前回、孤立状態にあることは
仕事に就こうとする活動(求職・学習)や
そもそも働こうという希望を抑制する
ことにつながると述べました。
だとすれば、その理由は何なのでしょうか。
友人や知人と日常的につながりがある
ことは、良い就職先を知っている友人から
仕事の紹介を受けられるという面もある
かもしれません。いわゆる「コネ」もしくは
「人脈」ということになると思うのですが、
いずれにせよ、知り合いからの情報提供が
大事だということになります。
しかし、私は知人や友人とのつながりは、
もっと大事な役割を果たしているのではないか
と思います。それは「気づき」です。
たとえばインターネットを積極的に活用できる
環境にあることは、就職活動をも積極化する
ようです。ただ、その内容を見てみると、いわゆる
情報の検索や収集だけではあまり効果がないように
見受けられます。むしろ大事なのは、友人との電子
メールや携帯メールを通じた具体的な情報交換です。
それは、単に情報提供というだけでなく、自分自身が
どうしていくべきか、何をすればよいかという気づきを
与えてくれるのではないでしょうか。
情報は既にたくさんあります。むしろその膨大な情報から
自分なりの決断をするための後押しをしてくれるのが
友人や知人とのつながりであるように思います。
スネップ、特に家族型のスネップは、家族との結びつき
はあります。それは安心を与えてくれる強い絆であることも
多いでしょう。しかし、そんな強い絆を持つことの多い
家族型の孤立無業ほど、仕事に就くことに積極的で
ないという事実は示唆的です。
むしろ自分と違う世界を知っていたり、経験したりしている
友人や知人とのつながりが、仕事にまつわる気づきや
決断を促してくれる。これまでもたびたび強調してきた
緩やかな絆、すなわちウィークタイズの重要性が
ここでも浮かび上がってくるのです。
震災後、絆の大切さが、多くで語られています。私も
そう思います。ただ、家族との強い絆だけでなく、
もっと広くて緩やかな絆を広げていくことが
希望を生むのだと確信しています、
投稿 : genda
SNEP (18)
スネップの最大の問題は、
働くことがますます難しく
なっていくことです。
20~59歳の未婚無業者全体では、
54%は仕事につきたいと思い、
実際に仕事を探しています。
非孤立無業になると60%と
さらに多くの方が求職活動を
しているのです。
ところがスネップの場合、ちょうど
半分の50%しか職探しをしていません。
なかでも家族型のスネップは、半分弱の
47%しか、仕事に就こうとして職探しを
していないのです。
そもそもスネップでは、仕事をしたいと
思っていない人が多いのです。
就職希望のない人が、非孤立無業では
17%なのに対し、スネップでは22%であり、
家族型スネップでは実に25%に達している
のです。
SNEP (7)で、働くことを断念しているニートは
かつてであれば経済的に余裕のある家庭から
生まれることが多かったのが、最近ではむしろ
余裕のない家庭が増えてきていると述べました。
このようにニーとには、「貧困問題」が大きく影を
落としていました。
加えて、スネップは、就職活動を断念する傾向が
強く、そもそも仕事に就く希望を失っていることが
多いということは、スネップはニートを生み出すもう
一つの背景となっていることを意味します。つまり
貧困問題とならんで、「孤立問題」がまちがいなく
ニートを生み出しているのです。
求職活動や就業希望以外に、仕事につくための
学習・訓練についても、スネップは明らかに消極的
になっていました。ここでもスネップは、トレーニングの
部分で、ニートと密接に結びついているのです。
孤立化の問題を解決しない限り、働くことを諦めた
無業者の増加に歯止めをかけることは出来ません。
ちなみに求職活動を断念している無業者の特徴
としては、スネップが多いことに加えて、40代、50代
の人が多いことや、高校中退を含む中学卒の人や
在学したことがないという人も多くなっています。
またインターネットを利用していない人や、
自宅に要介護の家族のいる人も求職活動を
していない傾向が強くなっていました。
孤立し、インターネットも利用せず、家族の介護で
たいへんな中高年の人たちは、きわめて仕事に
就くことが困難な状況にあります。
以前に比べて若年雇用対策は、明らかに充実
するようになりました。最近議論されている政府の
新成戦略でも、若年対策は一つの柱となっています。
しかし今や若年対策以外にも、孤立を防ぐための
新しい就業対策が必要とされているのです。
SNEP (17)
どうして、そんなに統計(数字)
にこだわるのですか
という質問がありました。
むかし『仕事のなかの曖昧な不安』
という本を書いた後、読んでくれた
友人から次のようなことを言われました。
「ここで書いてあることは、当たり前の
ことばかりな気がする。自分でも知って
いたことだ。でも、それは自分は漠然と
そう思っていただけで、それが統計に
基づく根拠があるんだとわかって、
なんだかすっきりした。」
この感想は、これまでもらった
感想のなかで、一番うれしいものの
一つになりました。自分のやるべき
ことが、すこし見えた気がしました。
経済の問題でも、仕事の問題でも、
若者の問題でも、統計による裏付け
があるものと、そうでないものがある
ように思います。
裏付けがないものは
一時的には話題になりますが、しばらく
するとまったく顧みられることもなくなる
ことも多いように思います。
ただ、だからといって統計や数字が
すべてだとも思いません。スネップに
しても、明らかにしなければならないことが、
統計調査のなかですべて調べられている
わけではありません。
むしろわからないことだらけです。
だからこそ、統計によってどこまで
明らかにすることができて、どこから
先がわからないかを、すっきりさせることが
大事だと思います。その上でわからない
ことは、統計や数字を超えて、
本人や現場の声に耳を澄ますことが
大事になると思います。
数字は0から9までの、それ自体
味気ないものかもしれませんが、
その背後には、言葉にならない
いろいろなドラマや物語があるように
思っています。
SNEP (16)
孤立無業と非孤立無業では、
睡眠時間にも違いがあるようです。
非孤立無業の平均睡眠時間は
8.3時間だったのに対して
孤立無業は8.5時間とわずかですが
スネップの方が長くなっていました。
なかでも一人型のスネップほど、
睡眠時間は長くなる傾向がありました。
テレビをよく見ていたり、睡眠時間が
長いなど、スネップの生活は、
ひきこもりについての「イメージ」
に通じる部分が多いかもしれません。
またこれまでひきこもり支援の活動を
している方からは、日本ではひきこもり
のなかにネットに耽溺するネット依存や
ネット中毒は必ずしも多くないのでは
ないかという声をよく聞きましたが、
スネップにも同様の傾向がみられました。
ただし、それらはあくまでひきこもりの
「イメージ」でした。ひきこもりについての
統計調査は必ずしも多くなく、内閣府が
2010年に行った調査では、有効回答者数
3287人のうち、ひきこもり群は59人のみで、
ひきこもりに近いとみなせる人々も131人に
すぎず、詳細な計量分析には限界がありました。
また厚生労働省によるひきこもりガイドライン作成の
もととなった調査でも、20歳から49歳の調査対象者
1660人のうち、ひきこもり経験者は実は19人のみでした。
それに対して、ここでスネップと定義された回答者は
1000件以上、正確には1146件にのぼります。これだけの
調査協力者があると、一定の信頼性を保たれた統計分析
ができるのです。スネップは「イメージ」ではなく「実態」が
明らかにできるのです。
尚、ひきこもり、ニート、スネップの関係については、
地域若者サポートステーションで働いている方から
次のような投稿がありました。孤立と無業との関係に
ついてのご指摘です。
>> かねてからブログを拝見おりまして
>> 「スネップについて、意見があれば」
>> とのことでしたので、
>> 日々困難を抱えた若者と接している現場の感覚が
>> 少しでもお役に立てればと思い、メールをさしあげました。
>>
>> スネップについて直接は申し上げられませんが、下の①~③は、
>> 失業者→NEET(日本の定義)→社会的ひきこもり→引きこもり
>> と「アッという間に」孤立していく心理状態をまとめたものです。
>>
>> 若者当事者たちに「こういう感覚?」と聞くと
>> 「そうそう!こんな感じ!」と言われることがほとんどなので、
>> 科学的な根拠はありませんが、大きく外れてはいないと思います。
>>
>> ①失業者→NEET に陥るときの心境
>> ・例えるなら、就職を求める人たちの長い行列の後ろの方に自分は並んでいる
>> ・その行列は、前の方だけ入れ替わっている様子は感じるが、
>> 少しずつでも自分の順番が前に繰り上がっていく気配はない
>> ・このまま並んでいても希望は見えないし、
>> かと言って他の方法が思いつくわけではない
>> ・しばらく並んでいたが、どう考えても自分の番が来そうにないので断念した
>> →希望を失って就職活動を断念した瞬間にNEET状態と定義される
>>
>> ②NEET→社会的ひきこもり に陥るときの心境
>> ・仕事をしていないと、久しぶりに会った人の
>> 「いま、どうしてるの?」という質問が怖い
>> ・親戚の集まりや同級生の集まりに顔を出せなくなる
>> ・近所の人にもあまり会いたくない
>> →そもそも仕事をしないままで対人関係を保つのはとても難しい
>> →気まずさ、後ろめたさ、引け目から、自ら対人関係を切り、孤立する
>>
>> ③社会的ひきこもり→ひきこもり に陥るときの心境
>> ・一人で時間を「潰せる」場所は、外にはなかなかない
>> ・コンビニ、電気屋、ブックオフなど、そんなに足しげく通えない
>> ・家族にも会いたくないが、出かけるのも辛い
>> →対人接触をしないままで外出しつづけるのはとても「しんどい」
>> →ゲームがしたくて家にいるのではなく、家にいざるを得ないので
>> ゲームやPCで時間を潰している
>>
>> というようなことで、仕事を失うことと、孤立していくことは
>> 非常に近い位置にあると彼らは言います。
>> 仕事をしない状態のままで、人と生き生きと繋がるなんて
>> よっぽど神経が図太くないとできないよ、とも言われます。
>>
>> そもそも対人関係が苦手だから仕事(就職)を失うのか、
>> 仕事を失うと「後ろめたさ」から対人関係まで失うのか、
>> ニワトリと卵のどちらが先かは見極められませんが、
>> いずれにせよ、「失業は完全には防げなくても、孤立は防ぐ」というのを
>> 私たちも重視しています。
>>
>> すみません、とても長くなりましたが
>> ほんの少しでもスネップ理論のご参考になればうれしいです。
>>
ご投稿ありがとうございました。
ご指摘の「→」の節々にスネップの
決して楽しげではない表情が見え隠れ
するような気がします。
SNEP (15)
では、スネップの生活状況として
特徴的なこととは、何なのでしょうか。
社会生活基本調査(調査票A)では、
たずねられた2日間48時間について、
20種類に分類された行動の種類から選び、
15分ごとに記入することになっています。
そのうち、「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」に
あてる時間がたずねられています。この
テレビの視聴時間などが、スネップはやはり
明らかに長くなっていました。
平均すると、2日間を通じたテレビの視聴時間などが、
非孤立無業では410.9分なのに対し、
孤立無業(スネップ)では、実に585.1分と
3時間近い差が生まれていました。
孤立無業のなかでも、家族とも一緒にいない
一人型のスネップほど、テレビの視聴時間などが
長くなっていることもわかりました。
また過去一年間に、スポーツ、旅行、ボランティア
などを一切していないスネップほど、テレビの
視聴時間なども長くなっている傾向もみられました。
仕事もしておらず、誰とも会っていない分だけ、
時間はあるスネップ。その時間を、おカネのかから
ないテレビを視ることなどで費やしている、多くの
スネップの実情が想像されます。