降、
政権期間中の2016、17年にも改正が行われている。)

(※※ もう一つ安倍政権下での雇用政策では
「生産性上昇」に資するものかが問われることが
増えたのも特徴である。それを労働市場の効率性
改善の契機とみなすか、さまざま理由で生産性を
上げられない(最優先できない)企業や人々の
切り捨てとみなすかは、雇用政策の役割や意義
として議論の分かれるところに思う。)

第三の理由としては、
政策とは別に
2010年代になり
人口減少と高齢化という長期的な
人口変動の影響を見ることも可能である。

2012年から19年には
若年人口は本格的な減少モードに突入した。
2011年に人口はピークを迎え、
それ以降なかでも25~39歳は
461万人もの大幅な減少を記録した。

この若年人口そのものの減少が
それまで数々の制約下にあった
女性の就業にとってチャンスに
なったことは大いに考えられる。
若年女性の貢献なくしては
仕事がはっきりと回らなくなったのが
2010年代だった。

65歳以上の高齢者人口も
2011年以降615万人と大きく増えたが
そのなかには健康で働く希望を持った
人々は少なくなかっただろう。
これらの就業可能な高齢者が
非正規雇用を中心とした求人拡大の
大きな受け皿となってきた。

2014年以降は、非正規雇用のみでなく
正規雇用も増大していったが、
そこには多くの企業の業績改善と
あわせて人口減少が見込まれるなかで
人材を確保したいという企業の意図も
少なくなかったように思う。

これらの、以前から指摘されてきた
人口変動が2010年代に本格化したことは
結果的に就業増加につながった面もあり、
それらの影響は人為的な政策とは一線を
画すかたちで評価されるべきものであろう。

最後に第四の理由として、
収入の不足と将来の不安の強まったことが特に、
生活の苦しい人々が働かざる得ない状況を作り出し、
それが結果的に就業増加につながった
可能性もある。

就業機会は正規雇用についても拡大したが
拡大ペースは非正規雇用のほうが
いくぶん大きかった。特に
就業拡大に寄与した女性や高齢者の場合、
非正規雇用への就業がかなりの部分を占めた。

就職氷河期世代など
年齢の若い女性は
十分な世帯収入がないことが
就業を選択する主な理由な一つだったと
考えられ、
高齢者についても、
十分な貯金もなく、
年金だけで今後生活することに
不安を感じたことから
働ける限り働くことを
選択したというのが多くの実情だろう。
(※ その状況は、ブルース・ホーンズビーの
名曲 The Way It Isの歌詞を彷彿とさせる。
https://www.youtube.com/watch?v=GlRQjzltaMQ
http://neverendingmusic.blog.jp/archives/19576530.html

『危機対応の社会科学(下)』において
大沢真理さんは、安倍政権下での
税・社会保障制度が
高所得層や専業主婦世帯を優遇し、一方で
共働きやシングルマザーなどを罰するかたちで
逆機能していたことを、データを踏まえて厳しく
批判している。詳しくは下記を参照。
http://www.utp.or.jp/book/b481716.html

生活の苦しい人々が安心・安全に暮らせなくなった
結果として、
働かなければやっていけない状況
働いても働いてもラクにならない状況
をさらに作り出したのならば
それを政権の成果と主張することを
国民がどのように受け取っているかは、
関係者はよくよく考えるべきだろう。

広く一般論としても、
誰かが誰かの仕事を作った(作ってあげた)
というのは、
(問われたからそう答えた限りと言われる
かもしれないが)
くれぐれも慎重であるべきと
改めて思った。

再度

8月28日、
厚生労働大臣が
雇用調整助成金の
特例措置を9月末まで
から12月末まに延長する
方向であることを表明。

昨日思ったひとこと。

「二度あることは三度ある。」

政治の一寸先は闇。
これから何があるかは
誰にもわからない。

開店

今日は
2時過ぎに
仕事が終わったので
ひとり打ち上げでも
しようかと
ひさしぶりに
なじみのオープンテラスで
ギネスでも呑もうと思い立つ。

事前にネットで調べると
平日は16時開店なのだが
金曜は15時開店であることを
確認済み。

勇んで歩いたので
開店20分前には到着。
近所を軽く散歩して
15時3分ごろに戻ると
以前Closedの看板が。

刑事よろしく
しばらく柱の影から開店を
覗き見ていたのだが
いっこうに埒も店もあかず。

お店もいろいろ
振り回されてたいへんなんだろうか
と思ったりする。

仕方なく諦める。
帰りにコンビニで
打ち上げ用に仕込み。
これから呑むぞ。

全国就業実態パネル調査2020臨時追跡調査

本日、株式会社リクルートが
「緊急事態宣言下で人々の働き方はどう変化していたのか」
(全国就業実態パネル調査2020 臨時追跡調査)
を発表。
https://www.recruit.co.jp/newsroom/2020/0827_18794.html

リクルートワークス研究所が
継続して実施している全国就業実態パネル調査の
回答者(2019年時点就業者・20~60歳)の約1万人から
緊急事態宣言下にあって
どのように働いていたのかを緊急調査したものだ。

その結果からは、これまで明らかになってこなかった
さまざまな状況が垣間見られて興味深い。

なかでもまず特筆すべきは、
やはりテレワークの実態だろう。

感染症の影響を受けて職場からテレワークを
推奨された人は15.7%だという。
この数字は、必ずしも高いとは
いえないように思う。
緊急事態宣言の期間が
長かった7都府県に限っても
21.7%にとどまる。

そのなかで
職場からの推奨の有無にかかわらず
週1日でも終日テレワーク勤務
をしていた人は
約4人に1人弱にのぼったが
(昨年12月時点では10人に1人弱)、
76.9%はまったくしなかったという。

さらにテレワークをしなかった理由をたずねると、
58.2%が職場でテレワークが認められていなかった。
正社員でも60.1%が認められていない。

対面形式の業務の多い職場では
テレワークに消極的であることは予想されるが
たとえば情報通信業ですら42.8%が認められていない。
情報通信業は、過半数がなんらかのテレワーク勤務を
していた唯一の産業だが、それでも多くがこれまで
同様通勤していたのである。

そう考えると、
緊急事態にあっても
全体的にみれば
テレワークは思うほどには
活用されていなかった、
活用されていたとしても
実のところ一部にすぎなかった
というのが
正確な実態かもしれない。

調査では
昨年12月と比べた生産性の自己評価なども
示されているが、
全体的に生産性は低下したという割合は
上昇したという割合よりも高くなっている。
ただそこには、仕事の仕方の問題よりも
業績そのものの悪化の影響も無視できない。

テレワークがまったくなかった人々よりも
テレワークの週4日以上を行っていた人のほうが
生産性が上昇したという割合は高く、確かに
一部の人にとってテレワークが生産性を上げる
ことに寄与しているようにはみえる。

ただし、テレワークをしている人であっても
生産性は低下したと回答した割合が、
日数にかかわらず
3割から4割にのぼっており、
テレワークをしなかった人で生産性が
下がったという約2割よりもむしろ多い。
テレワークによって
これまで以上に仕事がはかどった
という実感を持っている人は少ないようだ。

緊急事態宣言の解除後にも
テレワークの推奨が継続
しているという割合も15.4%にとどまる。
大学などは推奨の継続に属すると思うが
(学習・教育支援業は情報通信業に次いで
テレワーク勤務は多かった)、それでも
それは全体からみると少数派だ。

今回の調査結果をざっと見る限り、
感染症の緊急事態をきっかけに、
日本ではテレワークによる仕事が一気に主流になった
というところまでは、どうやら言えそうもないように思える。

おそらくは感染症の広がる以前に
テレワークを既に導入していたか、
少なくとも導入の検討を開始していたところでしか、
緊急事態での適用は難しかったのではないか。
制度は急にはつくれない。

全国就業実態パネル調査は、
追跡調査であるため、
今回の調査対象者の
過去および今後の状況も知ることができる。

緊急事態で過去にどのような状況にあった人々が
円滑にテレワークを導入できたかや、
テレワークの経験がどのような長期的な効果
につながるのか等、
これからも注目すべき点だろう。