4月の感染症拡大
による緊急事態宣言以降、
就業状況全般としては、
厳しさが続く一方、
経済活動の再開に伴い、
緩やかな回復傾向が
続いている。
本日発表の
7月分の
総務省統計局「労働力調査」
ならびに
厚生労働省「職業安定業務統計」
の結果全体を総括すると
概ね上記のようになるだろう。
7月になってからの
感染症の再拡大による
先行き見通しの悪化から
雇用をもちこたえられず
就業者数について
4月に続く2番底を迎える深刻な事態は
なんとか回避されたようだ。
良い意味で予想が外れ、
よかったと思う。
労働力調査によれば、
就業者数(季節調整値)は
4月に1963年1月以来の
前月からの落ち込みを記録した後、
5月から7月にかけては、
ほぼ横ばい、もしくは緩やかな増加と
なっている。
なかでも罹患リスクなどを考慮し
いち早く「働き止め」をしていた
と思われる65歳以上の就業者の数は
2月、3月の感染拡大前の水準まで
7月にはほぼ戻っている。
感染リスクが消失したわけではないものの、
生活のための収入確保や、
マスク着用などの感染防止策を徹底しながら
就業を再開している人々が
高齢者を含めて多いのだろう。
職業安定業務統計では、
有効求人倍率(季節調整値)が
前月の1.11倍から1.08倍にやや低下した。
有効求人数はわずかに増加したものの、
働き止めの解消による
6月の新規求職申込者の急増の余波も残って、
それ以上に有効求職者数が拡大した結果
となっている。
ただ、それでも非労働力人口全体は
3月から4月にかけて増加した
約100万人分の半分程度が
維持されたままであり、
7月でも依然として働き止めを
続けている人がいることも示唆される。
一方、4月以降、失業急増を
ある程度回避させた主な要因の
一つである緊急事態を背景とした
休業者の数は、6月、7月を通じて、
感染症拡大前の水準に
ほとんど戻っている。
さらにもう一つの要因である
短時間就業のシフトについても
週35時間以上勤務の雇用者数、
週1~34時間勤務の雇用者数ともに
5月から7月にかけて、ほぼ安定した
状態に戻っている。
以前にもここで指摘したように
雇用者のうち、
正規の職員・従業員数は
実のところ、
緊急事態宣言下の2020年4月に
2013年以来過去最多となっていた。
https://genda-radio.com/archives/date/2020/08/02
さらに7月の正規雇用者数は、
4月の水準を上回るなど
拡大が長期的に今も続いている。
その意味で感染症の拡大は
長期的な正社員数の
力強い増加トレンドを
脅かすものとまでは
今のところなっていない。
一方、非正規の職員・従業員数は
4月の大幅な落ち込みの後、
5月に若干回復してからは、
ほぼ横ばいの状況が続いている。
7月の非正規雇用は、対前年同月でみると、
131万人と大幅な減少になっており、
今回の報道などでも、この点が
強調して取り上げられると推測される。
ただ、これはむしろ2019年に
非正社員数が記録的な高水準に達していた
ことの影響を少なからず反映している。
2019年の非正規雇用の増加は
消費税増税前の9月まで続くため、
非正規雇用の対前年同月減少は
今しばらく続くことになる。
対前年の数値だけでなく、
全体の長期的な流れを捉えることが
重要になる。
見方によれば非正規雇用者数は、
先に有効求人倍率が1倍を
超えていた2016年から17年と
同程度の水準に今もあり、
一定の求人に下支えられている
とも取れる。
また感染症拡大前後の動きとして
これまで自営業の増加気味の
動きに注目してきた。
https://genda-radio.com/archives/date/2020/08/01
https://genda-radio.com/archives/date/2020/08/12
ただ今回の7月調査からは、
自営業にはさらなる拡大の動きは
見られない。今後の動向が気になる
ところだ。
経済活動の再開に伴い
就業維持および就業確保の
努力が7月も多くで続けられている。
一方、宿泊・飲食業では
休業者数が前年同月水準まで戻り、
就業者数の減少も前年に比べて20万人以上
減少する状況が4ヶ月連続するなど、
余裕のない状況が続いている。
また建設業などでも6月、7月と前年に比べた
就業者数の落ち込みが激しくなっており、
こちらはオリンピック延期などとも
関連しているかもしれない。
このように一部では就業機会の
維持・確保の努力が限界に
達しつつある可能性もある。
今後も必要な対策を見定め
届けていくことが
求められる。