2020年5月の労働市場(2)

感染症拡大第1波による
雇用・就業への影響の
特徴の一つとして
休業者の未曽有の急増を当初より再三指摘してきた。
https://genda-radio.com/archives/date/2020/04/30
https://genda-radio.com/archives/date/2020/05/17
https://genda-radio.com/archives/date/2020/05/30

以下、2020年5月の状況からは、
休業者の増加は、おしなべて4月にピークを迎え、
5月にはかなりの部分が
仕事への復帰を果たしつつあるものの、
同時に今でも多くの就業者が引き続き
休業状態にあることが見て取れる。

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/covid-19/c23.html

仕事を辞めてはいないが、調査期間中の1週間に
仕事を完全に休んでいた「休業者」は、
2020年4月に、おそらくは過去最多であろう
597万人に達し、就業者全体の9.0%に及んだ
(おそらくというのは、東日本大震災直後には
調査ができなかったため)。

翌5月になると、休業者数は423万人となり、
原数値の比較のため、
季節変動の影響などに注意する必要はあるが、
前月よりは174万人の減少、就業者(=従業者+休業者)
に占める休業者の割合も、6.4%まで低下している。

対前年同月の休業者数の増加幅が、
4月には実に420万人に達していたのに対し、
5月は274万人と、依然として昨年に比べれば
大きく増加はしているものの、その拡大ペースには
一定の歯止めがかかりつつあると見てまちがいないだろう。

産業別にみても、ほとんどすべての業種において
前年同月よりは多いものの、先月よりは減少している
という傾向が見られる(※原数値)。
4月に休業者が急増した
飲食サービス業や生活関連サービス業でも
5月にはその数は縮減している。
唯一例外として、需要の回復が未だ見込めない
ことも反映しているのか、
宿泊業と道路旅客運送業のみ
休業者が先月より減っていない。

医療崩壊が危惧された
医療・福祉業態からの休業者も
4月の50万人から5月には35万人へと減り、
前年同月からの増加も25万人から12万人へと
半減するなど、現場が落ち着きを取り戻しつつある
ことが休業に関するデータからも予想される。

自営と雇用、正規と非正規など、
仕事の形態別にみても、
4月から5月にかけて休業者は
絶対数と就業者に占める割合のいずれでみても
減少傾向は、共通している。

それでは、4月中の休業を終えた人々は、
5月には、一体どこに向かったのだろうか。

総務省統計局「労働力調査」では、調査対象の
約4万世帯のうち、半分は2ヵ月連続で回答する
ことになっている。そのため今年の4月末時点
で休業者となっていた人の5月末時点での就業状況を
把握することができる。

それによると4月の休業者のうち、
44.0%が「従業者」として5月に
仕事をしていたことがわかる。
すなわち半分弱の休業者が、翌月には
元の仕事に復帰するか、新しく仕事をみつけて
働いていたことになる。

これを昨年2019年の4月の休業者と比較すると
5月に従業者となっていた割合は39.5%、
さらに一昨年では34.8%にとどまっていた。
ここからも、今年4月に急増した休業者の多くが、
緊急事態宣言の発出や自粛要請などを受けて、
その後の復帰などを前提に
あくまで一時的に仕事を休んでいたことが示唆される。

一方、今年の4月の休業者のうち、
5月時点も休業状態を続けていた割合が
49.4%と、およそ2人に1人が休業のままであるのも
また事実である。その割合は、
2018年の51.4%、2019年の50.3%と比べても
大差のない水準にある。

そして休業後に仕事への復帰がならず、5月には
完全失業者として職探しをしていた割合が1.7%、
働くことを断念し非労働力人口となった割合が4.9%
であった。特に失業への移行が1.7%にとどまっていることは、
2018年時点ではそれが3.6%、19年時点では2.5%だったことと
あわせても特筆すべき点だろう。
今回の緊急措置としての休業の一斉実施の多くが、
雇用打ち切りまでの時間稼ぎというよりは、
失業の回避に部分的にせよつながっていることを
物語っているように思われる。

5月時点の約200万人の完全失業者のうち、
10万人程度が先月には休業していた計算になる。
また昨日見たように、非労働力人口は5月に入って
労働力人口への移行の兆しが見え始めているが、
背後にはそれと並行して休業からの流入も生じていたことになる。

育児や介護などによる休業と異なり、
経営上の事情による休業は、企業が経営危機を
一時的なものと見込んでいる場合に選択するものだろう。
しかし、その休業状態が長引くことは、それだけ
業績の回復には時間がかかることを同時に意味するため、
雇用契約の打ち切りにつながるリスクも高めることになる。

今後は、引き続き400万人を超える休業者のうち、
どの程度が失業もしくは非労働力の状態へと移行するかが
就業動向全体を大きく左右することになるだろう。